Yogee New Waves 角舘健悟が語る、雑多な世界で見出した歌のバランス感覚

メンバーとのぶつかり合いの中で生まれたメロディ

─でも「Ana no Mujina」なんかは割と明確に70年代のアメリカの音楽のアーシーでいなたい風合いが根っこに感じられます。ザ・バンドとかリトル・フィートとかの、少し後ろにもたつく感じのリズムを基調に洗練させたギター・サウンドへと昇華させていて。

角舘:僕は昔ドラマーだったからビートの観点が強くて。それが何のルーツかはわからないし、どこから発祥されたものなのかも正直あまりわかってないまま曲を作っちゃうんです。この曲であれば、最初はもっとメジャー7thのコードを多用したものだったんですよ。

─え、それはまったく想像がつかない。

角舘:でしょ? ところがウチ(Yogee)のボン(竹村郁哉)や上野(恒星)くんはもうちょっと土臭い感覚が好きだから、合わせてみたら全然違う感じになってきちゃった。それが最初はイヤだったの(笑)。俺の気持ちはこんなんじゃない!って。でも、やっていくうちに彼らが楽しそうだったっていうのもあって、じゃあ、もうメジャー7th抜いちゃえって。俺は偏見が強い男だから、メンバーとぶつかることも多いんだけど、この曲に関して言えばよかったなと。メンバーみんな俺の気分を大事にしてくれてるから、俺がこうしたい!って言ったらそれを尊重してくれるんだけど、でも、当然彼らにだってやりたいことがあるわけで。「Ana no Mujina」はそうしたぶつかり合いのアンサーみたいな曲でもあると思う。でもそういうプロセスによって、俺もそういう土臭い音楽の良さがだんだんわかってくるようになったし、あとから、「細野晴臣さんのメロディみたい」って言われたりして、そういえば細野さんの作品好きで聴いていたしなあって思い返したり。



─それこそ雑食でいろいろ聴いていることが生きてくる。

角舘:そうそう。ごちゃまぜになっているから。それによって最近頑固さがとれてきた(笑)。例えば1曲目の「SISSOU」って、これ、僕にはアズテック・カメラなんですね。でも、それってギター・ポップとしてのアズテック・カメラじゃない。ロディ・フレイムってジャズに影響を受けているじゃないですか。そういうところが僕は好きで。すごいブラックな要素が入っているでしょ? 4枚目くらいになると本当にジャズっぽい曲もあったりするじゃないですか。ドギーなギター・サウンドなのに、ジャズの要素もあれば良質なアカデミズムを感じさせる部分もあって、そういうところがアズテック・カメラの好きなところなんですよ。それって僕自身にもあるなって思うし、そういうところに都会性もあると思うしね。好きなモノに対してすごく正直な人なんだなって。コミュニティとか属性に委ねてないところとかもすごくいい。

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