中島みゆきから世間へのエール プロデューサーの瀬尾一三とともに振り返る

中島みゆき


糸 / 中島みゆき

田家:そしてこれですよ。4曲目「糸」がここで出てきたかと。

瀬尾:前の3曲で攻撃しすぎたので、少し和んでいただこうと思いまして(笑)。

田家:1992年のアルバム『EAST ASIA』に収録、1998年にシングル『命の別名』の両A面としてシングルカットされました。2020年には色々なランキングが年末に発表されましたが、カラオケで一番歌われている曲の上位5曲や10曲には必ず入っていますね。なぜこれほど歌われる曲になっているんでしょう?

瀬尾:テーマも難解ではなく歌詞通りのものなので。若い方から高齢の方までも直接耳に聞こえた言葉がそのままの意味なので馴染みやすいのかもしれません。色々な方がカバーされていますよね。30か40くらいのバージョンがあるらしいんですけどね。

田家:瀬尾さんが色々な方のカバーをお聴きになって、共通してここがちょっと……ということもあるんでしょうか?

瀬尾:田家さん、私が人の歌のことを言えるわけないでしょう(笑)。ただ、中島さんの特徴としては、節と節の間を必ず繋げるんですよね。音程が次の音程に行く前に前の音も残っていたりするんです。例を挙げれば、この曲の冒頭で「なーぜー」っていう部分も"な"と"ぜ"の間で音が繋がってるんですよね。そういうのが曲の中に多々あるんですよ。それで中島さんの個性になっている部分もあります。。

田家:誰もが歌いたい曲になっているんですけど、なかなかみゆきさんのようにはならないですもんね。

瀬尾:それはやっぱり譜面だけを追っているからです。彼女の歌い方を聴かないといけない。

田家:ライブを見ていて思ったんですけど、なーぜーと歌うときに、みゆきさんが少し笑顔になっていますよね。でもカバーだと皆本気で歌おうとするから、その笑顔の感じが出ていないんですよね。

瀬尾:彼女は口角を上げるということが歌う上でとても必要だと思っているのと、表情から歌うということがあるんです。それが中島みゆきという天才たる由縁だと思うんですよね。言霊としても届くじゃないですか。せっかくの作品でも届くか届かないかというのは歌い手の力量になるので、偉そうなことは言えませんけど、皆さんも「糸」でチャレンジしてみてください(笑)。

田家:去年のラストツアー「結果オーライ」では、「宙船」も「糸」もセットリストに入っていましたよね。去年のツアーのことは今どう思われてますか?

瀬尾:ツアーはこれで最後にしましょうというつもりで始めたのですが、全公演の1/3で終わってしまったんですね。これで全国を回るのは終わりにしますという区切りのものだったので、昔の曲とか色々なものを届けようと思って今回こういう曲も入れました。

田家:大阪の1日目のステージでみゆきさんが中止という話をした時に、どういう心境だったんでしょう。

瀬尾:うーん……。その頃は今ほど深刻ではなかったし、まだやれるかもしれないという感じではあったので、その先の会場やミュージシャンも押さえていたんです。それが完全に自粛という形になってから、これで本当にできなくなるんだと思って、ラストツアーなのにこのままでいいのかな? と尻切れとんぼになってしまったのが残念です。

田家:この続きは来週またお伺いしようと思います。お聴きいただいたのは、「糸」でした。

Rolling Stone Japan 編集部

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