1994年のクエンティン・タランティーノ 映画界の「狂人」が描く世界

『パルプ・フィクション』出演者の面々とタランティーノ(左から3番目)(Photo by Eric Robert/Sygma/Sygma via Getty Images)



『パルプ・フィクション』の原型は500ページのラフな脚本だった

『パルプ・フィクション』のスタート地点は、500ページに及ぶラフな脚本だった。「『パルプ』の脚本を書く上でそれまでと違っていたことは、執筆の段階から内容をそのまま映画にすると決め込んでいたことだった」。 彼はそう話す。「あやふやな部分は残さないと決めたんだ。そして映画にするからには、それだけの価値があるものにすると誓った。その分、ディティールにはものすごくこだわった」

事実、当初彼は同作を「詐欺師たちのコミュニティのアンソロジー」と表現していたが、脚本には何度も手が加えられた。『パルプ・フィクション』の脚本について、彼はJ.D.サリンジャーの作風に影響を受けたと話す。「グラース家の物語は全部、より大きなストーリーの一部になってるんだ。俺もそういうのをやりたいと思った」。脚本家友達の多くからは、『レザボア・ドッグス』に続く作品の執筆には苦労するだろうと忠告されたという。「『テルマ&ルイーズ』のカーリー・クーリにも、『フィッシャー・キング』のリチャード・ラグラヴェネーゼにもそう言われたよ」。彼はそう話す。「幸いにも、実際はそうでもなかったんだけどね」

脚本の段階でTriStarが赤字と見積もったことを受け、Miramaxから提供された制作費が800万ドルにとどまったこともあり、『パルプ・フィクション』は前売券のセールスだけで既に黒字を記録していた。「『パルプ』の制作は『ドッグス』のときよりもずっとやりやすかった。経験を積んだことで、やるべきことがわかってたからね」。タランティーノはそう話す。「『ドッグス』を撮ってたとき、俺とローレンスは自分たちの未熟さを自嘲してた。実際未熟だったから。でもそういう経験を経て、映画作りをより楽しむ余裕が生まれたんだよ」。頼りになる男ウルフを演じたハーヴェイ・カイテル、そして自分自身を含め、タランティーノは本作のキャスティングに絶対の自信を持っている。タランティーノが世に出るきっかけを作り、『レザボア・ドッグス』にも出演したカイテルの起用は、典型的なキャスティングといえる。

『パルプ・フィクション』の成功以降は、ハリウッドの慣習に頭を悩ます機会も増えたという。「若くして成功を収めた監督の多くは、電話ジャンキーと化すんだ」。タランティーノはややうんざりした様子でそう話す。「電話をかけ続けて1日を終える、俺はそんなのはごめんだ。くだらないミーティングなんかに出るより、他にやるべき仕事があるんだよ。この業界で働く人間の8割は、一日中電話をかけ続けてる。それは俺たちのやり方じゃないんだ」

Translated by Masaaki Yoshida

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