ヤング・マーブル・ジャイアンツを構成する5枚 アリソンが語るポストパンクという青春

『Colossal Youth』ジャケット、写真中央がアリソン・スタットン


ウィークエンドと「Final Day」

―YMG解散後、あなたが結成したウィークエンドではジャズやラテン音楽を消化してYMGよりポップで洗練されたサウンドに取り組んでいますよね。今回選んでくださった5枚は、YMG以上にウィークエンドのルーツのような気もしました。

アリソン:そうね。YMGにはジャズの要素はそれほどなかったと思うし、ウィークエンドの方がその影響は色濃く出ていると思うわ。サイモン(・エマーソン。当時はサイモン・ブースと名乗っていた)が、私がそれまで聴いたことのなかったジャズのレコードをたくさん聴いていたから。ロンドンに移住してサイモンと一緒に音楽作りを始めた頃は、サイケから始まってジャズも色々と聴くようになった。サイモンを通して家族とも言えるようなロンドンのジャズ・ミュージシャンに出会えたことは大き買ったわね。ラリー・スタビンズもそうだし、ドーソン・ミラーもそう。ドーソンは残念ながら亡くなってしまったけど、素晴らしいパーカッショニストだったわ。彼の持つ感性を私たちの音楽に持ち込んでくれたのよ。どちらかと言うと、ラテンジャズ・パーカッションという感じね。それに、ロイ・ドッズのドラムもすごく素敵だったし、彼も亡くなってしまったけど。ハリー・ベケットのジャズトランペットも最高だった。こうした要素は、YMGの後に出て来たものなのは間違いないわね。



―ウィークエンド唯一のアルバム『La Variete』(1982年)はイギリスのインディー・シーンで、ジャズやブラジル音楽が再評価されるきっかけになった名作ですが、今振り返ってみてどんな感想を持たれますか?

アリソン:『La Variete』の何曲かは、サイモンと出会う前に私が既に書いていたものなの。当時は、YMGのサウンドを踏襲したミニマルなベースラインと歌詞だけ出来ていた感じだった。それに、(ウィークエンドのメンバーである)スパイクがギター・パートを書き足してくれたのよ。静謐で行間がたっぷりあるような雰囲気の曲だった。その後、サイモンに出会って、彼がたくさんのミュージシャンをレコーディングに招いたんだけど、まるでお祭りのような賑やかな雰囲気で、それで明るくて楽しいサウンドに変化していったんじゃないかしら。内省的な部分は鳴りを潜めて、もっと外に向かっているサウンドになったの。物静かで思慮深くて瞑想的で行間のあるサウンドは自然と消滅していったのね。もっと別のものへと変身を遂げたのよ。ロビン・ミラーがプロデュースに加わってくれたんだけど、彼はとても優秀だったわ。振り返ってみると、まるで自分の子供が成長して、より大きな家族の一員として成長する姿を見ているような感覚だった。参加したミュージシャンはみんな経験豊富で、この大きな集団の中で自分の立ち位置を見極めるというとても良いレッスンになったと思う。ライブに関して言えば、YMGよりずっとやりやすかったかもしれないわ。YMGはとても静かな音楽で、観客もどうやって受け止めるかというある種の実験の場のような感じだったけれど、ウィークエンドの曲はダンサブルで、ただ楽しめばよかったから。2つのバンドで対極的なライブを経験出来たことは、とても実りあるものだったと思う。



—今、YMG時代を振り返って見て、自分たちの音楽を作り出そうと試行錯誤していた3人の若者たちをどのように思われますか?

アリソン:あの頃はみんな本当に若かったわ(笑)。自分たちの世界に閉じこもって、頭の中だけで完結していたようなものだったんじゃないかしら。音楽的にはとても上手くいっていたけれど、ユニットとしては機能していなかったかもしれないわね。みんなそれぞれ考え方も性格も違うし、モクサム兄弟と私は全く異なるバックグラウンドで育ったし、経験してきたことも全然違ったから。精神的にもっと成熟していて、上手に妥協したり協力したりしながら、異なるパーソナリティをバンドとしてひとつの人格へとまとめられたらもっと上手くいったのかもしれない。3人とも、あの年代特有の壊れ方をしていたのよ。それを上手に操って、性格の違いからくる衝突を回避したり、修正したりしてバンドとしてのまとまりを作り出すことができなかった。

メンバーとの関係性については、私もとても悩んだわ。苦しい思いをしていたの。でも、スチュワートやフィルも同じように悩んでいたことは理解していたし、彼らに対しては特別な思いがある。あの頃、彼らがどんなことで悩んでいたのか、自分はなぜ苦しんでいたのか、今ならよくわかるわ。なぜ私たちが長くYMGを続けられなかったのか、それもわかる。あの頃は、まず自分たちが何者なのかを理解する時間が必要だったの。ユニットとして機能する方法を模索する前に、まず自分自身を見つけなければならなかったんだと思う。それをしない限り、バンドとして先に進むことはできなかったんじゃないかしら。

―あなたにとってYMGは青春そのものだったんですね。最後に、YMGの好きな曲を1曲選んで頂けますか?

アリソン:毎回同じ曲を選んでしまうんだけど、やっぱり「Final Day」がいちばん好きなの。原子力というのは、今の時代に避けて通れない問題だと思うから。日本も原子力発電所の事故という惨劇を経験しているでしょう? それに、気候変動も世界の終わりを現実のものとして肌で感じさせる脅威になっている。こうした問題について、ずっと議論したり問題提起したりしてきた人たちはいるのに、良くなるどころか悪い方向へと加速しているように思える。核戦争の恐怖が一旦収まったと思ったら、今度は気候変動の問題が深刻化しているし。世界中で大雨などの異常気象が起こっているでしょう。この歌で歌われているような核戦争の脅威は鳴りを潜めているとしても、原子力がどこかへいってしまったわけではなく、依然として私たちは原子力と共に生きているわ。そのうえ、今度は気候変動が緊急事態を迎えているのよ。この地球が手遅れになる前に、早く状況が改善するように何か手を打たなければと強く思っているの。

―確かに。日本で深刻な原発事故が起こったのは10年以上も前のことですが、いまだに何も解決していません。

アリソン:その通りね。毎日次々に新しいニュースが飛び込んでくるから、人々は問題を簡単に忘れてしまう。それに人間は経済のことばかり気にして根本的な問題から目をそらしている。でも、原子力や環境破壊の問題は、今後も何代にも渡って受け継がれていくことになるから声を大にして語り継いでいなかければならないし、原子力反対のキャンペーンも地道に継続していくべきだと思うわ。それを経験者が先頭に立って声を上げていくことも大切だと思う。こうした様々な問題が今まさに自分たちの身に起こっていることを、私たちは決して忘れてはいけないの。






ヤング・マーブル・ジャイアンツ
『Colossal Youth 40周年記念盤』
2021年11月26日リリース

●国内盤2枚組CD
●ライナーノーツ対訳、歌詞対訳、日本版解説、1980年当時の冊子をモチーフとしたイラスト入りのスペシャル・ブックレットを封入
●Disc 2『Loose Ends And Sharp Cuts』にはEP/シングル/コンピレーションの楽曲を収録
●Tシャツ付セットも発売(数量限定)

詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12163


Translated by Yumi Hasegawa

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