中島みゆきから世間へのエール プロデューサーの瀬尾一三とともに振り返る

ひまわり "SUNWARD" / 中島みゆき

田家:続いてセレクションアルバム『ここにいるよ』の6曲目「ひまわり "SUNWARD" 」オリジナルは1994年にリリースされたアルバム『LOVE OR NOTHING』なのですが、このアレンジすごいですね。

瀬尾:気に入りました? ありがとうございます。

田家:今日お聴きいただいている中では、一番映像的と言いますか。

瀬尾:僕は頭の中でいつも映像をイメージをアレンジしているんですが、この曲はひまわり畑の映像が出てきたので。それになるべく近づくように、イメージしやすいようにと思って、イントロはなるべく遠景から始めようと思って。カメラが引いていくと一面にひまわりが生えている。そこからどんどん端っこにカメラが動いていくと人間模様も描かれていたり、色々なものが見えてくる部分を出したいなと思っていました。

田家:鉄条網、戦場、難民キャンプとか想像される歌詞ですしね。

瀬尾:カメラですごくグローバルな視点で物を描いて、そのことについて直接的な表現は一切しませんけども、それが人間対自然だったりとか、そういうところに持っていくのがとても上手で。この曲も諸行無常、自然は続いていくし、人間は名前は変わっても血族みたいなものは続いていくものだから。儚くて必然な描写が、腹立つくらい上手いですよ(笑)。

田家:このイントロから歌の始まりとサビの激しさと間奏の口笛、これいいですね。

瀬尾:ありがとさんです。僕の思ったようにまんまとツボにハマってますね(笑)。

田家:この曲は、一番と二番、三番と歌い方も違うでしょう?

瀬尾:そうですね。ある意味で、この曲でひとつのショートフィルムができる感じで。彼女の中では歌い方でも起承転結をつけていると思います。

田家:そして必殺の転調感。

瀬尾:なんの予告もなしの突然転調ですね(笑)。

田家:この歌の素晴らしさというのもあるんですが、改めてこの歌を聴いて2020年の世界というのはどう見えてきますか。

瀬尾:新型コロナウイルスという自然が作り出したものが全員に平等に降りかかるという絶対性のようなものはコロナ以外にない。僕も老いさばらえていますけど、まだやりたいことはあるし生き残りたいと思うので。田家さんも生き残ってください(笑)。

田家:どんな名前の人の庭にもウイルスは忍び込んで来ますからね。

瀬尾:負けないようにしましょう。

Rolling Stone Japan 編集部

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