サイエントロジーの脱会者「第2世代」に密着 カルト集団で生まれ育った苦悩を語る

サイエントロジーの脱会者、クリスティ・ゴードン氏の幼少時代のスクラップブック。(Photo by Justin Kaneps for Rolling Stone)



脱会者たちのグループ「サイエントロジーの子供たち」

現在52歳のゴードン氏がサイエントロジーを後にしたのは31年前。だが、感情を認識するのには何十年もかかった。周りからはキツいとか、近寄りがたいとか、上から目線だの冷淡だのと言われた。暴力をふるう男と付き合った際は、殴られたときのリアクションを学ばなくてはならなかった。

彼女にとっては普通の反応――何もしないこと――が、相手を余計怒らせたからだ。だが最終的に、彼女にも感情が少しずつ戻ってきた。ホールマーク(グリーティングカードの会社)のCMを見て涙を流し、映画の最中で泣きだしては、いたたまれなくなって映画館を飛び出した。まるで敵に周りを囲まれ、本当の自分をさらけ出すのを恐れているような気分だった。何とかしたいと思ったが、自分が何者なのか分からなかった。どこまでがサイエントロジーで、どこからが本当の自分なのだろう?


現在のクリスティ・ゴードン氏。2019年5月、カリフォルニア州にて(Photo by Justin Kaneps for Rolling Stone)

結局彼女は、一人ではどうにもならないことに気がついた。とはいえ、誰が相手でもいいわけでもなかった。彼女は数年かけて第2世代の元信者らと連絡を取り、大胆なアイデアをもちかけた。みんなで集まるのだ。彼女はグループを「サイエントロジーの子供たち」と名付けた。彼女が思い描いたのは、SGAたちが集まって助け合う「避難所」だ。安全な環境でものを感じ、考え、生き抜く術を学ぶことができる疑似ファミリーを作ろうと考えたのだ。

ニューヨーク・ブルックリンの避難所は、ゴードン氏が第2世代の集会用に用意した4番目の会場で、もっとも広い。この日の集会には15人が事前に出席を表明していて、それぞれの体験談を共有し、グループの今後を話し合うことになっていた。もっと多くの人と共有したいという思いから、「サイエントロジーの子供たち」WEBサイト制作にも取り組んでいる。第2世代が経験談を書き込んだり、同じような経験をした他の元信者と交流できるようにするためだ。

取材当日、この日参加者は、当日まで誰が来るのかまったく知らなかったという。お昼ごろ取材に訪れると、まだ全員集まっていなかった。「1時間後に来てもらえます?」と、主催メンバーの一人トリスタン・シルヴァーマン氏が携帯メールを送ってきた。「みなさん、夕べ夜更かししたみたいね」。だが本当は、参加者の大半がサイエントロジーの元エリート信者たち、シー・オーグの面々だったので、いつ、どこで、何をしろという他人の指示は意に介さないのだ。ゴードン氏とシルヴァーマン氏も、あまりガタガタ言わない。1時間後に戻った時には、参加者はシャルドネを飲んだり、外で無心にタバコを吸ったりしていた。「厳密に言うと、禁煙したの」と、ある女性が言った。ここでは仮にスーザンとしよう。この日司会を務める彼女は、いまも教会内部にいる家族のためにも本名は伏せてほしいと言った。「でも、せっかくの週末だもの、ね?」

部屋の片隅に、「思考は弾丸を跳ね返す」と書かれたシャツを着た中年の男性が、別の中年男性とYouTubeのカルトチャンネルについて大声でしゃべっている。キッチンで、オレンジ色の巻き毛と栗色のスーツを着た男性を紹介された。ハバート氏のひ孫にあたるジェイミー・ドゥウルフ氏だ。彼自身はサイエントロジーの子供ではなく、人生の大半を映画製作や執筆、ポエトリーリーディングに費やしている。だが、サイエントロジーが自分の家族に落とした影と、他の家族に及ぼした害はよくわかっていた。「なんとしても、僕の代でサイエントロジーを終わらせたいと思っているんです」と彼は言う。レザーのホルスターをして、髪を短く刈り込んでいるシルヴァーマン氏が隅のほうで、手あたり次第にワインを豪快に注ぎまくっている。「今日は飲まなきゃ」と誰に対するでもなく彼女は言い、自分も何杯かあおった。

ようやくスーザンが、無理強いしないように注意しながら集合をかけた。彼女が話し始めると、1人の男性がドアのほうへ移動し始めた。「実は、途中退場させてもらおうかと思って」。この後の集会のことだ。「体験を共有するってやつはどうも苦手なんだ」。スーザンがうなずくと、男性はドアから出て行った。結局のところ、彼女も分かっている。ここには共有するのが得意な人など誰もいない。だがそれでも、なんとかしたいという思いでやってきたのだ。場を和ませようと彼女が言う。「さあ、順番に自己紹介しましょう」という一言で会がスタートした。

Translated by Akiko Kato

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