ペイヴメントが語るバンドの軌跡とそれぞれの人生、ギャリー・ヤングの今、新作の可能性

 
1993年の初来日とギャリー・ヤングの今

ペイヴメントのWikipediaには、1993年に初来日したときの写真がずっと使われていますよね。この写真を撮った方は私の先輩なんです。

マルクマス:いい写真だね。マークがキュートだ。

ボブ:ギャリー(・ヤング)が埋もれてる(笑)。


Wikipedia掲載の写真。左からボブ、ギャリー・ヤング、マルクマス、マーク、スコット(Photo by Masao Nakagami

―この時のことは何か覚えていますか?

マルクマス:(日本での)最初のショウはまったくもって制御不能で、過去最低のライブの一つだった。でも、レコードレーベルの連中は「素晴らしかった」なんて言うんだ。当時の僕らはかなりいい加減だった。そこが魅力だったのかもしれないけど、自分としては恥ずかしかったんだ。

マーク:僕はオーディエンスのリアクションに驚いたな。とてもいいリアクションで、みんな全ての曲を知っていた。たしか、その時に『Westing』(同年リリースの初期音源集)のサイン会をしたんだけど、ポスターが壁一面に貼られていて、スピーカーからはアルバムの曲が流れていた。一般の買い物客は「何のイベントだ?」って不思議そうだったな。

ボブ:ライブ開始の5分前にセットリストを貼りに行ったんだ。サポートバンドはいなかったから会場は暗かったんだけど、僕が出た途端、3分の2以上のオーディエンスが叫びだした。まるで有名人が来たみたいに。とても圧倒されたよ。当時はギャリーもバンドにいて、僕らはかなりメチャクチャだった。かなりワイルドな時代だったんだ。あんな経験は初めてだったな。


1993年、ニュージーランドでのライブ映像

マルクマス:当時は多くのイギリスのバンドと交流があって、僕らの人気は彼らのおかげかもしれない。僕らのプロモーターがクリエイション・レコーズのバンドを呼んで、一緒にインドレストランまで連れて行ってくれたこともあった。当時のイギリス人は日本料理が苦手だったみたいだからね。あのときのカレーは美味しかった……それはさておき、たしかにイギリスの時代というのがあったんだ。

ボブ:パステルズがかなり人気だったよね。

マルクマス:あと、渋谷付近にはいいレコード店がたくさんあった。ジャズストアでは700〜800円くらいでレコードが買えたんだ。好きなレコードをたくさん買って帰るのが当時はとても楽しかった。


1993年初来日時のアザーカット(Photo by Masao Nakagami)

―当時の日本ではギャリー・ヤングが人気でしたが、最近も連絡を取り合っていたりするのでしょうか?

ボブ:彼のドキュメンタリー映画『Louder Than You Think』がもうすぐ公開される予定なんだ。僕らはロサンゼルスで観た。彼の妻のシェリーと連絡を取っていて、今はカリフォルニアのリンデンに住んでいる。スコットも頑張っているみたいだ(映画のエグゼクティブ・プロデューサーを担当)。

スコット:SXSWでスクリーニングがあるらしい。ギャリーもおそらく参加すると言ってたよ。

ボブ:そうなのか、驚いた。

スコット:でも、健康状態があまりよくないみたいだ。

ボブ:今度の誕生日(5月3日)で70歳だもんな。映画はかなり素晴らしいよ。胸に突き刺さるようなシーンもあって見応えのある内容だ。僕らのファンには絶対に楽しんでもらえると思う。

マルクマス:あれはペイヴメントの映画だ。

ボブ:ああ、90年代初頭のペイヴメントにまつわる映画だな。彼と一緒にバンドをやっていくことが、どれだけ難しかったかわかると思う。初期の僕らにとって彼の存在はとても重要だったけど、同時にストレスフルでもあった。

マルクマス:彼自身にとってもそうだったはずだ。なぜ彼があそこまで制御不能な人間だったのか、映画を観ることで感じ取ってもらえると思う。

Translated by Emi AokiEmi, Natsumi Ueda

 
 
 
 

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