ちゃんみな、演劇やサーカス要素を取り込んだストーリー展開で魅せた中野サンプラザ

だが、なかには彼女を蹴落としたい人物もいる。かつてのライバルだ。「ルーシー」が始まるとライバル軍団が登場。全員が手鏡をちゃんみなに向かって掲げる。まるで「あんたの醜さを見てみなさい」とでもいうように。そして「Needy」が始まると、鏡台には青色の薬がある。ライバルは薬を飲みながら自分の身体を誇らしげにメジャーで測っている。そんなライバルの姿を見て、ちゃんみなはその薬を飲んでしまいたいと思う。でも飲まずに踏みとどまる。それでも幻覚のような何本もの手が誘惑してくる。葛藤しながらも、彼女は誘惑に負けない。昼公演では不協和音が支配していた「Needy」のアウトロは、今度は美しいメロディを響かせる。その代わり、薬を飲んでボロボロになっていたのはライバルの方だった。


photo by 井手康郎

サーカスでのステージを終えて自宅に戻ったちゃんみなのもとにサーカス団のピエロのうち1人が訪れ、ふたりで「Morning mood」を踊る。このピエロは実は昼公演の彼と同一人物であった。そして前と同じようにサーカス団のステージに上がる日々がはじまる。だが一度地獄を見た彼女の行動は以前とは少し違う。ひとまわり成長し、腹を決めた大人の女性の姿がそこにある。「本当は嘘ついてた」という「note-book」の歌詞は後悔と反省のあとの素直な語りにも取れるが、一方でちゃんみなの表情にはどこか諦めを感じるし、昼公演で切なく響いた「Princess」は復活した女の逆襲の曲に聴こえる。ダイナミックなギターとドラムのアレンジが勢いを倍増させたあと、ちゃんみなは飲むのを躊躇っていた薬を一息に飲む。

Rolling Stone Japan 編集部

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