チープ・トリックのリック・ニールセンが語る、「最後の日」までロックを奏で続ける理由

セックス・ピストルズやジョン・レノンとの記憶

ー「Gimme Some Truth」にはセックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズが参加しています。あなたはパンク・ロックに対して肯定的でしたが、ピストルズについてはどう思ってました?

リック:好きだったよ! チープ・トリックの2ndアルバムを作っている時、プロデューサーのトム・ワーマンから「お前ら、誰が好きなんだ?」と訊かれたから「セックス・ピストルズが好きだ」と言ったんだ。でもトムは奴らのことが大っ嫌いだった。それで俺たちはますますピストルズが好きになったんだ。

ー(笑)

リック:彼らのナンセンスなところはどうでもよかったが、アティテュードは好きだったよ、マルコム・マクラーレンを含めて。マルコムの作品のオーケストレーションとか、実はすごいんだ。マルコムがどういう人物だったか少しでも知っていれば分かると思うが、彼がパンクをやっていたこと自体クールなことだと思うね。スティーヴ・ジョーンズと聞いて思い浮かべるのは(ギターを弾く)こういうストレートなやつ。驚くほどうまいとかじゃないが、驚くほどストレートだったってことさ。相手を打ち負かそうというプレイじゃない。それは俺も同じだ。もっとうまく弾けりゃよかったけど、俺も一度もまともにリハをしたことはないし、練習をしたこともない。「ソングライターになりたい」っていう、ただそれだけだったから。それだって未だに模索中だ。



ースティーヴとは70年代当時から仲良かったんですか?

リック:ああ、スティーヴのことは知ってた。彼の「Jonesy’s Jukebox」(スティーヴ・ジョーンズがホストを務めるラジオ番組)にも数回出たよ。スティーヴを交えてスタジオでセックス・ピストルズの曲をやったこともある。俺たちと一緒にやるのを楽しいと思ってくれているみたいだ。新作の制作中、「Jonesy’s Jukebox」にロビンと出演したんだ。その時スタジオに今持ってるこのギターを持って行った。ジョン・レノンのカバーをやるんだよって聴かせたのさ。そしたら彼がギターを手に取り、一緒に弾き始めた。それが弾き過ぎることもなく、弾き足りないこともなくちょうど曲に必要なギターだった。だから「レコードでも弾いてくれないか?」と誘ったのさ。もうそのあとはやるなって言ってもやめさせられなかった(笑)。でも良かったよ。すごくやる気だったからね。あっと驚くようなことは何もしてないけど、いい曲を彼らしく弾いてくれた。彼のやったことはリスペクトしてるよ。セックス・ピストルズってあれだけ知られているけどさ、実際あいつら何枚アルバムを出した? 1枚、だろ?(笑)

ー確かに。さて、あなたは「Gimme Some Truth」の作者であるジョン・レノンからお呼びが掛かり、1980年に「I’m Losing You」のレコーディング・セッションに参加したことがよく知られています。もう何万回も訊かれたと思いますが、改めてその日のことを詳しく教えてもらえますか?

リック:「セッションを助けてくれ」って呼ばれたんだよ。どうにも演奏がラウンジ・バンドみたいになっていたんで、俺たちを入れてもう少し“ロックさせよう”とプロデューサーのジャック・ダグラスが考えたんだ。1980年8月12日、その前日にカナダのモントリオール・フォーラムでライブがあった俺たちはモントリオールからニューヨーク入りした。やるのは秘密だったんで誰にも言っちゃいけなかった。ヒット・ファクトリーに着いてセッティングをしていたら、ジョンとヨーコがやって来て「なんだ、お前か!」と言って俺を指差したんだ。いつも言うジョークだが、きっとジョンは俺のことを『陽気なネルソン』(1952年から放送された人気TVドラマ)のリッキー・ネルソンと勘違いしたんだろう。何を話したか……よくあるミュージシャン同士の会話だよ。俺はギターのことを話したかな。俺のプレイも気に入ってくれてたみたいだ。その時について話した音源があるんで、あとで送るよ。

※取材後にリックからハワード・スターンの番組に出演した際の音源が到着。そこでは「ジョンと会う日、実は息子のダックスが生まれた日だったが、カナダで買ったキューバ産葉巻を吸いながら『どうせ生まれてくる赤ん坊は今日のことを覚えていないし……』と考え、ジョンの方を優先した」「ジョンの持っていたギターがあまりにもひどい代物だったので自分のストリングベンダーを搭載したフェンダー・テレキャスターを渡し、『あとで取りに来るからレコーディングに使ってくれ』と預けておいた。そのままギターを持って帰られ、3年後にヨーコがジャック・ダグラス経由で返却してくれた」「ジョンも自分もメロトロンを所有していたのでその話をした」「ギターショップに俺がジョンを案内しようという話をした」「チープ・トリックがジョン・レノンのバック・バンドになってアルバムを作ろうという話も出た」などと語っている。


Translated by Kyoko Maruyama

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