チープ・トリックのリック・ニールセンが語る、「最後の日」までロックを奏で続ける理由

チープ・トリックはどこが特別だったのか?

ーここまでいろんなロック・バンドの話をしてきましたが、客観的に見てチープ・トリックというバンドはどんなところが特別だったんだと思いますか?

リック:好きだったバンドの要素がチープ・トリックに影響したことは否定しようがない。俺たちはアメリカのバンドだが、世界中のいろんな音楽が好きで、少しずつその全部の要素が入っているんだ。ヨーロッパからも少し入っているし、日本人から好きだと言ってもらうようになってからは、もっと日本のことが知りたいと思った。それまで何も日本のことを知らなかったからね。当時はリクエストしたんだよ。年に3カ月は日本、3カ月はロンドンに住ませてくれと。俺には自分たちのアルバムだけを次々と作る我慢強さもないから、誰かチープ・トリックと一緒にやりたいアーティストがいたらプロデュースとかしたいと思ってた。日本でテレビを見ていて、自分にやらせてくれたらいい仕事ができるんじゃないかと思うものもあったしね。残念ながらそのチャンスはなかったが……で、質問はなんだっけ?

ーチープ・トリックの何が特別か、です。

リック:ああ。それと、俺たちは自分たち以外の誰かになろうとしたことがなかった。ストーンズみたいになろうとか、レッド・ツェッペリンみたいになろうとか。世界一音のデカいガレージ・バンドでいられれば、それで一向に構わなかったんだ。俺たちはあまりにも非完璧主義過ぎて、やらせると完璧にやっちゃうんだよ!








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ーチープ・トリックのようにコンスタントにニュー・アルバムを作り続けるのは、最近では難しいようですね。ピート・タウンゼントは「ザ・フーの新作は製作費が足りなくて自腹を切った」というようなことを言ってました。

リック:俺たちは長いことそうしてるぜ。

ーそれでもアルバムを作り続ける動機は何なのでしょう?

リック:いや、実際訊かれることもあるんだよ。「なぜ君たちは今も続けているんだ?」とね。もう誰もやってないのに、と。俺たちがこれを続けているのは、好きだからだ。やって金持ちになろうと思ったことは生涯一度もない。誰かに「リック、今夜やらないか?」と言われたら「いいよ!」だ。「いくらだ?」とは言わない。「やると赤字だ」と言われても「気にするな。やることがいいことなんだ」って言ってやる。俺たちは演奏するのが好きだし、俺たちにやってほしいって思ってくれる人たちがいる。ミュージシャンたちは「君たちからいい影響を受けた」と言ってくれる。ああ、そうだろう。俺たちは間違いをいっぱい犯したからな! それでもこうして仕事を続けているし、どんなことに直面しても諦めさせられることはなかった。悪いアドバイスをして来たマネージャーたちはみんな首を切ってやった。時には遅すぎたこともあったがね!

ー最後に、あなた自身はミュージシャンとしてのファイナル・デイズというか、活動の引き際や引退について考えることがあるんでしょうか?

リック:でも言ってみりゃ、このパンデミックはある種の強制的な引退じゃないか? それでもこうやって君たちと会話ができて、興味を持ってもらえている。この数日で50本近いインタビューをやって、声はもうガラガラ、何も記憶がなくなってしまっているが……。

ーそれはすみません!

リック:いやいや。そうやって訊いてもらえること自体がありがたいというか、光栄な話だ。今、俺は72歳だよ。その俺が、ロック・バンドを引退することについて質問をされてるなんて、どんだけクールなんだ?!

ー絶対に引退しないでくださいね。

リック:する気はないぞ! また日本に行くのが待ち遠しいよ。




チープ・トリック
『In Another World』
2021年4月9日リリース
試聴・購入:https://silentrade.lnk.to/InAnotherWorld

Translated by Kyoko Maruyama

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