大江千里だから書けるジャズアルバム、1998年から渡米までと現在を語る



田家:千里さんが選ばれた今日の2曲目。98年5月発売のシングル『碧の蹉跌』。アルバムは98年の『ROOM 802』です。

大江:さっきの「ビルボード」とか『Solitude』の前なんですけど、『ROOM 802』をマンションの802号室で、内田光一さんって方と一緒に作ったんです。内田さんはギターリストで、PERSONZの近いところにいまして。彼のスタジオが802号室で、そこで歌も録ったり。ちょうど大村さんが亡くなった時期ですね。だからこの曲を聞いていただくとわかると思うんですけど、言葉もエッジーで、「嘘を自分について 歩くぼくを許さないで」みたいな感じで、強くなくていい、憂いを離れて眠っておけみたいに、気絶しながら書いたみたいな。

田家:CDを聞いていて一瞬音が止まったみたいなところがあったんで、えっと思ったりしたんですけど。

大江:一瞬どうしたんだって言うぐらいブレイクが入って。

田家:あれは意図的に?

大江:そうですね。リズムがずれるギリギリぐらいまで離して。

田家:どういう効果を狙ったといいますか意図があるというか。

大江:「碧の蹉跌」は大村さんに捧げる1曲にしようっていうのがあって、自分を奮い立たせてエッジーに立たせないととても歌えないって感覚を折り込んでいったんだと思いますね。大村さんには言葉だけじゃなく本当に教わったことがいっぱいあって。背中を見て生きざまを見て教わった。いつか天国で会えたときに、どうでしたかってちゃんと聞ける物にしたいって思いながら作ってました。僕、ジャズをやり始めてから、大村さんのお墓に行って、お水かけてしばらくいたんですけど、昼寝をしちゃって。ぱっと目覚めたら目の前でアゲハチョウがバタバタ飛んでいた。それを見たときに、「大村さん!」と言って。ぱたぱたぱたって周りを嬉しそうにね飛んでいてびっくりしましたね。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE