YuNiが語るバーチャルシンガーの使命

去年の夏からの「変化」

―去年の夏頃、まだ歌の動画だけをひたすらアップしているような活動をしていた頃と比べると、今年の夏はYuNiさんの体感としても随分違うものになっていそうですね。

ほんとにそう思います。去年の夏は、「まずは自分を知ってもらわないと何もはじまらない!」と思って、2~3日1本ずつ、歌の動画をひたすら上げていました。今となっては、「あのペースで歌を上げるのは大変だったな……」と思いますけど、やっぱりあの頃があったから、今年はイベントにたくさん出ることができて、毎週のようにいろんな人たちに会うことができているんだな、と思っていて。今はいろんな方との交流が増えて、今年からはMCを任せてもらう機会も増えてきたので、「どうやったら上手く会話が進められるだろう?」「ここは出るところかな? 引くところかな?」って、自分の役割を前よりも考えるようになりました。最初はほとんど個人での活動のようだったものが、この1年の間に、よりいろんな人たちとの活動になっていったんだな、って感じます。

―では、今年の夏に出演したイベントの中で、特に印象的だったものというと?

いろいろあるんですけど……たとえば、『Vアニ』は、いつものようにYuNiのオリジナル曲を歌うわけではなくて、みんなでアニソンを歌うイベントで、普段は選ばないような曲を選んだりもしたので、一番緊張していた気がします(笑)。演出自体も、『Vアニ』の方々と話し合いながらギリギリまでわがままを聞いてもらって、エアギターをする演出を加えてもらったり、『STEINS;GATE』のOP曲「Hacking to the Gate」では、(アニメの世界観に合わせて)時計感のある演出を強調してもらったりして……。すごく素敵なステージにしていただきました。YuNiは歌いながらジャンプしたりできるようなタイプではないので、それをカバーしてもらえるような、観る人が飽きないステージにしたい、と思っていたんです。

―『Vアニ』は、天神子兎音さん、樋口楓さん、富士葵さんなど、様々なライブで共演することも多い、仲のいい人たちがたくさん出ていたイベントでもありましたね。

いつメンみたいな感じでした(笑)。みんな他のイベントにも出ていたので、イベントごとに「このあいだ振り!」って話をしていましたし、プライベートでも一緒に遊びに行くメンバーなので、MCでのトークも全然不安がなかったです。企画を立ててくれたclusterさんも、私たちが仲がいいことを知ってくれていたので、「MCで喋ることは準備しなくていいですよね?」と言ってくれるような感じで。YuNiとは『Vアニ』が初対面だった湊あくあちゃんも、最初は「私、人見知りで全然喋れないんです」って言っていたんですけど、リハーサルの後にみんなでご飯に行って、そこで一気に打ち解けて。みんなで「あくあちゃん可愛い、あくあちゃん可愛い」って言っていました(笑)。

―他のイベントでは、バーチャル×ファッション×音楽を融合させた『FAVRIC』で実現した、肩とスカートの裾が緑に燃え続ける衣装でのライブも印象的でした。

YuNi、燃えていましたよね!(笑)。終わった後にみんなの感想を見ていても、「バーチャルだからこそできる衣装だった」と言ってくれている人が多くて、「よかったなぁ」と思いました。最初は、「世界初、VTuberがランウェイを歩く日」と言われても、私自身「どうするんだろう?」と思っていたんです。でも、会場も衣装も演出も、バーチャルならではの可能性を追求してくださったので、実際に出ていても、終わった後に客席から撮った写真を見せてもらっても、すごく綺麗な景色で感動しました。そういえば、あのイベントでは、衣装が普段よりシックだったので、最初は「ジレンマ」や「花は幻」のような、しっとりと聴かせる曲を歌おうと思っていたんですよ。でも、「YuNiちゃんには盛り上げてほしい!」と言われたので、(「透明声彩」と)「ウタオウヨ、ウタオウヨ」を歌うことにして。その結果、幕張メッセのような大きな会場で、客席のみんなに「せーの!!」って言ってもらえたのも楽しかったです。逆に『DIVE XR FESTIVAL』では「ジレンマ」を歌わせてもらったので、それぞれ違うものになったのもよかったです。あとは、7月に、『THE MUSIC DAY』(日本テレビ系音楽特番)と連動した番組『裏配信★大魔王の部屋』で、(秋元康プロデュースのガールズバンド)ザ・コインロッカーズさんとコラボレーションしたのも印象的でした。YuNiはあのとき生まれて初めてアイドルの方たちと会って話したんですけど、すごく可愛くて、普段の喋り方よりも可愛いものを愛でるような口調になっちゃいました(笑)。

―ははははは。

そもそも、YuNiは人間のアーティストの方とコラボすること自体もあの日が初めてだったので、実際に同じ現場に集まって、「せーの」で音を出して歌えたのは感動的な経験でした。

―バーチャルとリアルとが垣根を越えて繋がる機会になった、ということですね。

そうですね。普段活動している中では、今はまだほとんどの場合がV(バーチャル)の活動をしている人たちとの共演で、お客さんもVが好きな人たちが集まってくれることが多いので。もちろん、それもすごく楽しいんですけど、きっとあの日は、普段Vのアーティストを知ることがない人たちにも、YuNiたちのことを知ってもらえたんじゃないかと思うんです。そういう場所には、どんどん出ていけたらいいな、と思っているので、来年はもっと人間のアーティストの方とのコラボレーションも増やしていけたら嬉しいです。たとえば、歌の動画を出しても、Vに興味のない人たちは、サムネイルを見た時点でクリックしてくれないこともあると思うんですよ。でも、一度ちゃんと歌や音楽を聴いてもらえれば、その人たちがイメージしているような、萌え萌えしているだけのジャンルではないことが伝わるんじゃないかな、と思うので。そういう意味でも、いろんな種類のアーティストの方たちがいるような場所に出ていくことで、そのイメージを変えられたらいいな、って思います。そうやって、バーチャル/リアル関係なく、いろんな人たちと繋がっていけたらいいな、って。

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