史上最高の「スポーツ映画」30選

ローリングストーン誌が選ぶ、史上最高の「スポーツ映画」30選

『ルディ/涙のウイニング・ラン』(1993)から『ロッキー』(1976)まで、熱いバトルが繰り広げられる史上最高のスポーツ映画を、米ローリングストーン誌がランキング形式で紹介する。

試合に臨む弱小チームや、素質を証明しようと最後の力を振り絞る往年のスター選手——。スポーツ映画とは、ただ単にスポーツがテーマの映画ではない。スポーツ映画は、困難に打ち勝つ人間の魂の物語であり、巨人ゴリアテ級の大企業や富裕層の青年たちといった強敵相手に奮闘する弱者のメタファーでもある。ある時はチームスピリットを描き、ある時は無類の個人主義で観る人を鼓舞する。またある時は、ゴルフ場を荒らすモグラを退治するために頭のおかしなグリーンキーパーが仕掛けた爆薬が勝利をもたらすこともあるのがスポーツ映画だ。そのなかでも傑作と呼べる作品は、劇場で観終わったあとに立ち上がって思わずその場でウェーブしたい気分にしてくれる。

ボクシングがテーマのヒューマンドラマ、ボウリングを描いたコメディ作品、サーフィンのドキュメンタリー、アイスホッケーリンクで繰り広げられるダメ人間対気取り屋のバトル、汚い言葉や挑発で相手選手の心理面を揺さぶる作戦“トラッシュ・トーク”が飛び交うバスケの試合、9回目を迎えた試合のこう着状態など、ローリングストーン誌が史上最高のスポーツ映画ベスト30を独自にセレクト。今回はランキングから外れてしまったアメフト選手のジム・ソープとクヌート・ロックニー、女子野球チームのロックフォード・ピーチズ、スケートボーダーグループのZボーイズ、架空の大リーガーのシュガーことミゲル・サントス、競走馬のシービスケットをはじめ、いままで私たちの胸を熱くしてくれたすべての銀幕のアスリート、コーチ、トレーナーに心から謝りたい。いつかベスト50を紹介する機会があれば、その時に登場していただこう。

・史上最高の「スポーツ映画」14位から1位はこちら

[編集者注:本記事は2015年8月に米ローリングストーン誌に掲載されたものです]

30位『No No: A Dockumentary(原題)』(2014)


ドック・エリスといえば、LSDをキメた状態でノーヒット・ノーランを達成したビッツバーグ・パイレーツの投手としてもっともよく知られている人物だ。そんなエリスの生涯を描いた『No No: A Dockumentary(原題)』でジェフ・ラディーチェ監督は、エリスのキャリアがかなり際立ったものであったことを明確に描いている。彼のキャリアは、野球がもっともワイルドだった10年と重なるのだ。舞台はアフロとアストロターフ(訳注:スポーツ用人工芝)の時代。フリーエージェントから薬物乱用、さらには「調子に乗りすぎている」黒人選手をめぐるメディア論争まで、エリスは当時の出来事に深く関わっていた。1970年代のメジャーリーグの最良と最悪の部分を明確にとらえた、メモリアルな作品だ。NM

29位『ティン・カップ』(1996)


ケビン・コスナーと『さよならゲーム』(1988)の脚本家・監督のロン・シェルトンがふたたびタッグを組んだ、ゴルフがテーマのラブコメディ『ティン・カップ』。コスナー扮する挫折したゴルファー、ティン・カップことロイ・マカヴォイが愛する女性(レネ・ルッソ)のために全米オープンで彼女のボーイフレンド(ドン・ジョンソン)に挑戦するというストーリーだ。日焼けした肌と、お気楽でありながらも哲学的なオーラが特徴の主人公ロイは、シェルトン監督のゴルフに対するロマンチシズムを見事に体現している。女性の気を引く時であれ、ゴルフボールを打つ時であれ、どちらの場合も無意識で完璧に決められる時もあれば、うっかりシャンクしてラフに入れてしまう時もあることを理解しながら、両者のつながりを見つけていくロイの姿が描かれている。NM

28位『ミラクル』(2004)


アスリートを称える際、彼らはエネルギーあふれるびっくり人間では必ずしもない、ということを私たちは忘れてしまう。キャビン・オコナー監督の『ミラクル』のなかでもとびきり素晴らしいキャラクターは、ぶっきらぼうなコーチのアーブ・ブルックス(カート・ラッセル)だ。ブルックスは、当時弱小だったアイスホッケーのアメリカ代表チームを1980年の冬季オリンピックで金メダルへと導いた監督で、感傷とは一切無縁の男だった。カート・ラッセル扮するブルックスは情け容赦ない親方的存在で、強敵ソ連との決勝戦に向けて若い選手たちを鍛え抜く。ラッセルの恐ろしいほど冷酷な演技が光っているから、あるいは私たちが衝撃的な結末を知っているからといって同作の魅力は少しも色あせない。こうした要素のおかげで、チームが勝利した時のラッセルの姿に一層感動させられるのだ。TG

27位『炎のランナー』(1981)


『炎のランナー』といえば、作曲家ヴァンゲリスによるシンセサイザー主体のドラマチックなテーマ曲と、海辺を走るオリンピック選手たちのスローモーション映像がいまでももっとも有名だ。だが、第54回アカデミー賞(1982)作品賞に輝いたヒュー・ハドソン監督のスポーツドラマの魅力はこれだけに尽きない。1920年代初頭の2人のイギリス人陸上選手(ひとりは敬虔なキリスト教徒で、もうひとりはユダヤ人)の実話にもとづいた同作は、1924年のパリ・オリンピックに向かってストーリーが展開するものの、勝者のひとり勝ちの描写とは無縁だ。むしろ、2人の青年と当時の社会的風潮、そして競技につきものの栄光と悲劇に焦点を当てている。その結果、大戦間のヨーロッパを描いた明るくも哀愁を帯びた作品に仕上がっただけでなく、イギリスのランナーたちの不屈の精神にオマージュを捧げる作品となった。NM

Writers : KEITH PHIPPS & NOEL MURRAY & TIM GRIERSON & JAMES MONTGOMERY & BILGE EBIRI & DAVID FEAR / Translated by Shoko Natori

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