史上最高の「スポーツ映画」30選

26位『ルディ/涙のウイニング・ラン』(1993)

『ルディ/涙のウイニング・ラン』が都合よく見過ごしているいくつかのディテール(映画を象徴するジャージのシーンは、なんとフィクション!)と主人公のフットボール選手ルディ・ルティガーが現実の世界では2011年に証券詐欺罪で告発されたことはさておき、すべての偉大な神話がそうであるように、このスポーツ映画の内容を鵜呑みにしてはいけない。それでも、広いハートを持つ努力家ルディがさまざまな困難(失読症、体格の問題、コーチのダン・ディバイン)を乗り越えて1975年のホームでの決勝戦に挑むのを観ていると、こうした事実なんてどうでもよくなってくる。『勝利への旅立ち』(1986)でタッグを組んだデヴィッド・アンスポー監督と脚本家のアンジェロ・ピッツォは、負け犬が主人公の物語のなかでも最高傑作と呼べる作品を創り、ノートルダム大学のアメフト部から新たなヒーローを生み出した(たとえ強豪校ノートルダム大には、そんな人物は山ほどいたとしても)。もちろん、ノートルダム・ファイティングアイリッシュのライバルはあきれたと言わんばかりに目玉をぐるりとするかもしれないが、ルディが夢を実現していく姿はスリリングだ。それに、アメフト選手ロン・ポウラスの伝記よりはるかに良い。JM

25位『ハード・チェック』(1994)
原題:BLUE CHIPS/ 別題:栄光なきシュート/全米カレッジ・バスケの罠 (JSB)



バスケットボールマニアのウィリアム・フリードキン監督がロン・シェルトンを脚本家に起用した『ハード・チェック』は、ラリー・バード、ボブ・ナイト、ディック・ヴィターレ、ボブ・クージー、そしてシャキール・オニールといった有名選手が本人役として、または米西海岸の大学の架空のキャラクターとして登場する、アマチュアスポーツ界の腐敗をテーマにした作品だ。ニック・ノルティが演じているのは、買収という手を使って才能ある新人選手を獲得しようとする伝説的な熱血コーチ、ピート・ベル。試合の描写には、ドキュメンタリーふうのリアリズムのアクセントが効いているものの、不正を働くチームの崩壊と、気まぐれな若い選手に翻弄される富裕層の大人たちの姿によってよりスリリングな内容に仕上がっている。

24位『エニイ・ギブン・サンデー』(1999)

かつてはアメリカ映画界屈指の社会派監督と目されたオリバー・ストーンは、スケールの大きなアメフト映画向きの監督とは程遠い存在だと思うだろう。でも、それは間違っている。奮闘するアメフトチーム“マイアミ・シャークス”の波乱に満ちたシーズンを描いた『エニイ・ギブン・サンデー』では、エピックドラマを得意とするストーン監督の天賦の才能がいかんなく発揮されている。もちろん、キャラクターが持つ独特の絶望感も健在だ。同作の登場人物は、全員何らかの岐路に立たされている。孤独でボロボロのヘッドコーチを演じるアル・パチーノ、故障中のベテラン・クオーターバックを演じるデニス・クエイド、一躍スターとなってのぼせ上がる新人クオーターバックを演じるジェイミー・フォックス(コメディ俳優としてお馴染みの俳優)、そしてアメフト名門一家のひとり娘で冷酷なチームオーナーを演じるキャメロン・ディアス。彼らが醸し出す不安と絶望感があったからこそ、クライマックスでパチーノがチームに向けて語る「人生は、一歩を競うゲームだ」という言葉が史上最高のスポーツ映画のセリフとしていまも輝いているのだ。BE

23位『ベッカムに恋して』(2002)


しきたりを重んじるインド人家族の旧世界と、移住先のイギリスという新世界のあいだで板挟み状態のインド系2世のティーンエイジャー、ジェスことジェスミンダー・バームラには叶えたい夢があった。それは、大好きなデビッド・ベッカムのように祖国の代表チームでサッカーをプレイすること。そんなジェスの前には、いくつかの障害が立ちはだかる。そのなかでももっとも大きな障害が、サッカーという乱暴なスポーツをプレイすることを決して許さない母親の存在だ。だが、地元のサッカーチームの選手(キーラ・ナイトレイ)とイケメンコーチのちょっとしたサポートのおかげで、ジェスは夢を実現できるかもしれない。スポーツが若い女性の自己肯定感とアイデンティティの確立にどれほど重要かを教えてくれるパーミンダ・ナーグラ(のちに医療ドラマ『ER 緊急救命室』でブレイク)の名演のおかげで、夢を追う少女を描いたグリンダ・チャーダ監督の『ベッカムに恋して』は魅力的な作品に仕上がっている。DF

22位『ビンゴ・ロング・トラベリング・オールスターズ&モーター・キングス(原題)』(1976)


モータウン・レコードの創設者ベリー・ゴーディが共同プロデューサーを務め、ジョン・バダム(『サタデー・ナイト・フィーバー』を手がける前)が監督を務めた『ビンゴ・ロング・トラベリング・オールスターズ&モーター・キングス(原題)』。この時代物の野球コメディは、プロのアスリートたちが地方の町や都市を巡業しながら収入を補填するバーンストーミングの時代を思い出させてくれる。シニカルなビジネスマンを演じたビリー・ディー・ウィリアムズをはじめ、確固たる信念を持つ活動家役のジェームズ・アール・ジョーンズ、キューバ人になりすまそうとする詐欺師役のリチャード・プライヤーといった超一流キャストが名を連ねる。同作は黒人リーグ時代をパロディ化する一方、働くすべての人に生まれつき与えられた尊厳といういまも重要な問題を提起している。当然ながら、野球で金を稼ぐ人々にだって尊厳はあるのだ。NM

21位『勝利への脱出』(1981)

ハンガリー映画『地獄のハーフタイム』(1963)にインスパイアされたジョン・ヒューストン監督のB級映画『勝利への脱出』では、マイケル・ケイン、シルベスター・スタローン、そしてブラジルのスーパースター、ペレがドイツ・チームとのサッカー試合を利用して脱走を図る連合軍の捕虜を演じている。しかしながら、準備万端というところで捕虜たちはいっそのことピッチでナチスを打ち負かしてはどうかと考えはじめる。サッカーの知識ゼロのスタローンは、「美しいゲーム」と称えられたサッカーを1980年代初頭から学びはじめたアメリカ国民を象徴しているのかもしれない。でも、伝説的プレイヤーのペレがピッチでフットワークを披露する姿(なんというオーバーヘッドキック!)を観ていると、ペレのようなサッカーの神様なら、たったひとりでヒトラーの軍隊の進撃を止められたかもしれないと思えてくる。NM

Writers : KEITH PHIPPS & NOEL MURRAY & TIM GRIERSON & JAMES MONTGOMERY & BILGE EBIRI & DAVID FEAR / Translated by Shoko Natori

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