Superflyが語る「Together」の真意、引き離された世界で「一緒にいたい」と歌う意味

この状況における音楽とアーティストの役割

―こういう世界になって、改めて「音楽の役割とはなんだろう?」と考えたりはしましたか?

志帆:それに関しては、いいふうに捉えられるようになりましたね。震災のときは「いまは演奏とかしている場合じゃないんじゃないか」って迷ったりもしたんですけど、今回すごく思ったのは、音楽は心のケアができるものなんじゃないかということで。心が弱っているときに、少しかもしれないけど優しい気持ちにしてあげられるというか。そういうところは、音楽は強いんじゃないかと思うんです。

あと、家にずっといるとメリハリがつけにくいじゃないですか。だから毎朝10時くらいに、私としては珍しいんですけど最近の音楽をランダムに聴くようになって。そうすると外の空気が感じられるんですよ。家のなかにいるんだけど、好きなあのカフェにいる感じがしたり、あの喫茶店の感じがしたり、あるいはどっかの国の好きな場所にいる感じがしたり。いつでもそういう場所に瞬間移動できるのは面白いなと思いました。音がインテリアみたいに、空間を作ってくれる。景色が違って見える。音楽ってそういうものなんだなぁって改めて思いましたね。

―家にいながらにしてイメージで時間も空間も超えていけるのは音楽の素晴らしい特性ですよね。では、こういう世界においての「アーティストの役割」に関しては、どんなふうに考えますか?

志帆:例えば「外出は控えましょう」ということをいくら政府が要請しても、その言葉が届かないでやっぱり外出しちゃう人はいるわけじゃないですか。でもアーティストやミュージシャンは気持ちの部分でファンと近い距離にいるから、「しばらく外出は控えようね」って柔らかい言葉で言えば伝わるはずだし、そういう意味で発信力というものをうまく使っていけたらいいなぁって思いましたね。

だから、インスタを毎日更新するようになりました。みんなずっと家のなかにいて滅入るだろうし、インターネットを見る時間もすごく増えるんだろうなと思ったので。毎日同じくらいの時間に何かしら新しい写真がアップされていたら、それだけでも楽しみのひとつになるんじゃないかなって。アップする時間は最近ちょっとルーズになってますけど(苦笑)。あと、ファンクラブのサイトに長めに文章を書くスペースがあるので、そこも毎晩決まった時間に書くようになりました。

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インスタでは最近読んだ本もいくつか紹介されている

―もともと志帆さんは、歌以外で何かを伝えるのはそんなに得意じゃないという意識があったでしょ?

志帆:そうなんですよ。インスタにしても、どうしていいのかわかんなかったんですよね。宣伝に使うのは嫌だし、そんなにしょっちゅう伝えたいことがあるわけでもないし。でも、それはみんな同じだし、みんな家にいるから、何かしら毎日アップしようって思って。自分はやっぱり何かを発信して、少しでも気持ちが上向きになってもらえるように行動していく立場の人間なんだよなって、そこはすごくこう……。

―自覚を持った。

志帆:はい。自覚を持ちました。遅いんですけど(笑)。ただ、そこで「頑張りましょう」とか、そういうふうには絶対言わないよう気を付けてました。

―「頑張ろう」「力を合わせよう」みたいなメッセージがもちろん有効なときもあるけど、コロナ禍においては、それは必ずしも有効じゃなかったりしますからね。

志帆:そう。だからさっきの「アーティストやミュージシャンの役割」ってことで言うと、世の中に作品なりを届けるときに、ちゃんとしたメッセージとしての質があるかどうかがすごく問われるし、そこはよりシビアにもなってくると思うんです。こう言うと自分にプレッシャーがかかっちゃいますけど、でもそこを大切にできるようにしたいですね。

―質と、あとタイミングですよね。半年前には有効だったメッセージが今はそうじゃなくなったりもするわけだし。

志帆:そうですね。「空気を読む」って言い方はちょっと微妙だけど、やっぱり「今これを言うのは違うかな」ってことは絶対あって、そこはしっかり考えないとダメだし、ちゃんと届くメッセージの質を持たせた上でいい伝え方をしないとって思いますね。個人の視線で確信を持って言うのが大事かなって。

―アフターコロナの世界は、どういうふうであればいいと思います?

志帆:そうだなー、まず以前に戻りたくないってことは思いますね。これをいい機会と捉えて、世の中がもっと優しくなればいいなぁと思います。優しくなればいいし、それには群れるんじゃなくて、もっと個人の意見をみんなが持てればいいんじゃないかなと。

―個人の意見をしっかり持ち、否定から入るのではなく、ひとの意見をちゃんと聞きながらそれを言える世の中であればいいですよね。

志帆:うん。それができたら世界は変わるかな。そういう意識を持たなきゃいけないと思っている人はきっと少なくないと思うので。やっぱり今までは人と人とがくっつきすぎていたんだと思うんですよ。自分の考えがわからなくなるくらい、くっついちゃってて。そういう意味では、今はいい時間だったんじゃないかな。自分はどう思っているのかってこととかを、ひとりひとりが今までよりも考えたと思うし。

―個人という前提に立ってこそ、思い遣りも生まれるでしょうしね。

志帆:そう。だから、ひとりひとりが心地いいと思える人と人との距離感を今後も持ちながらやっていけたらいいですよね。

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