トランプ大統領も偏愛、謎の女性記者とニュース専門局の正体

2020年4月10日、米ワシントンDCのホワイトハウス記者会見室で行われたコロナウイルス・タスクフォースの定例会見で質問する、OANのシャネル・リオン氏(Photo by Alex Wong/Getty Images)



宣伝役だが、右派系の人々に及ぼす影響力は小さい

ニールセン視聴率調査の対象にすらならない小規模ネットワークのOANにリオン氏が現れたからといって、彼女が右派社会全体に及ぼす影響力はたかがしれている。「OANやシャネル・リオン氏に関心を寄せるのは、彼女の尋常ならぬ行動や報道を伝える(うちのような)ほかの報道メディアがほとんどです」とファーリ氏。そういう意味では、たとえ彼女のおかげでOANが全米の定番メディアになったわけではないにせよ、「彼女はOANにとってもありがたい存在なんでしょうね」。だが、大統領やトランプ一家に一目置かれる存在となった点は見逃してはなるまい。その容姿と折り目正しい立ち居振る舞い、そしてアイヴィー・リーグ出身というきらびやかな経歴を武器に、リオン氏は目的を果たした。「彼女は極めて短期間で、非常に巧みに自分をアピールしてみせました」とカルソーネ氏も言う。

リオン氏がトランプ政権にベッタリなことを踏まえれば、彼女が来る大統領選挙以降もその効力を維持し続られるかは定かでない。一部のメディアコメンテーターは、OANがドナルド・トランプ・Jr氏に売り込みをかけるつもりだと憶測している。そうだとすれば、もしトランプ大統領が再選した場合、彼女も引き続き同じ地位を維持できるだろう。これほど短期間で目的を達成した点では彼女のブランド力には目を見張るものがあるが、バイデン政権では長続きしないだろう、とカルソーネ氏は踏んでいる。もしバイデン氏が当選すれば、右派メディア界では次期ショーン・ハニティーや次期アン・コールター探しが熾烈化するのは間違いない。「彼女のここまでのキャリアや現在の地位がトランプ大統領との力関係と結びついているとすれば、その根本には、この先も持続するようなものは何もありません」

だが、その前にリオン氏が少なからず攻撃をしかける可能性もある。すでに彼女は、郵便投票に関するデマを吹聴する機会をトランプ大統領に与え、右派の間に選挙違反疑惑の種を植え付けている。最近では、手の込んだ陰謀論Qアノンをあからさまに擁護しはじめ、COVID-19による都市封鎖が人身売買の急増を引き起こした、などという根拠のない極右的な見解を広めている。

多くの右派の著名人と同じようにリオン氏も、自らの立ち位置を確立して人々の関心を高めるには、不条理や恐怖の領域にどんどん踏み込んでいくのがカギであると悟った。だが他の人々と違って、彼女の発言の場はTelegramでもParlerでもYouTubeでもなく、アメリカで最も権威ある場所。ホワイトハウス記者たちと一緒にパイプ椅子に座ろうが、ヒールの高いニーハイブーツで立っていようが関係ない。また他の右派著名人と違って、地位確立のチャンスを自らつぶしてしまいかねないほど「本気で信じ込んでいる」ようだ、とカルソーネ氏は言う。「彼女はトランプ大統領に入れ込みすぎて、周りが見えなくなっているようです。でも、彼女は右派連中に影響力を与えるところまでは行っていませんよね。その可能性はあったはずなのに」

リオン氏もトランプ大統領と同じように叩き上げのストーリーを自分の都合のいいように活用しているが、実はその逆を行っている。富と人脈があり、かつ完全に恥を捨てれば、あなたもトランプ政権下でのアメリカンドリームを手にできますよ、という生き証人がまさに彼女だ。必ずしも心酔する必要はないが、それに越したことはない。

from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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