中島みゆきから世間へのエール プロデューサーの瀬尾一三とともに振り返る

中島みゆき


ファイト! / 中島みゆき

田家:アルバムは既にお持ちの方もいれば、お持ちでなくても曲順は知っている、つまり「糸」の後に「ファイト!」が来るのをご存じの方も多いわけで。

瀬尾:これは自画自賛ですけど、今作はベストではなくてセレクションアルバムなので、だからこそ曲順も自由にしていると思います。

田家:この曲は1983年のアルバム『予感』の最後の曲で、シングルでは『空と君のあいだに』のカップリングに入っていたこともありました。『予感』は瀬尾さんが関わられる前の作品ですね。オリジナルは当時、どういう風にお聴きになってました?

瀬尾:僕は吉田拓郎さんのカバーがきっかけで知りました。歌はもちろん知っていたんですけど、そこまで歌だとは思っていなくて。本家のものを改めて聞いたら、これはすげえやと思って(笑)。

田家:説明しますと、泉谷しげるさんが雲仙普賢岳の噴火や阪神淡路大震災の後に日本を救えというチャリティムーブメントを起こして、スーパーバンド構想というのを提唱しました。そこには吉田拓郎さん、小田和正さん、浜田省吾さん、忌野清志郎さんなども参加したんですね。その武道館公演があって。拓郎さんはこの曲をギターで弾き語りしたんですね。

瀬尾:そうでしたよ、ギターしか弾けないし(笑)。

田家:彼は、これは俺の曲だと言ってました。

瀬尾:彼が歌ってもなんの遜色もなかったですもんね。僕も中島さんの曲だというのは知っていましたけど、これは拓郎節だなと思いましたね。字余り的な歌詞から何から全て。でもやっぱり本家はすごいですよ。拓郎さんの方は男としての迫力があるけど、中島さんの方の「ファイト!」は全く違う。中島さん本人に「皆でいけー! っていうファイトなの?」って聞いたら、女の子が優しくファイトって言ってるだけだと。納得しましたね(笑)。

田家:これは有名な話ですが、中島みゆきさんのオールナイトニッポンに来た手紙が曲の元になってます。この「ファイト!」のアレンジは井上堯之さんなんですね。

瀬尾:これ最高ですよね。これ以上のものは作れませんし、もう絶対にいじれません。「ファイト!」は唯一無二で、これしかない。

田家:中島さんが井上堯之さんに編曲をお願いしていたというのがどういうことなんだろうと思ったりしたんですね。

瀬尾:僕も同じ疑問を持ってます(笑)。

田家:それはまだ訊けてないという。

瀬尾:なんでもかんでもは簡単に訊けませんよ(笑)。30年かかって、やっと「ファイト!」について訊けたんだから。

田家:(笑)。「ファイト!」は何度もステージで演奏されてきましたが、このアレンジじゃない時もありましたよね。

瀬尾:それは本編最後やアンコール最後にこの曲を持ってきた時に、もっとパワーを持って帰って欲しいので、心にふわっと届く「ファイト!」じゃなくて、上着に来て欲しいような「ファイト!」にしようとした時があったので、そういう大袈裟にした時期もありました。

田家:大阪公演のアンコールの最後でこの曲を聴いた時に、ゴスペル風で演奏をされて号泣した記憶がありますね。原曲とは違うエネルギーがすごかったんですよ。

瀬尾:あれは舞台上の演出も兼ねてのアレンジなので。そういう認識をしてください。

田家:それもどこかのセレクションアルバムで……。

瀬尾:入れません(笑)。これでいいんですよ、「ファイト!」は。あのアレンジは、たまたまそこに出くわして観に来て下さった方のための「ファイト!」であって。

田家:それがライブ、それが一期一会です。

Rolling Stone Japan 編集部

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