ヤング・マーブル・ジャイアンツを構成する5枚 アリソンが語るポストパンクという青春

『Colossal Youth』ジャケット、写真中央がアリソン・スタットン


シンガー・ソングライターやジャズからの影響

―ではリストに戻って、サン・キル・ムーン『Benji』(2014年)。今回のリストで唯一のシンガー・ソングライターです。

アリソン:レッド・ハウス・ペインターズの創立メンバーだったマーク・コズレックのソロ・ユニットね。彼の書く曲には、とにかく嘘がないの。飾り立てた言葉ではなくて、心の奥底から沸き上がってくるような感情をそのまま曲に込めているアーティストよ。彼の書く歌詞は本当に素晴らしくて、とても優れたストーリーテラーだと思う。自意識過剰なところのないアーティストと言うのかしら。きっと、複雑なプロダクションやマスタリングを繰り返して出来上がったサウンドなんでしょうけど、聴き手にそれを感じさせない。ただ部屋の中で黙々と作った曲にストーリーを込めて、それを私たちに語りかけてくれるような感じがする。そのストーリーは時にはとてもパワフルなの。主に彼の人生について書かれているんだけど、すごく心に響く曲が幾つもあって、特に私が好きなのは 「I Can’t Live Without My Mother’s Love」。何度も聴いてそのストーリーについて知っているのに繰り返し聴きたくなるの。



―スチュワートが選んだ10枚にはジョニ・ミッチェル『Hejira』(逃避行)が入っていましたが、YMGのパーソナルな空気感はシンガー・ソングライターの作品に通じるところがありますね、

アリソン:私もジョニ・ミッチェルは大好きで、今回のセレクトにも入れようか迷ったのよ。私たちはこうしたシンガー・ソングライターの曲をたくさん聴いていたから、無意識のうちに影響を受けたところはあるかもしれないわね。

―最後の一枚は、フローティング・ポインツ、ファラオ・サンダース&ロンドン交響楽団『Promises』。今回のリストのなかでは一番新しい作品です(2021年)。

アリソン:このアルバムがリリースされるより前に、彼らのライブ音源をよく聴いていたの。ちょうどロックダウンの頃ね。元々サム・シェパード(=フローティング・ポインツ)の音楽がとても好きでよく聴いていた。このアルバムはミックスが素晴らしいし、ファラオ・サンダースも最高のアーティスト。ある意味、静寂が心地良いアルバムなの。よく覚えているのは、キッチンで作業をしていた時に彼らのライブストリーミングが流れてきて。思わず手を止めて聴き入ってしまって、結局座って最後までじっくり聴いてしまったのよ。彼らの音楽は、座って静かに聴かなければと思わせてくれた。そういう時間を与えてくれて、とても感謝したわ。このアルバムは忙しない気持ちを落ち着かせてくれる効果があるの。たまには忙しい手を止めてじっくり音楽に浸ることが、なによりも癒しになることに気づかせてくれたわ。ちょっと気持ちが乱れていて心を落ち着かせたい時にお薦めしたいアルバムよ。



―ジャズでは他にどんなアーティストが好きですか?

アリソン:好きなアーティストはたくさんいるわ。例えばトニー・アレン。フェラのアルバムを通して彼のことを知ったの。それからもちろん、ヌバイア・ガルシア。新しいアーティストはいつでエキサイティングだし、積極的に新しい人たちも聴くようにしている。いまロンドンを中心にすごく面白いことをやっている若くてフレッシュなミュージシャンが出て来ていて、そういう若いアーティストに刺激を受けることが多いわ。そうした人たちがお互いにコラボレーションしていて、それがとても上手くいっているの。



―今回選んだ5作品はロック以外のジャンルの作品が多いですが、もともとあなたはロックよりこうしたワールド・ミュージックやジャズをよく聴かれていたのでしょうか。

アリソン:ずっとロックを聴いてきたし、決して敢えてロックを遠ざけるようなつもりはないのよ。ロック音楽の恩恵をすごく受けていると思うし。ただ、私はモータウンをたくさん聴いて育ったから、リズミックなものを選んでしまうのかもしれない。今回は選んでいないけど、モータウンは私の最も好きなジャンルのひとつ。もちろん、ビートルズのような60年代のポップ・ミュージックも聴いていた。当時はそうした音楽がラジオでもいつもかかっていたから、ペトゥラ・クラークやサンディ・ショーといった女性シンガーもよく聴いたわ。でも、やっぱりモータウンがいちばん好きだったかな。歌っている内容はごくありふれていて、失恋だとか男の子のことだとか、そこまで深い内容ではないけれど、それでもストーリーを頭の中で想像するのが楽しかったの。イーノなんかの曲はもっと実験的で、より抽象的なストーリーがあるから曲を聴きながら頭の中で映像を思い浮かべたりするけれど。私はミュージック・ビデオを観て育った世代じゃないから。自分の頭の中で自分なりに映像やサウンドトラックを創り上げていたの。

―YMGの曲も、聴き手の想像力を掻きたてますね。

アリソン:そうかもしれない。曲のほとんどはスチュワートが書いていて、彼のパーソナルな経験に基づいた内容なんだけれど、私はそのストーリーを自分なりに解釈して歌っていたわ。私は歌詞を書くという作業には関わっていなかったけれど、違う角度から彼の書いた詞を歌で表現していたと思う。

―YMG活動時にはどんな音楽を聴かれていましたか?

アリソン:クラフトワーク、ディーヴォ、ボウイ、イーノ、トム・ウェイツ、プリテンダーズもよく聴いていたわ。80年代に入る頃には、レインコーツやキャバレー・ヴォルテールといったバンドもよく聴くようになった。

―いろんなアーティストを幅広く聴かれていたんですね。

アリソン:ええ、その通りよ。

Translated by Yumi Hasegawa

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