Yogee New Waves 角舘健悟が語る、雑多な世界で見出した歌のバランス感覚

やりたいことに正直つくった20代最後のアルバム

─そういうアズテック・カメラのロディ・フレイムみたいな存在をお手本にすることで、30代を前に、今、どういう気づきがありますか?

角舘:いってもまだ30歳じゃないですか。医療が発達していって、俺がおじいちゃんくらいになった時には120歳くらいまで生きられるようになるかもしれないわけですよ(笑)。90代でバリバリ現役かもしれない。そう思ったら、2年、3年くらいの時間軸で悩んだりすることもないって思いますよね。確かに山下達郎も好きだけど俺はハイスタも好きなわけですよ。そういう自分の“好きなものに正直になる”感覚を大事にしていくことをブレないでやっていけばいいなって思う。だから、ロディ・フレイムの“普通のカッコをしてトガったことをやった方がよほどパンク”って発言、すごくよくわかるし、それでいいんだって確信を持てる。そういう意味でも、今回、曲順もメンバーに決めてもらってよかったと思う。もちろん、いい曲順のアイデアを彼らが出してきてくれたからなんだけど、そもそも俺はあまり曲順を決めるのがうまくなくて。アルバムを通して聴くのは好きなのに、得意じゃないんですよね、そうやって自分で自分の曲を客観的にまとめるのって。なぜかっていうと、実はこれまで……10代、20代って本当にやりたい曲、書きたい曲をとにかくたくさん書いてきたからなんですよね。自分の心の赴くままにとにかくいい曲を作る!って感じで自分がやりたいことに正直にやってきたから。だから曲順みたいなのを決めることはこれまでは得意じゃなかったんですよね。

─体の求める本能のまま活動してきたってことですか。

角舘:そうです。ある意味自分を泳がせていました。自分がどういう時に曲を作るのかっていうのをあまり気にしないようにして。少なくとも30歳まではそういうふうに自分を分析するんじゃなくて、「できた!」っていうのだけを「オッケー!」にしようと。そういうのってもちろんメンバーが大変なんだけどね(笑)。でも、30代に入ったら少し変えてみますよ。

─いい意味で、すごく計算して動いているイメージも一方であったと思いますよ。

角舘:全然! 全体の音のバランスとか、そういうのも最初は本当に考えない。今回で言えば、「windorgan」が一番トラック数が多くて……100くらい使ったかな……ミックスも自分でやったんだけど、そういうのも全部最初から考えていたわけじゃなかった。なんなら、今回のアルバム自体、オリンピックが来る、でもまだコロナは来ていない……という、東京の町が活性化していた時に作り始めたから、当初はこんな作品になるとは思っていなかったわけです。そもそも去年中に本当はリリースする予定だったから。それこそ、さっき話したように調子が良くなる前に録音していた曲も半分はある。でも、それは調子だけじゃなくてコロナでなかなかみんなで集まれなくなったとか俺自身も気持ち的に少し沈んでしまったとか、そういうこともあって、それなら、いっそ延期しようってことになったんですね。でも、結果として延期したことで大事な期間を過ごせたと思っているし、聴いてくれる人にも僕ら自身にも寄り添えるアルバムになったと思ってます。20代最後のアルバムがこれだったのはよかったと思いますね。


Photo by Sho Nakajima

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