Yogee New Waves 角舘健悟が語る、雑多な世界で見出した歌のバランス感覚

飽和された時代のアンバランスな組み合わせ

─これから30代。でもまだ30代。山下達郎とハイスタを同時に愛せる自分をブレさせないで、どうやって次のステージを展開させていきたいですか?

角舘:俺、ずっとハードコア・パンク・バンドでドラムをやってきたんですよ。その頃に、今の事務所の社長とも知り合ったし……まあ、原点みたいなものなんですよね。愛情の伝え方って様々ですけど、パンクだってそういうハート型の音楽になりうるわけじゃないですか。パンクは最もエネルギーが表出された音楽だと思っているんですけど、それをちゃんと本当のハートの形にしてあげたらどんな音楽になるんだろう?って、そういう風に思って始めたのがこのYogeeなんですよ。トゲトゲしたハートじゃなくて、うっとりするような綺麗なハートの形にするにはどうすればいいんだろう?って、ずっと考えてやってきたし、そこは変わらないと思います。そういう意味で、俺には星野源さんはパンクスなんですよね。丸いものを丸いままやる良質な音楽って、世の中にもういっぱいあるじゃないですか。例えば俺はパット・メセニーも好きですけど、パット・メセニーの音楽が好きでパット・メセニーみたいな音楽をパット・メセニーと同じようにやっても面白くないでしょう? それはもうパット・メセニーでしかないわけだから。でも、パット・メセニーが好きでもギターじゃなくてピアノで表現したらどうなるだろう?って、自分はピアノをずっと弾いてきたからピアノでやってみたらどうなるだろう?って。パンクが好きな感覚を美しいハート形で描くって、そういうことなんだと思いますね。飽和されている時代だからこそ、そのアンバランスな組み合わせっていうのも時代を作っていくことになる、その礎になっていくのかなって思います。むしろ、一つに縛られずにいられる時代……ラッキーだなって気がします。










──パンクをハート型で描く音楽人生、結構遠回りになるとは思うのですが、そこに敢えてトライしたいと。

角舘:そうです、あえて遠回りをしようと思ってます。人生長いんだし。だから今はカエターノ・ヴェローゾを聴いています。去年まではスティーヴィー・ワンダーの『トーキング・ブック』『インナーヴィジョンズ』『ファースト・フィナーレ』、あの3枚ばっかり四六時中聴いてました。スティーヴィー・ワンダーの愛というのを知りたかったからなんだけど。彼の言ってること、彼のすべての表現が好き、でも、今の僕はスティーヴィーのようなことができるバンドにいるわけじゃないし、さっきのパット・メセニーじゃないけど、そういうことをしたいわけでもない。でも、きっとどこかで自然に出ちゃうんじゃないかって思うんですよ。その感覚を活かしながら、丁寧に自分らしく、自分の音楽としてクオリティ高いものにしていくってことをしていきたい。それって最高の人生だと僕は思います。

Edited by Haruka Iwasawa

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