THE ORAL CIGARETTES、自身初の野外主催イベントで奇跡を必然に変える

18時になると4本打ちとオープニング映像を経て、蔦が巻かれたような装飾のステージにメンバーが登場。そして「オーラルの第2章は間違いなく今日始まります。お前らはその証人!」と山中が宣言し、「BLACK MEMORY」が始まった。曲のスケールを拡張させるような映像演出、夜の闇に映える照明演出とともに鳴らされる4人のサウンド。「What you want」の開放的なメロディを風に乗せて届けたところで最初のMCに入るが、山中は腕で目元を隠し、早くも感極まっている様子。観客が励ましの拍手が送るなか、涙で目を潤ませながら「この光景を5年前デビューした時から思い浮かべてました。本当にありがとうございました!」と伝えた。

各日約2万人ずつ、計4万人が来場した「PARASITE DEJAVU」。全国からコアなファンが集まっていることもあり、この日は、3rdアルバム『UNOFFICIAL』収録曲の「WARWARWAR」や、インディーズ期のミニアルバム『オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証』の収録曲であり近鉄線にある駅をモチーフとした「瓢箪山の駅員さん」などレアな選曲もあった。また、「N.I.R.A」、「LIPS」はリアレンジを施して演奏。「N.I.R.A」はあの印象的なベースリフなどは原曲のままだが、サビのビートが改変されているほか、ホーンの音も組み込まれていて、新旧両方の要素が読み取れる。「LIPS」はここ最近のライブでも披露されていた、そして先日発売されたベストアルバム『Before It’s Too Late』にも収録されているモータウン調のアレンジだ。



中盤ではメンバーが一旦捌け、ステージに招かれたKAIRIがパフォーマンスを披露。いわゆる打楽器のような音だけでなく、ありとあらゆる効果音やナレーション風の音声までその身ひとつで鳴らしてしまう姿に観客が感嘆していると、途中KAIRIが「もしかしたらみんなが一番観たいやつ、やってもいいですか?」と切り出し、聞き覚えのあるビートを展開。そこで山中が再登場し、「DIP-BAP」をコラボしたのだった。普段から2人でセッションをすることもあり「然るべきタイミングで共演したいね」と話していたという山中とKAIRI。2人のみで届けた冒頭は呼吸がぴったりと合っていたし、バンドが加わって以降は、中西雅哉(Dr.)とKAIRIのビートが絶妙に絡み合う場面があったり、KAIRIに触発されたのか山中がメロをアレンジしながら歌ったりと、双方の化学反応が感じられるシーンも多かった。



同曲を終えたあと、「拓也くんの“カッケー!一緒にやろう!”っていう気持ち、その結果がこの景色なわけじゃないですか。だからみんなも信じて。オーラルめちゃくちゃカッコいいから。カッコいいものはカッコいいって、これからも胸張ってこうぜ!」とオーディエンスに語りかけていたKAIRI。この5年間でオーラルの鳴らす音楽はどんどん幅広いものになっていったし、それはこのあと演奏されたRedone Versionの「ハロウィンの余韻」、「僕は夢を見る」を聴いても明らかだったが、突き詰めるとバンドの根底にあるものは変わらない。特にここ最近は音楽性の変化が大胆であるため、驚いてしまったリスナーもいたかもしれないが、彼らは都度、その決断に至った経緯を音楽や言葉で伝えてきたし、なかでも人と人とが直接顔を合わせるライブという場所を大切にしてきた。そのうえで、あなた自身の目と耳で価値判断をしてほしいと、彼らはずっと言い続けていた。このやり方は決してスマートとは言えないし、回り道も多かったと思う。しかし、その結果辿り着いたのが今日のような愛に満ちた空間なのだとしたら、これほど美しいものはなかなかないだろう。「やっぱり着実にちょっとずつ前に進んでいくのが俺らには合ってるんやなとみんなに思わせてもらいました」と、山中が眼前の光景に目を細める。

Rolling Stone Japan 編集部

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