大江千里だから書けるジャズアルバム、1998年から渡米までと現在を語る

静寂の場所 / 大江千里

田家:大江千里さんの初のシングル・コレクション『Senri Oe Singles〜Special Limited Edition〜』Disc1から Disc4オリジナルの曲の最後の54曲目がこれです。2007年9月発売「静寂の場所」。

大江:これ『WHITE MEXICO』っていう映画の主演をして、その中で流れるっていうのがあったんで、そういうフィルターを通して書けたっていう。自分の思う理想のポップスの究極の形が、白い楽譜だったって感じだったと思うんですよね。リスナーの人たちとか、同じ時代に出会ったスタッフとか仲間とか、本当にコンサートに来てくれた人、 CDやレコードを聞いてくれた人たちのことをまず思った。ただ一つ、やっぱり自分の人生で、1回ちょっとわがままというか、自分が最高の大江千里のリスナーでいるために音楽を作れる場所に行こうって感覚だったなって思います。

田家:これを描いたときにはもう日本は離れてニューヨークに行くんだって決めてらした?

大江:決めていました。ちょうど大学に受かって、TOEFLをとって合格してっていうときにちょうど映画をやっていた後ぐらいに、関学の入学生たちのために先輩として語りにキャンパスに帰ったんです。経済学部に寄って内申書をもらってそれをアメリカに送るみたいな(笑)。僕は全てに別れを告げながらって感覚で1個1個準備をしてて。信じられるものはただ一つじゃないけども、自分が見られる中で何かそういうものがないと向かっていけないなって。それはきっとあのときに置き忘れたジャズで。『WAKU WAKU』とか『Pleasure』はジャズのスタンダード進行の曲が多いし、一番多感なときの自分のやり忘れたことに向かってもう1回勉強し直そうっていう感じだったんですよね。

田家:「静寂の場所」は映画というフィルターがありながら、ご自分の覚悟の遺書みたいな感じもあったんですね。

大江:ただ、僕が全てに別れを告げてって言っても、アメリカ人の友人がこう言ったんですよね。リスナーの人は意識してないんじゃないの?って。だから、どこかでまた会うんじゃないだろうかって。そんな未来が来るんだろうかって学生のときは思っていたけど、こうやって40周年っていう記念行事をやれて、こうして音楽が繋がっていくという、自分の中で自分が仕舞い込んでたものが紐解かれていくというか、そういう感じですね。

田家:シングル・コレクション『Senri Oe Singles~Special Limited Edition~』の曲は先ほどの曲で終わりで、最後は新作アルバムの曲で終わりたいと思います。『Letter to N.Y.』から「Out of Chaos」。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE