中島みゆきから世間へのエール プロデューサーの瀬尾一三とともに振り返る

瞬きもせず / 中島みゆき

田家:続いて7曲目、「瞬きもせず」。

瀬尾:この曲はイントロ的に彼女が歌うわけで、予告編的なものが前触れとしてあって本編に入るという感じなので、イントロは短くしました。その後にすぐ彼女自身で予告編をやるという。

田家:予告編という言葉が出ましたが、この曲は山田洋次監督の作品『学校III』の主題歌でした。それもあって最初に予告編があるような作りになったりしたんでしょうか。

瀬尾:だからそうしたというわけではないんですけどね。まず映画のどこに流れるかわからなかったので、どの場所でも編集して繋げられるように作ったはずなんですね。ドラマや映画については、時間が何分何秒と決まっているので、それが大変ですね。

田家:この「瞬きもせず」はまさに時間の歌でもあるわけです。さっき瀬尾さんが人生の残り時間の話をしていましたけど、それは去年誰もが考えさせられたことですよね。

瀬尾:僕はとてもいい機会だったと思っています。自粛の初めの頃はほとんどリタイアした状態だったので、何もしないで家にいたんです。僕は75歳でリタイアしようと思っていたんですけど、それを予行演習させてもらったように感じまして。その瞬間につまんない! やりたいことがまだあるんだな、と思って。だから、このコロナ禍で僕はリタイアを先延ばしにしました。

田家:なるほど。去年の自粛期間のStay Homeの時期をリタイアの先取りと考えられたのは、一つの乗り越え方のヒントになるかもしれませんね。

瀬尾:僕の年齢の方が必ず考えることでしょうけど、可哀想なのは、まだ血気盛んで人生の山を登っていかないといけない人、道半ばの人たちですよね。彼らがこれで挫けてほしくないんですよ。と言っても75歳の定年を延ばしている僕が、もしかしたら老害かもしれないですけど(笑)。でもそれぐらい思っているんだから、皆さんも本当に挫けないでほしいなと思います。僕はそういう風にコロナ禍を捉えています。

田家:なるほど。先月発売になった中島みゆきさんのセレクションアルバム『ここにいるよ』のDisc1のエール盤というタイトルのように、コロナ渦を乗り切って頂ければと。来週もそういう話になればと思います。

Rolling Stone Japan 編集部

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