アイス・キューブが語る、オルタナ右翼、国境の壁、カニエのトランプ熱

ニューアルバム『Everythang’s Corrupt』をリリースしたばかりのアイス・キューブ(Photo by Louise Kennerley/Fairfax Media/Fairfax Media via Getty Images)

N.W.A.『ストレイト・アウタ・コンプトン』のリリースから30周年を経て、ニューアルバム『Everythang’s Corrupt』をリリースしたばかりのアイス・キューブが、オルタナ右翼や国境の壁、カニエ・ウェストのドナルド・トランプ熱についてローリングストーン誌に語ってくれた。

昨年夏、白人至上主義者が「ホワイトプライド」を旗印にたいまつを掲げ、米ヴァージニア州シャーロッツビルで大規模な集会が行われた。この事態は、集会への抗議者たちとの闘争へと発展し、死亡者を出すほどの騒動となった。この事態に、アイス・キューブはでんと構えていた。「世間を怖がらせてやろうっていう無駄なあがきだ」と彼は言う。「これから何か起こるんだぞ、この運動が広まって主流になっていくんだぞ、と世間に思いこませようという浅はかな試みさ。俺はナチスやKKKみたいだとしか思わなかったから、奴らの手には引っかからなかった。たいまつを奪い取ってやりたかったぜ。ほら、奴らが持ってたやつ」。

歯に衣着せぬ物言いのラッパー兼俳優兼プロデューサーは、オルタナ右翼への侮蔑の念を「Chase Down the Bully(訳注:いじめっこをとっちめろ)」という曲にしたためた。ニューアルバム『Everythang’s Corrupt』の中の1曲、ともに戦おうと力強く呼びかけるファンキーな1曲だ。「弱い者いじめをする奴が大嫌いなんだよ」49歳の彼は、もううんざり、と言わんばかりの口調で答えた。「そろそろ良い人間の出番だ。俺たちは何も恐れちゃいない。かかってこいよ」久々のリリースとなったアルバムの中で、彼は他にも数々の時事ネタを扱っている。「Arrest the President(訳注:大統領を逮捕せよ)」「Good Cop, Bad Cop(訳注:良い刑事、悪い刑事)」そしてもちろん、タイトルトラックの「Everythang’s Corrupt(訳注:渡る世間は汚職だらけ)」――この曲が最初にリリースされたのは2012年、当時大統領候補だったミット・ロムニー氏を揶揄したビデオと合わせてリリースされた。

「いまじゃみんな、ミット・ロムニーに拝みこむだろうよ。どうかドナルド・トランプの代わりに共和党の大統領になってくださいってな」とキューブ。「共和党から選ばなきゃいけないとしたら、少なくとも自己チューじゃない男がいいね」

もっとも、政治一色のアルバムではないが――リードシングルの「That New Funkadelic」は、第2のジョージ・クリントンの座を狙う彼なりの意思表示だし、「Ain’t Got No Haters」は、「It Was a Good Day」のプロデューサーDJ Poohと、友人Too $hortと久々にタッグを組んだ1曲だ――キューブは黙っていられないのだ。彼が『Everythang’s Crrupt』というタイトルを思いついてから政治情勢はずいぶん変わったが、いま世界全体で起きている出来事を考えると前よりも一層しっくりくる、と本人もローリングストーン誌のインタビューで打ち明けた。「議論をよぶアルバムだってことはわかってるさ。でもいいかい、このアルバムではあらゆる人々をテーマにしてるんだ」と本人。「誰もアイス・キューブのアルバムからは逃れられない。俺たちが鉛筆だとすれば、時々削って尖らせてやらないとな」



ーなぜオルタナ右翼は、威張り散らしてデモ行進のような行動に出るんだと思いますか?

インターネットのせいだろうな。ちっこいコンピューターの前に座ってると、何でも好きなものになれる。でもそのうち、コンピューターの前に座って悪態ついてるだけでは、自分が臆病者のような気がしてくる。そういう考えに徐々に侵されていって、「何かしなきゃ、自分は隅っこでウジウジ言ってる弱虫じゃない、堂々と人前に出て声高に叫んでも平気なんだってみせてやろう」って気分になる。そういう奴らは、大統領の言動に煽られて威張ってるのさ。外に出て、醜い顔をさらしてるんだ」

ーメディアもオルタナ右翼に注目するようになってきたようですしね。彼らに発言の場を与えるだけだから、本当はメディアも控えるべきかもしれませんね。

まぁ、ゴキブリを無視するわけにはいかないさ。わかるだろ?(笑)ゴキブリには手を打たないと。でないと、隅のほうで這いずり回ってたと思ったら、どんどん数が増えちまうからな。まあ、これはたとえ話だけど。でも結局のところ、相手が自分の考えとはまるっきり正反対だと、対等に話をするのは無理だ。向こうがお前たちは引っ込んでろって言っても、こっちも引き下がらないしな」

ーもうひとつ、「Chase Down the Bully」の中で触れているのがトランプ大統領の国境の壁です。壁のことをどう思いますか?

あほらしい。金の無駄遣いだぜ。ある意味情けないよな。自分の家を塀で囲まなきゃいけないなんて、悲しいぜ。中には必要だと感じるヤツもいるだろうけど、それって実は自分を世界から隔離してることになるんだぜ。壁って言うけど、奴らが作ろうとしてるのは溝だ。(言葉を切って)壁は完成しないだろうな。完成させる前に任期切れになるだろうね。あと1年もすれば、やつも窓際族みたいになるだろうよ。

ー「Arrest the President」の中でもトランプ氏に容赦なかったですね。彼は「ロシアの諜報員」で、ホワイトハウスはまるで不良のたまり場だ、と歌っています。この曲を書かなければ、と駆り立てた理由は何ですか?

あの曲は夏が終わってから書いたんだ。『Everythang’s Corrupt』の雰囲気やコンセプトに合ってたんだ。(汚職は)上層部で起きている。トランプが大統領になる前は汚職じゃなかった、って言ってるんじゃない。だけど、ムショ行きの人間がいるんだぜ。人が起訴されているんだ。それを「魔女狩り」だなんて、やめてくれよ。そんなわけないだろうが。何かが間違ってる。俺は憎んでるわけじゃない。ただ、客観的に物事を見て判断してるんだ。

Translated by Akiko Kato

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