トランプ大統領も偏愛、謎の女性記者とニュース専門局の正体

いかにして「ホワイトハウス特派員」の座をゲットしたのか?

同じく分校出身で、のちに婚約者となる元海軍の諜報スペシャリスト兼分析官、カートランド・サイクス氏と出会ったのもハーバードだった。2017年、サイクス氏はミズーリ州上院議員選挙に立候補する。選挙活動中はフェミニストを「悪女」呼ばわりし、保守的な家族観を共有するリオン氏をほめちぎってメディアを賑わせた。「家に帰ったら、毎晩6時に彼女が作った手料理を食べたい。まさに絵にかいたような家族団らんです。いつか自分の娘たちも、伝統的な温かい家庭の主婦として、同じように手料理を作れるようになってほしいですね――ノーマン・ロックウェルそのものです」。セントルイス・ポスト-ディスパッチ紙に彼はこう語っている(選挙結果は大敗で、共和党予備選挙での得票率はわずか2.1%だった)。

だがリオン氏は、単に夕食を作るだけでなく、さらに高尚な野望を抱いていた。2016年、彼女は婚約者とともにトランプ陣営の後について全米を回り始めた。テネシー・スター紙の政治コラムニストでOANの元同僚ニール・マッケイブ氏は、彼女と初めて会った時のことをこう振り返る。ニューハンプシャ―州で勝利を収めたトランプ陣営の祝賀会でのことだった。「2人の説明によれば、2人ともドナルド・トランプ候補の支持者なので、国内各地のあちこちの集会に参加して回っているのだ、ということでした」

リオン氏のInstagramやFacebookアカウントには、保守政治活動会議やワシントンDCのトランプホテルで、ドナルド・トランプ・Jr氏やイヴァンカ・トランプ氏といった共和党のスターと一緒に映る写真が掲載されている。「トランプ大統領はギブ・アンド・テイクの人間です。それが彼のやり方です」とカルソーネ氏。「単なる太鼓持ちではなく、伝道師としてほんの少し忠誠を見せれば、何かきっと見返りがあると思うでしょう。ここまでのところ、とくに彼女にとっては、それが正しいことが証明されています。」

2017年、彼女はいわゆる政治風刺画の作家として、ざっくりしたスケッチ画像を発表した。民主党全国委員会のスタッフだった故セス・リッチ氏は実は殺されたのだ、という極右陰謀論を喧伝したり、出っ歯のヒラリー・クリントンが大金の山に胡坐をかく姿を風刺するような類の作品だ(とくに目を引く過激な反イスラム的スケッチでは、ニカブを着た女性を外陰から金切り声を上げるクリトリスになぞらえて、女性の割礼を痛烈に批判している)。唯一ドナルド・トランプ・Jr氏がInstagramで推薦しているのを除けば、彼女の風刺画はほとんど注目されず、フォロワーの数もわずか2万5000人程度。2019年に彼女がOANの花形ポジションを射止めた理由は、なんとも理解しがたい。

Translated by Akiko Kato

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