黒人カウボーイ文化の今 リル・ナズ・Xが与えた影響

ベテラン・ロデオライダーのジャスティン・コリー・リチャード氏(Photo by Diwang Valdez for Rolling Stone)



ますます熱くなるロデオカルチャー

LAでビールを酌み交わした翌日、我々はビル・ピケット招待大会へ向かった。車の列が、厩舎裏の屋外駐車場で土煙をあげる。観客の大半は黒人で、午後6時30分の開始時間の1時間前からぞくぞくと集まっていた。辺りを囲むサンガブリエル山脈の向こうに太陽が沈むまで、あと2時間半はかかる。そんなことはお構いなしに、本格的な屋台料理の外には早くも長い行列ができていた。ピンと張ったテントには、業務用サイズのバーベキュー肉の山。同時進行で肉が焼かれ、煙を上げ、油で揚げられ、その他にも食欲をそそる料理が並んでいた。土のステージに太陽が黄金の光を投げかけると、5000人のロデオファンがグランドアリーナに集まり始めた。30人近い出場者がこれから技を競い合うのだ。

「誰もが西部のライフスタイルを楽しんで、憧れのヒーローに会いにロデオに行くんだよ」と、ベテランアナウンサーのハウリー氏。

立見席は群衆で埋まり始めた。昔ながらのカウボーイハット、フリンジが付いたスウェードのベスト、アステカ柄のプリントシャツ(中にはループタイでキメている人もいる)、そしてジーンズにたくし込まれた大量のウェスタンブーツ。やがて、ロデオの試合が行われる中、リチャード氏が荒くれ牛にまたがって、飛び出し口が空くのを待っていた。「みんなこの時を楽しみにして来たんだ!」と彼は誰に言うともなく叫んだ。出場者と大観衆が一体となって生まれるロデオならではの温かい祝祭の雰囲気ゆえに、ロデオは誰もが楽しみにする行事であり続けている。だがポップカルチャーの分野から転機が訪れ、黒人カウボーイがメインストリームのメディアに参入したことで、有色人種のカウボーイ、カウガールは自分たちのルーツに誇りを持ち、黒人カウボーイが歴史に残した真実を口にできるようになった。

35年前にロデオツアーが始まって以来、観客動員数は毎年着実に増加しているとハウリー氏が教えてくれた。こうした現象の原因をひとつに絞り込むのは難しいが、リル・ナズ・Xのヒット曲によって新たな注目を浴びていることは間違いない。「『Old Town Road』は最後のお楽しみにとっておこう」と彼は言う。「みんなが大好きで楽しめる、最高にノリのいい曲だからね」。 黒人カウボーイ・ムーヴメントの勢いを止めることはできなさそうだ。

Translated by Akiko Kato

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