デュラン・デュランが語る、80年代が特別だった理由、革新的であり続けるためのバンド論

グレアム・コクソンとエロル・アルカンの貢献

ーみなさんがおっしゃる通り、コンテンポラリーな音を鳴らしつつ、過去のあらゆる部分が参照されている。私がユニークなポジションと言ったのは、常に未来に向かいながら、過去を持ち歩いているように感じるからです。

サイモン:君が言ってくれた「オーディエンスが可能性を与えてくれる」という言葉も、何かに通じているような気がするね。新しいアルバムを出すたびに「Rio」を聴きたがるような観客なんていない。彼らは、僕たちが実験的で新しいことをすることに慣れていて、今ではそれを強く求めている。

ニック:興味深いことに、(どんなバンドも)1stアルバムを出すときにパラメータを設定すると思う。1981年に『Duran Duran』を出したときは、「Girls on film」、シーケンスを使った「Planet Earth」、オーケストラを使った7分間のインスト曲(「Tel Aviv」)などが収録されていて、すべてを決定づけていた。それが4枚目のアルバム『Notorious』になると、僕らはサウンドを完全に変えてしまったので、(タイトル曲の)「Notorious」がラジオで取り上げられるまで、レーベルが心配していたのを覚えている。

ジョン:僕らは、何かを真似しようとすることの間違いを、かなり早い段階で学んだ。以前にヒットした曲や成功した曲を書き直そうとすること。僕らはその間違いを犯したことがある。でも、特にギター・プレイヤーのセクションでは、このアルバムで結実した転換点があった。グレアム・コクソン(ブラー)のアルバムへの貢献度は計り知れないものがある。実はここ数年、サウンドのその部分を埋めるのにちょっとした問題があったんだけど、今回はとても刺激的なものにできた。

サイモン:最高峰のギタリストを起用したのは、(元メンバーの)アンディ・テイラー以来で初めてのことだ。


グレアム・コクソンは最近のライブにも参加

ニック:2015年の前作『Paper Gods』の大半でギターを担当したジョン・フルシアンテ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、彼も素晴らしい仕事をしたと思うけどね。

サイモン:彼が弾いていない曲もあったけど、たしかに彼はいい仕事をしてくれた。

ジョン:ジョンは(スタジオの)同じ部屋にいなかったという違いもあったかな。今回素晴らしかったのは、同じ部屋にいたギタリストが本当にクリエイティブで、曲作りをボトムアップから手伝ってくれたこと。アンディが(2001年の)再結成でバンドに参加して以来、そのようなことはなかったからね。グレアムが一緒にいてくれたことは、僕たちにとって大きな変化であり、とても良い気分転換になった。

サイモン:そして、彼はとても強い個性を持っている。グレアムがもたらす味があって、それは酸味と苦味の中間のようなものだ。彼は甘いギタリストではないし、不協和音が好きで、物事を少しずつ歪ませていくことを持ち味としている。それはアルバム全体に注ぎ込まれた強烈なフレーバーなんだ。

サイモン:彼が制作中に言ってたけど、どんなサウンドがデュラン・デュランに合うのか事前に考えていたそうだね。彼はペダルや自分のやりたいことを厳選していた。だから、来てくれる前から準備ができていたんだ。

ジョン:僕らはグレアムやエロル・アルカン(本作のプロデューサー)のような人たちに頼っているところがある。これまで一緒に仕事してきた最高のプロデューサーたちは、僕らに何ができるかを教えてくれたり、自分たちが何者であるかを思い出させてくれた。僕らは「これまでにやったことのないことをやりたい」と思う傾向があるけど、そこで優れたプロデューサーは「それが君のやり方だ! みんなが聞きたいと思っているものだ!」と言ってくれるんだ。こちらが「そうだけど、それはもうやったよ」と言うと、彼らは「そうだね、でも、それは君がやるべきことだよ」と返してくる。そういうフィードバックが必要なんだ。


エロル・アルカンが制作過程を語った動画

ロジャー:エロルは、このアルバムに対して確固たるヴィジョンを持っていたと思う。そのヴィジョンの一端を担ったのは、各メンバーの声に耳を傾けるようにすることだった。彼はドラムの音や叩き方、ベースの音、キーボード、ハーモニー、歌詞のアイデアなどをしっかり理解してくれていた。それに、最初のセッションの前に電話をかけてきて、「あなたの演奏がサウンドの大きな部分を占めることになるでしょう」と言ってくれたのを覚えている。

サイモン:今回のアルバムでは、ドラムがとても重要な役割を果たしていると思う。ロジャーが叩いたフィルのいくつかだったり、ドラムに込められたパワーやドライブ感に驚かされたよ。

ロジャー:それを復活させようとしたのは、間違いなくエロルのヴィジョンだったと思う。

ーこのバンドには「お荷物」がおらず、全員が常にスポットライトを浴びている。この相互作用の感覚は非常にレアです。

サイモン:僕らと話していればわかるだろう、みんな何か言いたいことがあるんだ。そして、言いたいことがあるなら早く言わないと、他のメンバーに邪魔されてしまう(笑)。

ニック:その点でもグレアムはよかった。なぜなら、他のギタリストや過去に一緒に仕事をした人たちは、僕らが長い歴史を持っているため、多少の脅迫観念を持っていた。でも、グレアムは自分たちよりも上手くやってくれた。彼の性格は非常に合っていた。

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