ジョン・ライドンが語る、PiL40周年と2018年の社会

2018年7月に来日公演を行うPiL。左から2番目がジョン・ライドン。(C) PiL Official Ltd (Photo by Tomohiro Noritsune)


10代の不安感を耐え抜いて、大きくなれた連中は素晴らしいサヴァイヴァーだ

―自分の作品を若い世代にも聴いて欲しいという願望はあなたにも少なからずあると思います。そうやって、さっき話していたように、あなたはご自分の経験や知恵、真実を分かち合おうとしているわけですが……。

ジョン:いやいやいや。そうじゃなくて、多くの場合は、俺の方から彼らに向けて「君たちの真実を俺にシェアさせてほしい」と求めているんだよ! 物事の働き方というのは、普通はそういうものなんだし。だから、まずこっちの側からオープンに心を開いて誰かにアプローチしていけば、相手の側ももしかしたら心を開いてくれるかもしれない、ということ。そうすれば自分だって学ぶことになるんだし。

―ええ。でも、あなたは若い世代に音楽を聴いてもらうために特別な努力をする、若い世代に媚びるようなタイプではありませんよね? 

ジョン:というか、俺はそれが誰であれ、絶対誰かに媚びへつらったりしないから。俺たちはみんな平等にできているんだし。若かろうが年寄りだろうが関係なし、みんな平等。若い人間のなかにだって歳上の人間よりももっと共有できる経験をいろいろと積んできた者はいるんだし、逆に年配の人間であっても、なかにはとんでもなく怠惰で、人生をダラダラと無駄に過ごしてきた連中はいるんだからね。「人生で何かやるのか何もやらないのか、決めるのはあなたです!」ってもんだろ。

―たしかに(笑)。でも、質問者のように、10代のときに部屋にセックス・ピストルズやPiLのポスターを貼っていた世代に対してはどうですか?

ジョン:10代の人間の抱える不安感、あれは乗り越えるのが実に大変なとんでもない時期だし、それを耐え抜いて大きくなれた連中、彼らはみんな生存者だよ。素晴らしいサヴァイヴァーだ。そうではなくて、その間も自己憐憫におぼれてしまい、「ああ、自分はなんて可哀想な人間なんだろう」なんて考えてる連中は、ほんと、物事を学んでいくための時間を自ら奪っているんじゃないか?という気がするね。その人間が直面することになったどんな厄介事も、人生に生じた様々な問題も、すべては解決可能なものなんだよ。辛抱強さをもって問題に当たれば、答えは出るんだ。

―そして、粘り強さ、と。

ジョン:そう、粘り強さも。そして、絶対に、決して、他の誰かからの威圧・虐げを自分に許しちゃいけないし、誰にも「お前は何の見込みもないろくでなしだ」なんて言わせちゃいけないね。それは断じて許しちゃいけない。絶対に、自分を哀れに思ったりしちゃいけない。ってのも、それは時間の無駄だし、しかも、自己憐憫は敵が君に対して利用する武器でもあるからね。

―なるほど、いじめっこのやり口ですよね。

ジョン:そうだね。で、いじめっこはまず大抵は嫉妬が動機になっているものだし。

nullPublic Image Ltd 2012 (C) Paul Heartfield

―あなたは自分が強い人間だと思いますか? 

ジョン:ああ、というか、そうである必要があるからね。それは子供時代に自分が立ち向かわなければならなかった問題の数々のせいだし、病気のおかげであわや死にかけたんだし(通訳注:7歳のときに髄膜炎をわずらっている)。あれらの経験を生き残れたことに較べたら、それ以外の何やかやなんてもう、みすぼらしく思えるくらいだよ(苦笑)。

―あなたはミュージシャン/パフォーマーとして長いキャリアを誇るわけですが……。

ジョン:というか、人間として長く続けてきたってこと。俺は、自分の人生を精一杯フルに生きていくつもりなんだ(笑)。

―ええ。で、そのキャリアのなかで落ち込んだり迷ったりしたことはありませんでしたか?

ジョン:いやいや、それはないね! だから、俺はとにかく、その手の人間じゃないってこと。もちろん、自分だってときには混乱という問題に直面することだってあるけれども、それはまず大抵は、自分が働き過ぎた結果生じる混乱だし。

―なるほど。ご自分はワーカホリックだと思いますか?

ジョン:(苦笑)あー、他のほとんどの人間が「きっとこんなもんだろう」と思っているよりは、もっと仕事中毒な人間だね。世間に対して「ジョン・ライドンって奴は、ごろごろして一日中テレビでも観てるんだろう」って印象を自分が常に与えている、そこは承知してるからさ。

―そうですかね?!  とても生産的な人だなと思いますけども。

ジョン:ああ、でも実際テレビは観てるんだよな。(笑)ってのも、視覚からの刺激を利用して、脳が全身に指令を発するきっかけにしているから。テレビを観ながらも考えているんだよ。俺の脳はノンストップで考え続けているからね。

―ほう。それに、音楽だけではなく、絵画もかなりやっていますよね?

ジョン:ああ、あれも、だから「活動」ってこと。で、それらはどれもすべて、脳に対する優れた刺激なんだ。何もせず怠惰に過ごす、そういう機会が俺には決して訪れないんだよ。

―それって、消耗させられませんか?

ジョン:いやいや、メンタル面では疲労したりしないよ。肉体的にはイエス、疲れて非常にイラつかされるけれども、精神面ではそれはないね。それに、脳/精神を完全な状態で維持していられるなら、むしろ肉体の方を犠牲にするだろうからね、俺は。その逆、ではなくて(笑)。

―それは、きっとみんなそう思っているんじゃないでしょうか?

ジョン:(笑)。だから、肉体ならいつだって部品交換が効くわけだし。ただし、脳ばっかりは交換できないわけでさ。

―ええ。あなたは脳を保存なさったらいいんじゃないか?と思いますけどね。かなりユニークな脳なので。

ジョン:そうだな、まあ、日本酒をたっぷり呑めば、アルコール漬けで保存できるかもしれないよね(笑)。

Translated by Mariko Sakamoto

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE