ジョン・ライドンが語る、PiL40周年と2018年の社会

2018年7月に来日公演を行うPiL。左から2番目がジョン・ライドン。(C) PiL Official Ltd (Photo by Tomohiro Noritsune)


俺はあらゆるネガティブさのなかにも、ポジティブな何かを見つけることができる

―あなたはかつて「No Future」と歌っていましたが、現在は本当に未来が見れなくなった時代だと言います。

ジョン:うん、世界中がもう、驚くべき時期を迎えているね。ものすごいネガティブさ、そして分離が存在している。けれども、俺はいつだってこういう場面を「機に乗じるには最高の、勢いのある時期の到来だ」って風に捉えてきたんだよね。だから、問題があるからこそ、物事を変えていくこともできるんだ、と。問題がぼんやりと曖昧な状態のままだと、その問題の解決に乗り出せばいいのか分からなくて、それすら始めることができないわけだろ? で、現在の状況というのは、あまりに明解に境界線が引かれていて、もはや滑稽なくらいになっている、という。「持つ者」と「持たざる者」との間の格差、その差がいまや極端に明白なものになっているわけで、それを解決するのは「必須事項」に他ならない、やるしかない、と。このままでは何も続いていかないし、ここからは誰も利益を得られないって。というわけで、(問題が明解になったぶん)回答ももっとクリアーになったんじゃないか、俺はそう思っているけどね。

―なるほど。

ジョン:まあ、それが俺の考え方だ、ということだけれども。ってのも、俺はとてもオプティミスティックな人間だからね(苦笑)。

―でも、今のロンドンはどう思われますか? 再開発されて家賃高騰し、貧しい人たちが住みづらくなったロンドンを見るとさすがのあなたも悲しい気持ちになると思いますが……。

ジョン:っていうか、誰だってそう。誰も暮らせないよ、今のロンドンには。東京が高くて、もう誰も住めないってのと同じじゃない?(笑)

―いやあ〜、今ではロンドンの方が高いかもしれませんよ?

ジョン:ああ、もしかしたら、そうなんだろうな。(ややお芝居がかった口調で)そんな時代になったなんて、とんでもない話であります。どれだけ世界は変わったことでしょう、と……。

―(笑)でもまあ、世界は変わっていくものですし。

ジョン:ああ、世界は変わっているけれども、人々はそれに気づいていない、と。今現在、ひとつの文化から別の文化へと、人間の大移動が起きているわけだよね? で、それが多ければ多いほどベターだ、俺はそう思っていて。というのも、そうやって俺たちがお互いのカルチャーやお互いの周波数、それらを種々雑多に組み合わせていくやり方を学べば学ぶほど、良いものになっていくだろうと思うし。多様性、それが回答なんだよ。ナショナリズムは戦争につながっていく。それに、宗教だって戦争を引き起こす。だから俺たちは、もっともっとお互いに対してオープンマインドになる必要があるんだよ。というのも、とどのつまり……俺はそこは理解しているからね。だって、(苦笑)俺はヨーロッパ人だし。ヨーロッパ人はみんな移民だからね。俺たち、全員がそうだよ(笑)。常に他の場所へと移動しているんだしさ。

―こうした、サッチャーに端を発した新自由主義/グローバル資本主義に対して、今あなたは何を思いますか? 

ジョン:いやあ、別に彼女に対して何も非難はしないね。だから、選挙で選出された連中をとがめることはできないだろう、と。そうではなくて、彼らに投票した人間たちを責めなくてはいけない、と。

―だからなんですね、あなたがブレグジットを支持していたのは。民主主義投票によって出た結果である以上は、支持する、ということでしょうか。

ジョン:まあ、過半数以上の人間が離脱を求めたのなら、それを否定したり、不快だからって、社会不安を引き起こすわけにはいかないよ! 結果は出たんだし、前に向かって進んでいく時期だろう、と。そうは言ったって、俺は「分離」には強く抵抗する、そういう人間なんだけどね。ただ、それと同時に、もしかしたらブレグジットはポジティブな結果になるかもしれない、とも思っていて。だから、たとえドナルド・トランプというネガティブの塊が存在していても、彼のおかげで人々は疑問を発するようになったわけだろ? 「自分たちの考えてきた『(いわゆるプロの)政治家』というものは、実はまったく根拠がないんじゃないか?」と(苦笑)。……で、旧来通りの「政治家」を据えるんなら、人々にはもうちょっと政治家を懲らしめて締めてやる必要がある、と。

―なるほど。

ジョン:だろ? で、そうやって人々の手にもっとコントロール権を取り戻そう、と。だから、彼(トランプ)は、非常に興味深い先例を敷いているところなんだよ。というのも、彼は明らかに「全世界でもっともひどい人間」なわけ。ところがなんとも笑えることに、我々はもしかしたらそこに結論を見出したのかもしれない、と。

―うーん(苦笑)。

ジョン:だけど、それが俺の人生に対するアプローチの仕方だ、というか。あらゆるネガティブさのなかにも、俺はポジティブな何かを見つけることができる。で、そういう姿勢は、解決を見出していくためのコアになる根っこ、なんだよ。単にそこから「イヤだ!」と逃げ出して、嫌悪感丸出しでギャーギャー叫ぶのではなく、ね。というのも、逃げ回ってわめいたって、問題は解決しないんだからさ。それをやったら、君が悪魔として描いている対象、それと同じくらいタチの悪い悪魔に、君もなってしまうんだよ。

―なるほど。ドナルド・トランプは非常に悪い「毒」かもしれませんが、毒だったものが良い薬品になることだってあるわけですしね。

ジョン:イエース。そうなり得るんだよ。実際、人間はそうやって色んな病気を治療してきたんじゃなかった? ホメオパシー(同種治療。病気や症状を引き起こすものを利用してその病気を治す、との考え方)だと。ただまあ、残念なことに、(苦笑)彼の場合はこう、かなり大量に服用しなくちゃいけないわけだけど。クハッハッハッハッ!

―(苦笑)。しかし、福祉社会というものに頼れなくなったとき、経済的に弱い人たちはどのように生きていけばいいと思いますか?

ジョン:だから、閣僚主義というのはすべて、突き詰めれば腐敗しているんだよ。それはどうしようもなくて、腐敗していかざるを得ない、と。

―そういう状況で、わたしたち一般人や社会的弱者はどうサヴァイブできるんでしょう?

ジョン:閣僚/政治家の活動を常時モニターして、長々と椅子に座らせることなく回転を速めること、だよ! 「政治」を職業キャリアにしている連中がいるわけだけど、彼らは4年やったら終わり、さようなら〜、と任期をカットするべきだと思ってる。だろう? それ以上経つと、汚染が始まってしまうものだから。彼らは自分たちの保身のために仕事をするようになるし、それが毒なんだ。抗生物質を飲むのも制限した方がいいかもな、「もう飲むな!」と(笑)。

―しかし、さっき言ったように、福祉がないと生き残れない人々、彼らはどうすればいいのでしょうね?

ジョン:右派政党と左派政党、彼らの視座はどちらにせよ、そんなに大差ないと俺の目には映るね。とにかくどっちも自己保身で動いているし、彼ら全員、とても利己的な視点の持ち主だよ。

Translated by Mariko Sakamoto

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