佐野元春インタビュー「現実逃避するだけではなく、そこから先に見える景色を楽しみたい」

佐野元春(Courtesy of DaisyMusic)

緊急事態宣言下で外出自粛要請が続くなか、佐野元春が自らのバンド、ザ・コヨーテバントと新曲「この道」を発表。

メンバーそれぞれが自宅で演奏した音源を佐野がミックスし、さらにミュージックビデオでは「Social Distancing Version」と銘打ち各々の演奏風景が映し出されている。今年でデビュー40周年を迎え、常に時代の冒険者である佐野元春は今何を考えているのか? リモートインタビューで迫った。

―リモートでのインタビューになりますがどうぞよろしくお願い致します。

佐野:はい。よろしくお願いします。

最近はどんな風に時間を過ごしていらっしゃいますか?

佐野:手短に答えるよ。床屋に行きたい。

―いきなり佐野さんらしいパンチラインで、なんだか安心しました。自分なりの部屋での過ごし方、マイブームはあったりしますか?

佐野:社会のことを考えると楽しめないのが本音です。

―家で音楽を聴いたり、映画を観たり、本を読んだりされている方が多いと思いますが、佐野さんから何かおすすめはありますか?

佐野:普段読書できないから、こういう期間を利用して、読みたい本を読みまくってるんだ。その中でおすすめしたいのが鮎川信夫さんの『吉本隆明論』。これはちょっと変わった本なんだよ。鮎川さんも吉本さんも、詩人であり現代批評家でもあるんだけど。この本、一方から読むと鮎川さんのテキストで、逆サイドから読むと吉本さんのテキストになっている。だから真ん中で鮎川さんの「吉本隆明論」と、吉本さんの「鮎川信夫論」に分かれているんだ。

―面白い!!  いつの本なんですか?

佐野:これはね、1982年が初版。まだお二人がご健在の時です。

―これは古書じゃないともう手に入らないんですか?

佐野:だと思う。僕は古本屋から送ってもらった。だからね、だいぶ汚れていたんだ。こういうご時世だから、この本が来た時にシューっと消毒して陰干ししました。

―荷物が一つ届いても、部屋や事務所に入れるのに気をつかわないといけないですよね。

佐野:当然だね。

―そんな今の状況を佐野さんはどんな風にとらえていらっしゃいますか?

佐野:ある意味、来るべき非接触社会の予行演習だと思っています。

―その流れでいうと、4月8日に佐野元春 & ザ・コヨーテバンド「この道」のSocial Distancing VersionがYouTubeにアップされました。

佐野:状況は厳しいです。だから、ファンのみんなに落ち着いてもらいたいという気持ちで曲を書きました。曲はすぐできた。その後、“ソーシャル・ディスタンシング”をコンセプトにして、バンドのメンバーとオンラインでレコーディングをしてみようと、そういうアイディアが浮かびました。で、実行しました。

・“ソーシャル・ディスタンシング”をコンセプトにした「この道」のミュージックビデオ

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