史上最高の「スポーツ映画」30選

3位『がんばれ! ベアーズ』(1976)


誰もがマイク・トラウトのような野球選手になれるとは限らない。私たちのほとんどはベンチの二軍選手として少年野球時代を過ごす——スコアよりも試合後のピザ・パーティを楽しみにしながら。たとえ酒飲みの独身男を演じるウォルター・マッソーが鍵っ子たちに「そうだ、いまは間違いなく1970年代なんだ」と叫ぶシーンがあるとしても、『がんばれ! ベアーズ』に時代を超えた魅力がある理由は、まさにこうした点にある。脚本家のビル・ランカスターと監督のマイケル・リッチーは、スポーツよりもほかのことで頭がいっぱいの子どもたちにプレッシャーをかける大人たちの姿をとらえている。だが、勝ち負けなんてどうでもいいと思っていた子どもたちとのあいだに芽生える絆もしっかり描いている。だからこそ、完璧なエンディングに仕上がっているのだ。不良少年ケリー・リーク(ジャッキー・アール・ヘイリー)よ、永遠なれ。NM

2位『ロッキー』(1976)


人々にとってロッキー・バルボアがレーガン時代の好戦的愛国主義を象徴するマヌケ野郎ではなく、労働者階級出身の哀愁漂う無名ボクサーの象徴だった時のことを覚えているだろうか? 『ロッキー』が第49回アカデミー賞(1977)で作品賞を受賞したのには、理由がある。その理由は次のとおりだ。『ロッキー』は、勝てる見込みがほとんどない、名優カール・ウェザース扮するヘビー級の世界チャンピオンのアポロ・クリード(敵といえども、心はある)相手に最後の勝負に挑む満身創痍のボクサーを描いた、驚くほどリアルで感性豊かな作品だからだ。あの情けない目と肉感的な唇、前のめりの姿勢、さらにはあの独特な話し方など、こうしたすべてから人間くさいボクサーの気高さが感じられる。第49回アカデミー賞で脚本賞にもノミネートされた当時無名のスタローンは、センセーションを巻き起こしたことだろう。それにスポーツ映画のシンボルを探しているなら、星条旗カラーをまとったアポロに何度も立ち向かう決意に満ちたロッキーの姿にまさるものはない。シジフォスの神話をアメリカンドリーム風に描いた瞬間だ。BE

1位『フープ・ドリームス』(1994)


製作者のスティーブ・ジェームズ、ピーター・ギルバート、フレデリック・マルクスのバスケ愛から生まれた『フープ・ドリームス』。当初、同作はストリートボールをプレイする少年たちを題材にした30分の短編ドキュメンタリーとして企画されていた。それがNBA選手を目指すウィリアム・ゲイツとアーサー・エイジーという2人の高校生の姿を追った3時間近い長編に仕上がった。ジェームズ、ギルバート、マルクスの3人の愛の結晶とも呼べるアメリカのドキュメンタリー史の金字塔である同作は、コートでのアクションとサスペンスが満載だ(映画史においてこれほどドキドキハラハラさせられるフリースローシーンは存在しないだろう)。それ以上に『フープ・ドリームス』は貧困、人種差別、思春期という、時にはスポーツが忘れさせてくれる日常的な苦しみに迫ったパワフルな作品でもある。TG

・ローリングストーン誌が選ぶ「2019年ベスト・ムービー」トップ10


Writers : KEITH PHIPPS & NOEL MURRAY & TIM GRIERSON & JAMES MONTGOMERY & BILGE EBIRI & DAVID FEAR / Translated by Shoko Natori

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE