ジョン・ライドンが語る、PiL40周年と2018年の社会

2018年7月に来日公演を行うPiL。左から2番目がジョン・ライドン。(C) PiL Official Ltd (Photo by Tomohiro Noritsune)

パブリック・イメージ・リミテッド(以下PiL)がデビュー40周年を記念した「The Public Image is Rotten」ツアーの一環で、7月3日(火)に東京・六本木EXシアター、7月4日(水)に大阪・IMP HALLで来日公演を行う。今回RSJでは、バンドの首謀者であるジョン・ライドンに電話インタビューを実施。ele-king編集長・野田努に質問作成を依頼し、2018年の今思うことを存分に語ってもらった。

ジョン・ライドン相手に真面目な質問(捻りのない質問)ばかりしてどうすると思いながら、いざ質問を考えてみると洒落のひとつも思い浮かばない……。よくない。日本では、いつの間にかパンクといえばクソ真面目なものになってしまったが、本来は、反抗的だがイギリス流のシニカルさを持った、シリアスだがおちゃらけてもいる、もっと奥の深いものだというのに……。ところが、有能な通訳者以上の通訳者である坂本麻里子さんの技術によって、短時間のなか、ものの見事にジョン・ライドン氏の言葉を引き出すことに成功した。あるいは、ジョン・ライドン氏の機転というか、さすがの反射神経というか、なんかまだぜんぜんその魂は衰えていないじゃないかと。いや、むしろこんな硬直した時代にこそ、彼のような存在が必要なのだろう。勇気づけられもするし、考えさせられもするし、笑わせられもするという、本当にすごい人だ。(野田・談)

PiLは自分自身や世の中の間違いを発見していくことで、アメイジングな経験であり続けてきた。

―PiLは今まさに40周年記念ツアー中ですよね。手応えはいかがですか?

ジョン:……こりゃまた、えらく退屈な質問だね(笑)。

―すみません(苦笑)。

ジョン:あー……俺はまあ、どのギグも毎回楽しんでいるんだよ。ただ、今やっていること、これはおそらく、俺がこれまで音楽においてやってきたなかでも最も素晴らしい貢献だろうし、しかも、たまたま今年はパブリック・イメージにとっての(アルバム・デビュー)40周年に当たる、という。俺たちは観客の間にものすごくハイで、そして素晴らしい反応を生み出しているところだよ。それにバンドとオーディエンスとの間のコミュニケーション、それが今は実に素敵なくらい「一体化」していてね。だから、これは立派なひとつの宗教――失礼、そうじゃなくて、立派な「宗教なき教会」になっている、という。それは到達するのが大変な堂々たる達成なわけだけれども、それだけではなく、思うにそれが可能になっているのは、俺たちがお互いメンバー同士の間だけではなく、人類全般に対しても、正直さと高潔さ、そして信頼のシステムという考え方を浸透させてきたからじゃないか、と。で、それが今やこうしてポジティブな結果を生み出すに至っているわけだ。


PiLが2011年に発表したベスト盤『The Greatest Hits… So Far』

―『This Is PiL』(2012年)で再結成してからのここ数年は、じつに精力的に活動をしていますが、今のあなたを駆り立てるエネルギー源はなんなんでしょうか?

ジョン:俺はほぼ18年近く、レコード会社から巧みに操られてきて、それに耐えなければならなかったわけ。おかげで俺は出したくてもレコードをリリースさせてもらえなかったし、連中は資金面でサポートしてもくれず、それなのにレーベル側は俺を手放そうとはしなかった、と。そんなわけで、俺は文化的な忘却の淵にいた、忘れられた存在になっていたんだよ。ああしたレコード契約から脱出し自分の契約を買い戻すために、俺はテレビ番組にいろいろと出て出演料を稼がなくちゃいけなかったし、あれには本当に葛藤したね。というのも、俺は音楽がやりたかった、音楽が恋しくて仕方なかったのに、音楽にアクセスする手段を断たれてしまっていたんだから(通訳注:ジョン・ライドンは2004年に「セレブをオーストラリアのジャングルに集めて共同生活させ、様々な試練を与えサバイバルさせる」という内容のリアリティ番組『I’m a Celebrity…Get Me Out Of Here』に出演し、開始4日目に自主的に番組から降板。2008年にはイギリスのバター・ブランド「Country Life Butter」のテレビCMに出演し物議を醸した。のちにジョン・ライドンは同CM出演料をPiL再結成の資金に充てた、と明かしている)。

そんなわけでレコード業界というのは、俺にとって一種の「敵」なんだ。それでも、俺はあの苦難を耐え抜いたし、忍耐することを学び、そして勝利した。そうやって俺はインディペンデント・アクトになったんだよ。だから現時点でのPiLは、俺たちが呼ぶところの「シット・ステム(Shit+System:クソシステム)」からは独立した状態にある、という。だから責任はすべて自分たちだけで負っているし、そうすることで、俺たちは他の誰にも害を及ぼすつもりもない。そして願わくは、それを通じて自分が「音楽産業を無視したって成功を収められる」、そのとても良い具体例を体現できたらいいなと思っているんだ。

―ちなみに、歳を取って良かったなと思うことは何でしょうか?

ジョン:耐え忍んで粘る、それだろうね(苦笑)。あれは、非常に過小評価されている人間の能力だと思う。

―そうやって我慢する力は、お若い頃のあなたにも備わっていましたか。

ジョン:そうだったとは思わないな。けれども歳月をかけて成長していったわけだしね。で、自分が学べば学ぶほど、経験を重ねれば重ねるほど、人々と共有しなくちゃいけない情報が自分の中に残っていくわけで。だから、今の自分は、自分の本質にもっと慣れてきたんだろうな。クハッハッハッハッッ!

―(笑)ということは……。

ジョン:(笑)いやだから、俺たちのほとんどは自らの本質を避けようとするものだし、自分の抱える様々な問題にちゃんと対処していないだろ? 自分たちが間違っていても、それを自ら正そうとはしない、という。で、俺にとってPiLというのは、それを通じて自分自身の何が間違っているのかはもちろんのこと、この世の何がおかしいかも発見していく、そんなアメイジングな経験であり続けてきたんだよ。しかも発見するだけではなく、それを良いものにしようとしてきた、という。ヘイトを取り去り、俺たちの間を隔てるバリアを排除していくことでね。というのも、とどのつまり、俺たち人間はみんな同じひとつの「種」、「人類」というものなんだし。で、それは自然の作り出したもっとも素晴らしい功績だ。俺はそう思っているし、それがより良いものになるために、何であれ自分に貢献が果たせると思ったら(苦笑)、俺はいつでも馳せ参じますよ、と。

Translated by Mariko Sakamoto

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