チャーリーXCXが語る、弱さと強さ、絶望と希望、すべてをさらけ出すポップスターの覚悟

チャーリーXCX(Photo by Jack Bridgland)

最新アルバム『CRASH』で描かれる失恋、セックス、憤り、自己破壊願望、そしてそれらを乗り越えるまでの軌跡。

【写真を見る】House of Harlotのボディスーツを着たチャーリーXCX

前作『how i’m feeling now』は誰もが内側から少しずつ崩壊していくように感じていたパンデミックの最中に生み出された内省的な作品だったが、今作はその対極にあるようなアルバムだ。チャーリーXCXことシャーロット・エマ・エイチソンは、それは彼女の現在の心境を反映しているという。

「今作のタイトルには自己充足的予言のようなところがあると思う。今の私は爆発寸前だから。時にはいい意味で、時には悪い意味で、私は崖っぷちにいる」。声を震わせながら、エイチソンはこう続ける。「ツアーのリハーサルで体を動かしていると気分がいいの。ここが私の居場所なんだって思えるから。でもそれ以外のことをしている時の私は……まるで時限爆弾みたいな感じ。何が言いたいのか自分でもよくわかんないけど……」

その前週に北ロンドンで彼女と会っていなければ、筆者はエイチソンの心が乱れていることには気づかなかったに違いない。ベースボールキャップ、ブリーチした眉とサングラス、北極あるいは南極の探検家が着ていそうなダウンジャケットという出立ちで撮影現場にやってきた彼女は、スーパースターならではの不思議なオーラを放つと同時に、どんな色にも染められる空白のキャンバスを思わせた。ワーカホリックであることを公言している彼女は、プロフェッショナルであり礼儀を重んじる。ラテックスのパンツとボディラインを強調するレオタード姿で臨んだ写真撮影は数時間に及んだが、彼女は一度も集中力を切らさなかった。Rolling Stone UKのマイクを手渡されると、彼女はシニカルなユーモアのセンスを披露した。「ポップアイコンの人生は波瀾万丈で当然なの。いい時は最高だし、悪い時は最低。アイコンは常に憧れの対象でいなくちゃいけないから、時々死ぬほどくたびれるけど」

撮影終了から50分後、彼女は今後しばらくTwitterから距離を置き、おそらく彼女が下書きした内容をマネジメントチームが投稿することになるとツイートした。「過去数カ月間、私はメンタルヘルスの問題に悩まされていて、ネガティブな内容や批判にうまく対処できなくなってた」と投稿した上で、彼女はシングル曲のチョイスや新作のキャンペーン、そして「史上最高のツアー」を実現させる上で必要な資金の調達方法が批判の対象となっていることを明かした。

彼女がやむなく同意したこと、それはNFTのフェスティバル「Afterparty」への出演だ。それは多くのファンの反感を買ったが、後に彼女は筆者とのプライベートなビデオ通話の場で、その話がなくなったことを明かした。「出演を辞退したの。自分で決めたことだけど、正式に発表する必要はないと思った。でも出演をキャンセルしたのは事実」

ごく一部のファンは、大幅な編集が加えられた「Beg for You feat. Rina Sawayama」を容赦なくこき下ろした。「正直に言って、2022年に入ってからずっと気が滅入ってる。メンタルヘルスが極端に悪化してると思う」と話すエイチソンの目には、うっすらと涙が浮かんでいる。「世間が私の曲を好きか嫌いかなんて、一度も気にしたことがなかった。嫌いなら聴かなかなきゃいい。でも既に気分が落ち込んでいる時にそういうのを目にすると、すごく精神的にダメージを負ってしまうの。有名人はどんな批判にも免疫を持ってるように思われがちだけど、そんなの大間違い。この世界で生きていく以上、ネガティブな意見や批判に対処する方法を身につけないといけないのは事実だけど、そういう人たちだって生身の人間なの。そのことを口にしたあの日、私は自分がかつてなく人間らしく思えた」

極めてオンラインなアーティストである彼女は、それが自身と作品をソーシャルメディアで宣伝する上で不可避なものであることを理解している。「自分に対するネガティブなコメントを見た瞬間、脅威や潜在的危険から身を守るためのサバイバルモードに入って、動物みたいな防衛本能が働くの」。マクロなレベルでは、チャーリーXCXのような存在は一般人の意見を気にかけないだろう。決意に満ちた表情で、彼女はこう付け加えた。「楽しみたきゃパーティに加わればいいし、そうじゃないなら参加しなきゃいいだけの話。私は別にどっちだっていいんだから」。彼女がそう言って悲しそうに笑ったのは、ツイートしたそのステートメントについてこの場で質問されることは確かだからだ。多くは語らなかったものの、彼女は不用意にそのトピックを持ち出したことを後悔しているようだった。「公の場では何も口にしないこと。それが私が得た教訓」


Photo by Jack Bridgland

Translated by Masaaki Yoshida

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