米投資会社がテイラー・スウィフトの原盤権を約312億円で買収した理由

アメリカン・ミュージック・アワード2019でパフォーマンスを披露するテイラー・スウィフト(2019年11月24日、米カリフォルニア州ロサンゼルスのマイクロソフト・シアターにて)。 Kevin Winter/Getty Images

米投資ファンドのシャムロック・キャピタルは、テイラー・スウィフトが過去作の再レコーディングを行うにもかかわらず、まったく同じ楽曲の原盤権を取得するために3億ドル(約312億円)を支払った。一見すると馬鹿げているようなこの行為は、のちに莫大な利益をもたらすかもしれない。

言われなくてもわかっている。今週、音楽業界をもっとも賑わせた人物は、紛れもなくテイラー・スウィフトだ。彼女の同意なしにスクーター・ブラウンが米投資ファンドに初期アルバム6枚の原盤権を3億ドルで売却したというニュースに対し、スウィフトは雄弁かつ辛辣に反応した。

スウィフトがおかんむりなのも無理はない。スウィフトは、正当な市場価格で自身の原盤(マスター音源)に入札する機会をまたしても与えられなかったと主張している。それに、この取引で得をしたのは、どう見てもブラウンだ。ブラウンは、わずかな手数料でスウィフトがかつて所属していたレコード会社、ビッグ・マシン・レーベル・グループを事実上、手に入れたことになったのだから。2019年6月、ブラウンはおよそ3億ドルという今回とほぼ同額で、スウィフトの原盤とビッグ・マシン・レーベル・グループを会社ごと買収している。

>>関連記事:テイラー・スウィフトを憤慨させた、米エンタメ界の敏腕スクーター・ブラウンの野望

だが、シャムロック・キャピタル(別名シャムロック・ホールディングス)はいったい何を考えているのだろう? 米カリフォルニア州ロサンゼルスに拠点に置く名の知れぬ投資ファンドは、なぜ3億ドル以上を派手に使い、ブラウンからスウィフトの原盤を買い取ったのか? スウィフトは、いまやシャムロック・キャピタルの所有物となった楽曲の原盤の再レコーディングにはやくも取り掛かっており、過去作のシンクロ権(訳註:シンクロナイゼーション・ライツの略で、音楽とCM・DVD・動画などの映像を同期させて録音する権利、映画録音権とも呼ばれる)に関するリクエストを妨害する力をいまも有している。スウィフトは、この力をすでに思うままに行使してきた。この24時間、業界関係者はシャムロック・キャピタルの動機は何かと頭をひねり続けている。

表立って見えにくいものの、シャムロック・キャピタルと同社の4億ドル(約415億円)のIPファンドに投資した人々には正当な理由がある。
長い目で見れば、今回の取引が終わってから笑うのは彼らかもしれない。

Translated by Shoko Natori

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE