デュラン・デュランが語る、80年代が特別だった理由、革新的であり続けるためのバンド論

80年代とはなんだったのか?

ーみなさんは音楽の枠だけでなく、ジェンダーの枠も超えています。私たちが慣れ親しんだものとは全く異なる女性像を取り上げてきましたよね。例えば、『Rio』のジャケットには、笑顔を浮かべる女の子の顔が描かれています。あれは今までに見たことがないものでした。

サイモン:君の言うとおり、あれは男性にも女性にも魅力的なイメージだった。彼女は性的なものではなく、人生のあるべき姿を示していたんだ。

ニック:音楽の革新が盛んに行われていた時代だった。この時代のアーティストを見てみると、誰もが自分のアイデンティティを持っていた。個人の創造性が問われる時代で、誰もがそれに応えていた。自分自身のスペースを切り拓かなければならないことを、誰もが知っていた。80年代を今振り返ると、ファッション、デザイン、アートなどすべてにおいて、あの頃のシーンが数十年後のすべてを発展させていったように思う。

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ジョン:今日のローリングストーン読者は、70年代や80年代前半に年末の投票を行い、例えばその年のベスト・ベーシストを読者が投票していたことに驚くかもしれないね。若いミュージシャンはそれを参考にして育ってきた。こういったことを考えるのは、ノスタルジーに浸るのとは違う。それは、僕たちが幸運にも受けた教育の賜物なんだ。

サイモン:何もかもバラバラだった。同じジャンルのバンドでも、それぞれの音がとても違っていた。

ニック:80年代は目立つこと、個性的であることが重要だった。90年代は逆に、周りに合わせることが重要だったように思う。同じトレーナーと同じジーンズが必要だったし、同じようなサウンドが必要だった。80年代はそんなことは全くなかった。

ー斬新なアイデアと個性を大切にしているようですね。

サイモン:僕たちがそういうふうに育ってきて、それが自分たちのスタンダードになったとも言えるね。だから、それ以下のもの、革新的でないもの、無難なものには魅力を感じないんだ。

ーデュラン・デュランはアルバムを15枚出してきましたが、すべて違いますよね。

ロジャー:『Rio』がこの時期の傑作だと言う人もいるけど、次のレコードでは全く違うものを作った。プロデューサーも違うし、スタジオも違うし、作曲も録音もまったく新しい方法で行なった。なぜ自分たちのDNAがそうなっているのかわからないけど、(変化することは)常に意識していた。

サイモン:今ではそれが当たり前になっているよね。『FUTURE PAST』が前作『Paper Gods』とどれほど違うか。自分たちが前作を完成させたとき、どれほど革新的だと感じたか覚えてる?

ニック:アルバムを出すときには、すべてのアーティストがそう感じなければならないと思う。その時点での自分の最高傑作であり、自分ができる限りのことをした結果、このアルバムの曲はこれまでの自分の作品を上回るものになっている。

サイモン:だって、新たに出すレコードは、それまでのキャリアの集大成なんだから。



ー『Paper Gods』パート2を作ってくれたら、多くの人が喜んだと思います。

サイモン:僕らはそうしなかった、ということだ。

ニック:僕らはみんな野心的で、創造性については特にそうだ。バンドを始めたとき、ジョンと僕は最初のレコードの計画を立てながら、きっと目標にたどり着けるだろうとわかっていた。よくコンサートに行って、照明の数を数えたり、舞台裏のトラックを見て「何台のトラックが必要だ」とか言ったりしていた。

ロジャー:14歳の頃から計画していたというから驚きだ(笑)。

ーみなさんの本の中で、ジョンとニックがロキシー・ミュージックを観ている美しいシーンがあります。町のクールな女の子たちがみんなそこにいたという記述や、ブライアン・フェリーがリムジンに乗り込むとき、シャンペンのコルクをあなたに渡す場面もあります。美しいバトンタッチですね。

ジョン:ロキシー・ミュージックには大きな影響を受けている。いろんな物事が同時に起こっている感じ、あんなバンドはそうそういない。僕らはストレートでわかりやすいものを作ることに興味はないからね。フレーミング・リップスのウェイン・コインが、自分でなんでもコントロールしたいものだから、前作の制作がいかに難しかったか語っている記事を読んだ。ドラマーも「何をしてほしいんだ?」という感じだったとね。でも、僕ら4人はそういうとき、自分自身をクリエイティブに表現することができる。それがこのバンドの楽しいところだ。サイモンがどんなコードを弾くか教えてくれるのを、みんなで座って待っているわけではない。そういうバンドではないんだ。

サイモン:なるほど、歌詞が完成するのをじっと待っているわけだね(笑)。

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