ペイヴメントが語るバンドの軌跡とそれぞれの人生、ギャリー・ヤングの今、新作の可能性

 
2度目の再結成とそれぞれの人生

―改めての質問ですが、2022年に2度目の再結成をすることにした理由は?

ボブ:本来は2020年のプリマヴェーラ・サウンドで再結成する予定だったんだけど……。

スティーヴ:そう、結成20周年のタイミングでね。

ボブ:でもパンデミックの影響で2022年に延期されて、追加公演をするにも機材運搬の予約をしなきゃいけなかったり、色々と大変だったよ。

マルクマス:再結成したことで、僕らはそれぞれのソロキャリアでやるよりも優れたベニュー、もっといい場所でパフォーマンスできるようになった。いろんな場所を旅したり、こうして思い出の地に帰ってこれたりするのは嬉しい限りだ。それに、ライブが再開されたことで気持ちにも変化があった。多くのミュージシャンにとっても、今まで当たり前だと思っていたことに改めて感謝する機会になったと思うよ。過去の曲を振り返り、現在において僕らの曲はどういう意味を持つのか、今の時代との繋がりを読み解いたりするのが楽しいんだ……Tシャツもたくさん売れてる。

―(笑)

ボブ:今でもペイヴメントを好きでいてくれるファンがいるし、一度も僕らのライブに来たことのないファンに会えるのは嬉しいね。40代以下の世代が、90年代のバンドのライブを観れるのは珍しいはずだ。2010年に僕らのライブに来れた人もいれば、来れなかった人もいる。往年のファンから、その子供たちも含む若い世代まで幅広いファンがいて、僕らは恵まれてると思う。


Photo by Kobayashi Kazma


―今回の再結成をする以前、マルクマス以外のメンバーはどんな生活をしていたのでしょう?

スティーヴ:僕は石積みの煙突を作る仕事をしていた。

マルクマス:彼の代わりに話すと、バージニアの仲間と音楽を作っていたんだ。バロネス(Baroness)っていうクレイジーなヘヴィメタルギターバンド。彼はずっと音楽と関わってるんだよ。ソロでも活動していて、もうすぐアルバムをリリースするんだよな。

スティーヴ:しっかり者だろ?

マルクマス:スコットもずっと音楽を続けていて、最近アルバムを発表したばかりだ(2022年にスパイラル・ステアーズ名義の最新作『Medley Attack​!​!​!』を発表)。



スコット:再結成の前、僕はメキシコのユカタン半島に4年ほど住んでたんだ。古い家をリノベーションして……。

マルクマス:ゴルフをしてたのか? 

ボブ:テキーラを飲みながら?

スコット:まあ時々(笑)。でも高級なコースは2カ月に1回だけだよ。

マルクマス:つまり長期休暇を取ってたんだな。

ボブ:家を売り払ってきたのか。

スティーヴ:転売屋だ!

ボブ:上手くいった?

スコット:ああ、パンデミックの影響もあったけど。年老いたカナダ人がいっぱいいたよ。あそこはマネーロンダリングでも有名なんだ。

ボブ:今度頼むよ(笑)。僕はとにかくいろんな仕事をやってきた。DJをやったり、ポッドキャストの司会をしたり。

マルクマス:彼はサウンドシステムを所有してるから。

ボブ:競馬関連の仕事もたくさんしてきた。(1996年から)競走馬を飼っていて、費用を稼がないといけない。育成にはお金がかかるからね。



マーク:僕はニューヨークのライブハウスでバーテンダーをしてた。もうすぐ新しいレストランがオープンするんだ。

ボブ:知らなかった。なんていう名前?

マーク:SUPERIORITY BURGER。ヴィーガンバーガーのお店で、実は下北沢にも店舗があるんだ

マルクマス:良いレストランだよ。

マーク:下北沢にある店は小さいと思うけどね。


Photo by Kobayashi Kazma

―それぞれの人生を歩んでいる皆さんが、同窓会のようなノリで集まり、青春時代のようなテンションで演奏していたのも素敵でした。年齢を重ねた今だからできるようになったことはありますか?

ボブ:個人的なことをいうと、もっとうまく演奏できるようになった気がする。

マルクマス:ああ、スティーヴのドラムもよくなったし、みんな上手くなったと思う。今は新しいアルバムの制作に追われることもなく、レコードを聴けるくらいの時間的な余裕もあるしね。マークとスティーヴのリズム隊はかなり準備してきたみたいだ。僕とスコットは……。

スコット:エンジンがかかるまで時間がかかった(苦笑)。いざ始まったら、自信が湧いてきて楽しめたけどね。前日の夜は緊張してたんだ、最終的には満足してるよ。

マーク:あとはキーボード奏者のレベッカ(・コール)が参加したことで、今までの僕らになかった音が加わって、サウンド面が豊かになった。

ボブ:キーボードだけじゃなくてパーカッション、ボーカルの才能もあるから、彼女には引け目すら感じるよ。音楽的才能はもちろん、素晴らしいパーソナリティの持ち主だ。

マルクマス:彼女が参加したことで、グランジ全盛期のギターだけのサウンドに、僕らのレコードにも通じるバンドサウンドが加わった。うまくマッチしたんだ。全曲に参加しているわけじゃないけれど、サウンドにダイナミクスをもたらしてくれた。

Translated by Emi AokiEmi, Natsumi Ueda

 
 
 
 

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