追悼リック・オケイセック ザ・カーズのフロントマンが残した名曲17選

15.「トゥナイト・シー・カムズ」(1985年)

カーズが5枚のアルバムによって既に不動の地位を確立していた1985年に、(所属レーベルの)エレクトラはベストアルバム『グレイテスト・ヒッツ』をリリースした。同作に収録された唯一の新曲であり、控えめなシンセのサウンドが印象的な「トゥナイト・シー・カムズ」は、元々オケイセックが自身のソロ用に温めていた曲だ。「当時ソロアルバムを作っていたんだ」彼は後にそう語っている。「あれはソロ作に収録されなかった曲のひとつさ。結局バンドでレコーディングして、単発のシングル曲として発表することにしたんだ」同曲を『グレイテスト・ヒッツ』に収録したことは紛れもなく正解だった。「トゥナイト・シー・カムズ」はトップ10入りを果たし、彼らの代表曲のひとつとなったからだ。エリオット・イーストンによる強烈なギターソロに感化されたスティーヴ・ヴァイは、そのソロを譜面に起こした上で1986年のGuitar Player誌に掲載し、イーストン自身にインタビューも行なっている。P.D.



16.「Emotion in Motion」 (1986)

オケイセックはソロとしても力作アルバムをいくつか残しているが、カーズのような成功を収めるには至らなかった。しかし1986年作『This Side of Paradise』からシングルカットされトップ15入りを果たしたこの曲は、カーズの名曲群にも決して引けを取らない。簡素でキュートなトラックと、情感たっぷりのソウルフルなヴォーカルが光るこの無防備なバラードで、彼は新たに手にした愛を慈しむと誓う。彼は当時Porizkovaとの交際を始めたばかりであり、切ないメロディと献身ぶりを描いた歌詞には、誰もが憧れるようなロマンスの喜びが滲み出ている。J.D.



17.「フリー」(2011年)

前作から24年のブランクを経て、カーズは2011年に復帰作にして最終アルバムとなる『ムーヴ・ライク・ディス』を発表した。空白の期間中に、バンドはベーシスト兼ヴォーカルだったベンジャミン・オールの逝去という大きな喪失を経験していたが、同作でもカーズのサウンドは決して失われていない。中でも「フリー」はその最たる例だと言える。ハンドクラップとレーザービームのようなシンセが飛び交うトラックに乗せて、オケイセックはタイムトラベルについての歌詞を早口で繰り出し、「君のダークな世界から抜け出す」と宣言する。遊び心と真剣さが同居する非の打ち所のないこの曲が、抗い難くキャッチーであることはもはや特筆する必要もないだろう。「思った以上にいい作品になったね」同作が発表された年に、オケイセックは本誌のDavid Frickeにそう語っている。「再結成するバンドの大半はロクでもない作品を出すけど、このアルバムはそうじゃない。僕は素晴らしいチームに恵まれてるよ。今も昔も変わらずね」

Translated by Masaaki Yoshida

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