追悼リック・オケイセック ザ・カーズのフロントマンが残した名曲17選

4.「グッド・タイムズ・ロール」(1978年)

ヴィンテージのロックやR&Bには屈託のないノスタルジーがつきものだが、ミドルテンポで刻まれるハードなストラトのサウンドとがなるようなコーラス、そしてオケイセックらしいヴォーカルが魅力の同曲は、シャーリー&リーが1956年にヒットさせた「Let the Good Times Roll」のような曲とは一線を画している。カーズ初期の時点で既に、オケイセックはポップにおけるあらゆるクリシェを実践していた。「あれは良き時代のロックンロールを僕なりに解釈した曲だよ。昔は良かったというようなものじゃなくてね」彼はかつてそう語っている。「古き良き時代のパロディみたいなもので、ノスタルジックなものではないんだ」H.S.



5.「今夜は逃がさない(原題:You’re All I’ve Got Tonight)」(1978年)

オケイセックとカーズのメンバーたちは、まばゆいパワーポップと極端な不可解さの境界線を渡り歩き続けた。クイーンを思わせるバックコーラス(共通のプロデューサーであるロイ・トーマス・ベイカーの影響であることは疑いない)、フランジャーをかけたイントロのドラム、最初のヴァースにおける音程の狂ったハープシコードを思わせるキーボードのフレーズ、そして問答無用のフックまで、「今夜は逃さない」の4分14秒間にはバンドの全てが詰まっている。オケイセックによるエコーのかかったヴォーカル、そして自分への嫌悪感を表した歌詞に宿る切実さは、後に登場する型破りなフロントマンたちに大きな影響を与えた。スマッシング・パンプキンズは1995年頃に同曲をカバーしたが、ビリー・コーガンのヴォーカルは水を得た魚のように生き生きとしている。B.H.



6.「レッツ・ゴー」(1979年)

オケイセックは出来のいい曲であっても、必ずしも自分で歌おうとはしなかった。1979年にシングルとして発表された、自由奔放なライフスタイルを謳歌する女性についての同曲では、ベンジャミン・オールがヴォーカルを担当している。ハンドクラップ、フューチャリスティックなシンセのフレーズ、見事なツインギターのアンサンブル等が魅力のこの曲は、2ndアルバム『キャンディー・オーに捧ぐ(原題:Candy-O)』の1stシングルに選ばれ、バンドにとって初のTop 20ヒットとなった。バンドはクイーンとの仕事で知られるロイ・トーマス・ベイカーをプロデューサーとして再起用したが、オケイセックは前作よりもラフなアプローチにこだわった。「デビューアルバムの曲の中にはいかにも洒落たものがあったけど、2枚目では少しトーンダウンさせたんだ。バックコーラスとかは特にね」オケイセックはそう語っている。「彼との仕事は2度目だったから、意見も出しやすかったんだよ。『ロイ、今回はコーラスの重ね録りはやらないでおこう』ってね」P.D.


Translated by Masaaki Yoshida

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