人間椅子が語る、欧州公演やコロナ禍を経て、シンプルな一体感で伝えたかったこと

デビューの頃から自分たちはすっごい面白いことをやってると思ってる

―バンドのベーシックは変わっていないのに注目度が高まっている状況ってご本人としてはどういう感覚なんですか?

和嶋:高まってるんですかねえ……? ちょっと実感ないなあ……でも、去年『映画 人間椅子 バンド生活三十年』を公開したけど、そんなこと数年前には考えもしなかったもんね。やっぱり、ロックを好きな人がいっぱいいて、いい音楽をやってる人もいっぱいいる。そんな中にあって僕たちはちょっと個性的で独特な表現をしているので、そこが伝わったのかなと思いますね。デビューの頃から自分たちはすっごい面白いことをやってると思ってるんですよ。だけど、僕らみたいなバンドが超メジャーになるのもおかしいと思うし、今ぐらいでちょうどいいと思う。ただ、僕らの曲を聴いたりライブを観て「おもしれえ!」と思ってくれたり、笑ったり泣いたりしてもらえるのが幸せなので、そういう人たちがまたちょっとでも増えたらうれしいですね。

―『新青年』リリース以降で最も大きなトピックとしては初のヨーロッパツアーが挙げられると思います。僕もロンドン公演を拝見しましたが、すごく盛り上がっていましたよね。あのツアーを振り返ってみていかがですか?

和嶋:あれから1年以上が経った今となっては、「夢見てたんじゃないかな? あれは本当だったのかな?」と思います(笑)。しかも、ロンドンですごくウケたし。僕たちはイギリスのロックを聴いてカッコいいと思って、それをバンドでやりたくて中学の頃からバンドを始めたんですけど、日本人が海外のハードロックをそのままなぞってやるよりも、和風でやるほうが海外ではウケるだろうという思いがあって、日本語で歌ったり、文学を取り入れたり自分たちなりのオリジナリティを加えていたんです。それを信じて続けていたら本当に海外で受け入れられた。そうやって認めていただけたことで、「ああ、やってきてよかったな」と思いました。

鈴木:やってみてわかったのは、思ってたよりも金がかかるんだなということで。海外には本当にまた行きたいし、次はもっと具体的に考えないといけないので、僕ら3人とローディとPAの5人だけで回れるように、なんとか工夫したいですね。あと、向こうのライブハウスって思ってたより大きい音が出せなくて、「もっと小さくしろ」って何度も言われて、ベース的には全然望んでいた音にならなかったからリベンジしたいんですよ。音が小さくてもいい音が鳴るアンプを荷物代がかかっても持っていくべきでした。

―前回は夢を実現するという意味合いが強かったと思うんですけど、次に行くとなったらまた違ったものになりますよね。ビジネス面でも成功させないと。

和嶋:現実的な行き方をね。

鈴木:毎回毎回タクシー乗ってたら絶対ダメだなって。自分たちで機材を担いで、とことん節約しないと次はない。長く行けるように考えないとダメですね。

―ノブさんはどうでしたか?

ナカジマ:僕は海外でワンマンをやるというのがバンド人生における夢だったし、それが叶ったので今でも幸せですね。僕のこの先のバンド人生にかなり影響を与えてくれたと思います。今2人が言ってくれたようにいろんな面で反省点もあるので、次に行くときはそれを活かせるようしたいし、いろんな土地にも行きたいし、夢が膨らんじゃってますね。もちろん、コロナの状況は変わらないとダメだから慎重にならざるを得ないと思うんですけど。

―ロンドンのお客さんはシュッとしたファッションの人たちが多かったですね。

和嶋:お客さんはカッコよかったね! あれは参ったなあ! 女の子もみんなオシャレなんだよ。その前日に行ったドイツの工業都市ボーフムとは全然客層が違うんだよね。

ナカジマ:ボーフムはガタイのいい人たちばかりで、みんなロックTを着てて、ビール飲みながら「音楽楽しむでー!」って感じで。

―終演後のミートアンドグリートでは参加者一人ひとりとしっかり話し込んでいる姿が印象的でした。

鈴木:すごく高いチケットを買ってもらったから、僕らもついサービス精神が出ちゃって。

ナカジマ:嬉しかったしね!

和嶋:みなさん片言だけど日本語の挨拶を覚えてきてくれるんですよ。相手の母国語に合わせてコミュニケーションを取りたいっていう気持ちは万国共通なんだなと。

―イギリスだけではなく、いろんな国からお客さんが来ていました。

ナカジマ:ポーランドとかね。

和嶋:イタリアもいた。イスラエルもいなかったかな。

―YouTubeの再生回数もすごいけど、あの何百万という数字よりも目の前にいる一人ひとりのお客さんのほうがよりリアルというか。

和嶋:ああ、そうなんですよ。数字は数字だから想像するしかないんだけど、本当に来てくれたっていうことで実感できましたね。

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