清春が語る「少数派」の生きる道、コロナ禍の配信で新たな表現を模索

全アーティスト生命をかけて今やっていることの意味

−問題は、清春さんがやっている新しいジャンルがまだこの国の人たちに慣れていないことですね。初めての味を食べている状態なので、それをいかにみんなに浸透させていくか。一度体験すれば美味しいじゃんってなると思うんですけどね。そこはどう乗り越えていくべきだと思いますか?

僕らは多分、何区のなんとかって町の人しか知らないみたいな、超美味しいけど人数はあまり入れない焼肉屋さんみたいな感じなんですよ。叙々苑とかみたいな味も美味しくて値段もある程度高く取って全国的に広げた人たちっていうのがサザンオールスターズとかユーミンとかであって。僕の場合はある程度クセのある表現なので、万人には支持されないんですよね。普通の人は美味しい普通の味が好きだから。

−でも、清春さん的には町の知る人ぞ知る名店では歯痒いわけでしょう?

歯痒いけど、絶対毎日のように食べに来てくれる人はいる。最近はそういうやり方もアリだと思ってるんですよね。あの店めちゃくちゃ美味しいから連れてってあげるよじゃなくて、めちゃくちゃ美味しいから誰にも言いたくないんだよねっていうくらいの方が価値があると思ってる。でも全然、叙々苑の方が儲かる(笑)。

−それはそうですね。

そもそも、自分がロックの何が好きなのかを思い浮かべると、やっぱりメジャーなものには興味が無いんですよ、根本的に。これは悔しいから言っているわけではなくて、実際にちょっといかがわしい匂いがするものというか、マイノリティが好きなんです。黒夢が結構世の中で騒がれていた当時あまりテレビに出なかったりとか、カラオケで歌うのは止めてくれって言っちゃったりとか、まぁ若気の至りだったんですけど、本質は今もそうなんですよね。ただ、その本質というかポリシーが評価されにくい時代になってきているなっていうのはすごく感じます。

―なるほど。

例えばビジュアル系って、本来はアングラからメジャーになったサブカルチャーだったんです。ビジュアル系だけじゃなくてロック全般そうかもしれないけど、本来はどこにも行けない、クラスで友達も全然いなくて分かり合える人は学校の外に少数みたいなヤツがクソ!っていう反骨精神を持ってやるものだった。僕らの世代はそういう“普通じゃない”感じが最高にカッコいいと思ってワクワクしていたけど、今は普通が正しいという考え方にはなってる。見た目が爽やかな方が評価されて、普通じゃない風貌の人がカッコいいことをしていても目や耳が届かない。今の日本では普通じゃないことは悪なんです。だから、変わったことをやって世の中に出ようとする人たちが少なくなってきてる。

-この先、どうすれば価値観の転覆を図っていけると思います?

まず、ミュージシャンの皆さんは全員長髪にしてください(笑)。爽やかイケメンとか韓流スターみたいな風貌で音楽やるのをまず止めてくださいって言いたい(笑)。どんだけ普通になるつもりなんだと。

-普通の逆を行くべきですよね。

それくらいのレベルまでいかないと、今逆になっちゃっているものを戻すことは出来ないと思いますね。価値観への反逆っていうか。僕がなぜ少数派をやってるのかというと、これはプライドなんですよ、完全に。他に迎合しないっていうプライド。僕はもう52歳であと何年かしかこれが続けられないわけじゃないですか、残念ながら。だけど、これからデビューする人たちとか、まだ変えられるし、その次の世代にもつなげられるので、やっぱりプライドを持って正しく反逆しようよとは思いますね。それを投げかける人が僕らの世代にしかいないので、老害みたいになっちゃう。だけどまぁ、老害こそがロックなんですよ(笑)。

―それ、良いですね(笑)。配信の話に戻すと、清春さんの配信を見ているファンクラブの25%というのは、清春さんと同じ価値観を持つ“普通じゃない”ものが好きな人たちということになるのでしょうか。

それもあるけど、それだけじゃないと思う。先日、僕がやっているオンラインサロンで配信ライブについて意見を求めたんですよ。そうしたら見ない人の意見として“ライブにこだわっているから”というのが結構あって。でも、ファンが求めているライブって、きっとこの後何年も出来ないですよ。フルキャパでやれるようになったとしても、絶対に出入り口に消毒液はあるし、マスクもしなくちゃいけない。何より、ファンの人達よりもライブにこだわってきた僕がこの形をとっているっていうのは、どういう意味なのか、なんでなのかっていうのを知って欲しい。確かに生でしか伝わらないものっていうのはいっぱいあるし、そんなことは分かりきった上で全アーティスト生命をかけて今やっていることの意味や重大さを知って欲しいなと思いますね。

<INFORMATION>

Full Live Performance & One Take Live Recording
清春『A NEW MY TERRITORY』
10月26日・27日 21:00 start
演奏音源全編ダウンロード可能
http://kiyoharuthetest.zaiko.io 


自叙伝『清春』
2020年10月30日発売
四六版/224ページ
発行:シンコーミュージック・エンタテインメント

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