中島みゆきから世間へのエール プロデューサーの瀬尾一三とともに振り返る

宙船 / 中島みゆき

田家:続いて3曲目。2006年にTOKIOに提供した曲で、「宙船」は2006年のアルバム『ララバイSINGER』でセルフカバーされておりました。

瀬尾:TOKIOの方は船山基紀さんがとてもカッコいいアレンジだったので、僕もちょっとプレッシャーがありましたね。曲は中島さんのものですけど、皆さんの中の先入観としてはTOKIOの方があるので、それと同じくらい認めてほしくて。中島さんが歌うとどうなるのかを考えながら、舩山さんとTOKIOにチャレンジという形で楽しかったです。舩山さんは僕より先に中島さんと仕事していた方ですので、その辺のプレッシャーもありました。

田家:曲順も「空と君のあいだに」、「旅人のうた」からテーマも繋がっているわけで。更に、「旅人のうた」では"あの愛は消えても"と歌って、「宙船」は"お前が消えて喜ぶものにお前のオールを任せるな"と続いている。失うもの、失われるものに対する姿勢が前の2曲よりもっと強くなっている。

瀬尾:結局その人の存在にはそれぞれ理由があるわけなのに、その存在理由さえも無視されてしまうようなことが今の状況では増えてくるわけじゃないですか。無視せざるを得なくなっている人たちもいるかもしれませんが、無視された方は溜まったもんじゃないですよね。でも、その人たちもそれなりに戦っていくしかない。戦うという言い方は良くないかもしれないけど、君はそんなに弱い存在ではないよ、と。だからと言って、強くなって弱いものをいじめるわけでもなく、君がここにいることに理由があるということを分かってくれればいいので。"お前が消えて喜ぶものにお前のオールを任せるな"というのも、あなたの人生はあなた自身で漕げということを言っているわけで。最近、色々な業界単位で瀬戸際が来てますけど、周りに動かされるのではなくて自分自身が進む道、進まなきゃいけない道を探さないといけない。雰囲気だけでは生きていけない時代になってきたので、この歌はぴったりだと思います。

田家:瀬尾さんの作品集『「時代を創った名曲たち」~瀬尾一三作品集 SUPER digest~』もそうだと思うんですが、選曲はスタッフに委ねる部分もありますよね?

瀬尾:最終決定はもちろん本人がします。変な言い方ですけど自分で選ぶと偏ってしまう感じもありますし。ある意味、公平で色々な人の意見を聞きたいというのもありますので、一応皆で色々な案を出して決めます。でも、中島も最終的には選曲や曲順についても「この曲じゃなくてこっち」とか言いますから(笑)。

田家:それでこういう選曲になりました。お聴きいただいたのは「宙船」でした。

Rolling Stone Japan 編集部

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