大江千里だから書けるジャズアルバム、1998年から渡米までと現在を語る



田家:「FM COCOLO J-POP LEGEND FORUM」、デビュー40周年、大江千里さんの日本での活動をたどる4週間、「今だから語りたいマイ・ソング」と題してお送りしております。6月に発売になった初めてのシングル・コレクション『Senri Oe Singles ~Special Limited Edition~』のご紹介です。今週はDisc4からお送りしました。流れているのはこの番組のテーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。

千里さんの40年、いかがでしたでしょう。ニューヨークに渡ったミュージシャンは数多いですが、ジャズピアニストに転身したシンガー・ソングライターっていうのは彼だけでしょうね。シンガー・ソングライターは言葉とメロディと歌ですから。いま言葉がない音楽を彼は作って自分で演奏してるわけで。

今回のアルバムを聞いて改めて思ったことがあって。ジャズって、ポップスを好きな人はどっか身構えたりするわけですけど、そういう身構え方を全然感じさせない、本当に繊細なタッチのピアノと、とっても気持ちいいグルーヴやリフ、メロディがある。これはやっぱりポップスのシンガー・ソングライターだから書けるジャズアルバムなんだなと思ったんですね。

実はこの番組の台本を書くときにも、ずっとBGMで聞いていたんですけど、すごく気持ちいいんですね。僕ら子供だった60年代当時は、ジャズもポップスも歌謡曲もみんな一緒でしたから。オスカー・ピーターソン・トリオとかジョージ・シアリングという、そのぐらいの名前しか知らないんですけど、そういう人たちの音楽が身近にあったんですね。イージーリスニングジャズってカテゴライズされてたんですけど、そういうアルバムとして聞くと本当に気持ちのいいアルバムだと思ったんです。アメリカのジャズミュージシャンは演奏するだけで、曲を書く人はあまりいませんから。しかも日本人ならではのタッチでデリケートな軽い爽やかな清潔な音でアルバムが作られている。これは可能性があるなと思ったりもしました。ポップスアルバムとして聞いた方がですね、みんな馴染みがあるんではないかと思ったりするんですね。千里さんのここからの活動がとっても楽しみになるそんな4週間でありました。大江千里さんの60代、楽しみにしたいと思います。また日本でポップスのアーティストとして活動するときが来るんではないかと思いながら終わろうと思います。





<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

「J-POP LEGEND FORUM」
月 21:00-22:00
音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
https://cocolo.jp/service/homepage/index/1210

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Rolling Stone Japan 編集部

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