史上最高の「スポーツ映画」30選

20位『ビッグ・リボウスキ』(1998)


米作家レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説にインスパイアされた、無職の中年男デュードが主人公のジョエル&イーサン・コーエン監督作『ビッグ・リボウスキ』。高評価の同作は、ボウリング映画としてもじつに素晴らしい——理由は、カントリー・ミュージックのレジェンド、故ケニー・ロジャースのナレーションによる幻覚シーンが連続して登場するからというだけではない。ボウリング場の雰囲気、チームの絆、フレームの合間のやじの応酬、フェチシズムばりの用具のメンテナンスなど、『ビッグ・リボウスキ』は、レーンの上で重い球を転がすこのスポーツの結果がさまざまな要素に左右されることを教えてくれる。突発的なアクションシーンの連続から、状況を把握して次の動きをあれこれ考えるための長い停止状態まで、同作のリズムはボウリングのリズムそのものだ。仮に異を唱える人がいても、デュード風に言わせれば、「まあ、それもアンタの考え方」なのだ。KP

19位『ナチュラル』(1984)


時に映画は、多くを語らずに野球への敬意を表現する。だが、米作家バーナード・マラマッドの原作にインスパイアされた映画『ナチュラル』のように、野球の試合がこれほど見事な荘厳さとともに描かれた作品はいままでなかった。ロバート・レッドフォードが演じるのは、かつて天才と称賛された野球選手ロイ・ホッブス。ホッブスは、30代半ばで謎の理由で野球の表舞台から姿を消したあと、遅咲きのルーキーとして復活を遂げた人物だ。マラマッドの1952年の同名の原作は、煩悩に屈することの危険を描いた啓蒙的な小説である。その一方、レッドフォードとバリー・レビンソン監督の映画版は、神から授けられた才能へのオマージュであり、そこにシンガーソングライターのランディ・ニューマンの感動的なスコアが加わることで、クライマックスに向けていまでも観る人をゾクゾクさせてくれる。同作は、現実を明らかにするリアリズムとはかけ離れている。なぜなら、人間という死ぬ運命にある存在が繰り出す超人的な技を目の当たりにした時の私たちの感動を強調することに、同作は重点を置いているのだから。TG

18位『レスラー』(2008)


プロのレスラーはアスリートではないと思っている人は、ダーレン・アロノフスキー監督作『レスラー』でミッキー・ロークが演じたランディ・“ザ・ラム”・ロビンソンの姿を観てほしい。かつてランディは、チャンスあるごとに徹底的に相手を打ちのめして観客を魅了した人気レスラーだった。アロノフスキー監督が手がけた同作には、レスリング特有の煽動的なディテールが散りばめられている(わざとナイフを使って生々しさを演出しようとするパフォーマーなど)。それに加え、ランディのカラフルな衣装と、寒い米ニュージャージー州郊外で最低賃金を稼ぎながら朽ち果てそうなトレーラーハウスで暮らす、リングの外の厳しい生活がコントラストを描く。現役時代に体を酷使し続けた人々が昔の自分の抜け殻になり果ててしまうことを同作は教えてくれる。ラストの強烈な栄光でさえ、こうした寂りょう感を拭えない。NM

17位『ノース・ダラス40』(1979)


米テキサス州のNFLチーム“ダラス・カウボーイズ”から着想を得たチームの選手と経営陣を描いたテッド・コッチェフ監督作『ノース・ダラス40』。ドラッグ、セックス、裏切り、無能な経営陣といったアメフト界にはびこる腐敗に迫った同作は、反骨的映画としてのみならず、広義の風刺としての役割を果たしている。当時のスポーツ映画は、観る人に感動とインスピレーションをもたらすのが一般的だった。だが、同作はこうしたすべてを吹き飛ばし、70年代のロッカールーム特有のアメリカ流男性優位主義を称えながらも、そこに疑問を投げかけている。学生時代に人気アメフト選手として活躍したニック・ノルティ——38歳という年齢にもかかわらず若々しい——が主役の故障したベテランのワイドレシーバーを見事に演じている。BE

16位『エンドレス・サマー/終わりなき夏』(1966)


サーフィン映画の最高傑作と呼ばれる『エンドレス・サマー/終わりなき夏』。カウンターカルチャー時代の人類学研究のような控えめな同作は、人々から大絶賛された。その結果、世界中の若者がサーフボードを購入し、完璧なバレルを求めてカリフォルニアの海岸へと向かった。表面上は永遠の夏を追い求めて世界中を旅する2人のサーファー(マイケル・ハインソンとローバート・オーガスト)の物語だが、サーフィン用語とおそろしくも見事なチューブ波の映像が散りばめられた『エンドレス・サマー/終わりなき夏』は、サーフィン小史でもある。ブルース・ブラウン監督自身による緩急あるナレーションが功を奏し、劇中で最後の夕日が暮れる頃には、誰もがサーフィンに挑戦したくなるのだ。NM

15位『ゴングなき戦い』(1972)


どん底生活を送るアル中ボクサーのタリー(ステイシー・キーチ)と彼にカムバックを決意させる前途有望な若手ボクサーのアーニー(ジェフ・ブリッジス)の関係と、どうにもならない運命を描いたジョン・ヒューストン監督作『ゴングなき戦い』。同作では、汗、煙、ウイスキーのにおいが暗雲のように垂れ込めている。同作は、リング上のバトルよりも試合の合間の試練や苦境により重点を置いた作品である。米カリフォルニア州北部のストックトンというかつてのドヤ街の跡地で撮影された同作では、薄汚れた酒場や落ちぶれた主人公が家と呼ぶ安宿が映し出される。それは、リングの王者となった新星でさえも、かなりの確率でいつかはそこに行き着くという運命の象徴なのだ。観終わったらすぐにシャワーを浴びてスッキリしたくなるような映画だ。KP

Writers : KEITH PHIPPS & NOEL MURRAY & TIM GRIERSON & JAMES MONTGOMERY & BILGE EBIRI & DAVID FEAR / Translated by Shoko Natori

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