ボブ・ディランの最新USツアーレポート到着、来日公演の展望を大胆予想

14.  ノット・ダーク・イェット(1997年、『タイム・アウト・オブ・マインド』)
ボブはセンターステージでハンドマイクで歌う。ボブのヴォーカルにディレーエコーがかけられる。生命の尊厳をも感じさせる絶品に仕上がっている。

15. サンダー・オン・ザ・マウンテン(2006年、『モダン・タイムズ』)
ボブは立ってピアノを弾きながら歌う。3台のギターが絡み合う純粋ロックンロール・ナンバー。日によっては、この曲からアンコールが終わるまで、観客全員が立ち上がることもあった。

16. スーン・アフター・ミッドナイト(2012年、『テンペスト』)
ボブは座ってピアノを弾きながら歌う。背景の黒幕に満天の星が投影される。照明効果が使われるのは、この時だけだ。

バンド紹介:ボブがチャーリー・セクストン、マット・チェンバレン、ボブ・ブリット、ドニー・ヘロン、トニー・ガーニエの順に紹介。このツアーからバンド・メンバーがチェンジしたので、バンド紹介が復活したのだろう。ボブはそれぞれの名前を紹介した後に続けて一言付け加える。さらにビーコンの終わりに近づいた夜、ボブはめずらしく「今夜は会場にジャック・ホワイトがきている。ジャック、立ち上がって顔を見せたらどうだい」と話した。ジャック・ホワイトはニューアルバムのプロデューサーとうわさされていた人物なので、ファンの興奮は高ぶるばかりだ。ニューアルバムのタイトルは『デイズ・オブ・ヨア(昔の日々)』とまでうわさが流れていたが、結局これはフェイクニュースだと判明した。そのほかにも「今夜はスティーヴ・アールが来ている」「今夜はリトル・スティーヴンが会場にいる」「今夜はマーティン・スコセッシとローリング・ストーンのヤン・ウェナーが来ている」と話す場面もあった。この数年、ボブは歌う以外にことばを発することは皆無だったので、ファンは大喜びだ。観客との距離を縮めたい気分になったのだろうか。

17. ガッタ・サーヴ・サムバディ(1979年、『スロー・トレイン・カミング』)
ボブは立ってピアノを弾きながら歌う。書きかえられた歌詞をメジャー調のロックナンバーで歌う。この歌で80年にグラミー賞ベスト・ロック・ヴォーカルを受賞したことがわかるような力強さを感じた。歌い終わると、何の挨拶もなくステージ右手に消えて行った。本編の終了だ。

アンコールを求める歓声や拍手が10分以上続いただろうか、暗闇のステージにボブとミュージシャンたちが戻って来た。

18. やせっぽちのバラッド(1965年、『追憶のハイウェイ61』)
ボブはセンターステージでギターを弾きながら歌う。オリジナルはボブがピアノを叩くように弾きながら歌ったのだが、今夜はギターで歌った。不思議な人だ。しかもリードを取るのはボブだ。ボブの代名詞のような3連音符を主体にする独特のリフが心地よい。ボブはギターを捨てたわけじゃない、弾けなくなったわけじゃないことを観客に見せたかったのだろうか。あるいは、ボブ流ファン・サーヴィスなのだろか。いずれにしても、ギターを弾くボブは格好いいし、いつでも熱烈歓迎だ。

19. 悲しみは果てしなく(1965年、『追憶のハイウェイ61』)
ボブは立ってピアノを弾きながら歌う。コンサートを締めくくるには、意外な選曲という感じもするが、スローなヘヴィーブルースに仕上げられている。

今や恒例となった最後は、ボブを中心にバンドメンバーが横一列に整列する。昨年までのボブは「どうだ!」と言わんばかりに観客を見回し、わずかに頷いただけで去って行ったが、今年はちがう。全員がはっきりわかるほど、頭を下げてお辞儀をしてから消えて行った。昨年までのボブは、観客に向け一方的にパフォーマンスを見せるコンサートだったが、今年のボブは観客とコミュニケーション取るような、暖かみにあふれるコンサートに変わった。ステージ場で笑顔を見せる場面も増えた。大歓迎だ。

ボブ・ディラン:ヴォーカル、エレクトリック・ギター、アップライトピアノ、ハーモニカ
トニー・ガーニエ:エレクトリック・ベース、スタンドアップ・ベース
マット・チェンバレン:ドラムズ
チャーリー・セクストン:エレクトリック・ギター
ボブ・ブリット:エレクトリック・ギター、ボトルネック・ギター
ドニー・ヘロン:ラップトップ・スティール、ペダル・スティール、ヴァイオリン

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