Superflyが語る「Together」の真意、引き離された世界で「一緒にいたい」と歌う意味

「Together」の制作背景と込められた想い

―「Together」の話をしましょう。まず、この曲をリリースすることができて、今どんな思いですか?

志帆:実はこれ、私はこんなに早くリリースするつもりはなかったんですよ。曲自体は4月の早くにできて、すぐに仕上げて、電話でスタッフに聴いてもらったら「すごくいいね」って言ってもらえて、「これは早くたくさんの人に聴いてもらおう」ってなって。

―作ってからリリースするまでが、すごく早かった。

志帆:そう。私としては「アルバムのなかにこういう曲が入ったらいいなぁ」ぐらいのイメージだったんです。ただ、今この時期にリリースすることに関して、いっこ引っ掛かっていたことがあって、それはサビの「一緒にいたい」ってところで。この会いたくても外出禁止で会えないというときに、果たしてそれを言っちゃうことがいいのかどうなのかって思いがあったんです。だから「え? 今リリースするの?」って感じもあったんだけど、逆に「今だからこそ」って意見があって、「ああ、確かにそうかもしれない」って思って。



―実際、「ミュージックステーション」で初披露したときにSNSでみんなの感想を見てみたら、「今のこの気持ちを歌ってくれてありがとう」というような声が多かった。「一緒にいたい」という志帆さんのその言葉にみんなが思いを重ねたってことだと思うんだけど、その言葉って素直にポロっと出てきた感じだったんですか?

志帆:人と人とが引き離されてるその現象自体と、そういうときの人の心理についていろんなことを考えていて、不思議だなぁって思ったり、さっき言ったように人によって意識が違うんだなぁって思ったり……。ちょっと自分も混乱していて、そんなときにスルっと出てきた言葉だったんですよ。自分でも意外だったんですけどね、「一緒にいたい」って言葉が出てきたこと自体が。

―なんでスルっと出てきたのがその言葉だったんだと思います?

志帆:うーん。それは私の心のなかにもやっぱり「寂しい」って気持ちがあったんだろうし、あと、起こっていることが幻なんじゃないかって思ったりもしていたので。

―確かさを求めていたってことなのかもしれない。

志帆:そうかも。

―今この時期に何かを届けたいというような思いは初めからあったんですか?

志帆:あ、「何かを届けたい」はありました。それはすごくあった。インスタで毎日何かアップするのもそうだし、その延長で「ちゃんと動いてるよ」「作ってるよ」って伝えたかったというか。とにかく今自分にできることをやろうという姿勢を私が見せなきゃって思って。それは身近なスタッフに対してもそうだし、ライブのスタッフとか少し離れてる人にも「止まってないよ」って伝えたい気持ちがあったし。私が止まったら、Superflyも止まる。それはしばらくお休みしていたときにも感じたことだったから。

―2011年の震災のあと、すぐに「You & Me」を作って弾き語りで録って配信したでしょ。あのときもすごく動きが早かったけど、あのときの衝動と今回「Together」をすぐリリースしたことに通じるものはありますか?

志帆:そこはちょっと違っていて。「You & Me」のときは「今このことを言わなきゃいけない」みたいな気持ちだったんですね。日本全体が元気なくなってたときだったから「想いは届くと信じて 声を重ねていこう」って。そのことをみんなが言っていくときなんじゃないかなって気がして、すぐに発表したんですけど。でも「Together」の場合は、コロナが落ち着いて、「実はあのたいへんだった時期に作った曲なんだ」って明かすくらいでいいんじゃないかと初めは思っていたので。



―でも曲自体は衝動的に作ったんでしょ?

志帆:そうですね。「今のこの気持ちはなんだろー」みたいな感じで、一瞬で作りました。なんか、モヤモヤしたときに作りがちなんですよ。モヤモヤの正体がなんだかわからないけど、ぶつける、みたいな。

―そのモヤモヤした気持ちがAメロとBメロに表れていて、そこから何かに気づいて、思いを解き放てばいいんだという確信がサビで表現される。つまり、迷いと気づきの両方が1曲のなかに入っている。これってそういう曲だと思うんですよ。

志帆:ああ、そうですね。だから、きっと知らないうちに私のなかに溜まっていたんでしょうね、モヤモヤが。それを曲にして、歌ったときに、なんだかすっきりする感覚があったんですよ。すごくすっきりした。ああ、この感覚だ!って思って。だから聴いてもらいたいと思ったんです。その感覚を共有したいというか。

―僕はこれを聴いたとき、まずAメロとBメロが心に入ってきた。あの寂しげな、何かに迷っているような感じがあるからこそ、ひとつの確信を得たようなサビの説得力が増すんだと思った。それは繋がったものとしてあるんだなと感じたんですが、実際、最初から全部のイメージが同時に出てきたんですか?

志帆:そうです。大サビだけは「私はこういうことが言いたいんだな」って考えながらあとから付けたんですけど、Aメロ・Bメロ・サビは一緒に出てきて、デモを作ったときにアレンジもざっくりと付けたんです。初めは渋くさすらいたかったので、ヘタクソながら自分でギターを弾いて。まずそれをインスタにアップしようってなって、その弾き語りヴァージョンが世の中に出たんですけど、その時点で私のなかではアレンジが付いたものがメインとしてあって。なんか、ニュースで見たんですよ。ロックダウンされて人影がなくなったイギリスのどっかの街にヤギが歩いている映像を。そのときの気持ちをAメロに込めたんですけど。

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―どういうことですか?

志帆:普段は人が歩いている街がそんなふうに変わってしまうということに、ちょっとビックリして。そのもの悲しさというか、さすらうようなイメージをAメロで表現したくて、それで八橋(義幸)さんにスライドで弾いてもらおうと思ったんです。

―最近のSuperflyの曲の多くは志帆さんのアレンジのアイデアを具現化したものだけど、今回もデモの段階でそこまで自分でやっていたわけですね。

志帆:時間があれば誰かに頼んでもよかったんですけど、今回は早く完成させたかったのと、初めてリモートでレコーディングするということもあって混乱しそうだったので。ドラムの構成をざっくり作ったのと、あと、スライドを入れたいなと思っていたので、「このアレンジに合うフレーズをスライドで弾いてください」って八橋さんに伝えました。リズムのニュアンスもけっこうこだわったかな。


「Together」MVより

―八橋さんのスライドと山本健太さんのエレピ(エレクトリック・ピアノ)が、ものすごく効いてますよね。スライドは土臭いロックによく用いられるものだし、エレピの音はソウルミュージックに用いられることが多い。そのふたつの要素が合わさることで渋みと都会っぽさの両方がいい塩梅で表現されている。

志帆:うん。リズムもちょっとアーバンな印象なんだけど、スライドで渋い風を吹かせて。そこはうまく出せたなと思いました。エレピに関しては、始めに私が家でイントロ部分をアコギで“ずっずっちゃー・ずっずちゃー”って弾いて、それをピアノでもなぞって弾いていたんですけど、ピアノの音色ではいいニュアンスが出なかったので、これはエレピでやったほうがいいなと思って。健太さんにそうリクエストしたら、デモになかったフレーズをいろいろアドリブ的にプラスしながら整えてくださって、しかもそれを楽しそうにやってくれてる感じがすごくして、嬉しかったですね。

―そのあたりはリモート・レコーディングならではの面白さなのかもしれないですね。

志帆:面白かったです。データが送られてくるのを待つ時間はドキドキもあるんですけど、どんなふうに表現してくれてるんだろって思うとワクワクした。あと、顔を合わせてないから本当に聴覚だけで判断するわけですけど、3人の気迫みたいなものが音から感じられて、ちょっと泣きそうになりました。喜んで弾いてくれてるのがすごくわかって。

―そもそもミニマルな編成(ギター/八橋義幸、ベース/須藤優、キーボード/山本健太。+打ち込みのドラム)で録るというのは、リモートだからそうしたのか、それともこの楽曲にはそれが適していると判断してのことだったのか、どっちだったんですか?

志帆:バンド・サウンドにしたいなぁってことは初めから思っていて。本当は4月のビルボードライブ横浜のライブに参加してもらうはずだった全員と録りたかったんですけど、リモートでのやり取りがたいへんなのと、楽曲的にもそんなに楽器を入れられないということで、絶対に必要な3人にお願いすることにしたんです。

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