ストリーミング黄金時代、音楽レーベルの同一化現象とは?

2018年、シカゴのネイビー・ピアのコンサートに出演するマシュメロ。(Photo by Rmv/Shutterstock)



自分たちの領域が新参者に侵されるのを見て、レコード会社もただ手をこまねいているわけではない。

ソニー・ミュージックはさっそく日本で、高音質の音楽ストリーミングサービス「mora qualitas」を立ち上げた。「Spotifyの対抗馬」という印象を和らげようと様々な努力が払われたが、事実は変わらなかった。日本の音楽ファンの間に浸透するには時間がかかったものの、音楽ストリーミングがいずれマーケットを席捲する存在となるのは避けられない。その時が来るまでに、自社のストリーミングサービスを日本のトッププレイヤーとして確立したい、というのがソニーミュージックの目論見だ。

もっと広い視点でみれば、大手レコード会社――ユニバーサル・ミュージック・グループ、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ワーナー・ミュージック・グループ――はアーティスト向けに、音楽制作、流通、販売の枠を超えた幅広いサービスに生き残りをかけている。Spotifyと直接契約しても構いませんよ、と彼らはアーティストに呼びかける。ただ、こうも呼びかけるのだ。「でも果たしてSpotifyは、皆さんの音楽著作権や肖像権、全世界での物販契約、楽曲の版権や、ブランド管理を世界規模でカバーできるでしょうか? 各ジャンルの専門知識や、ジャンルに関連する背景知識など持ち合わせているでしょうか?」

このようなきめ細かいサービスをちらつかせ、ユニバーサル・ミュージック・グループはザ・ローリング・ストーンズやエルトン・ジョンといった超ビッグスターと、各人の収入源をすべて網羅する包括的グローバル契約を締結した。

レコード会社が訴えるのは、「我々は巨額の投資をして、皆さんのキャリアのバックアップをします。仮に音楽出版で損をしても、物販で取り返します。仮にレコードの売り上げが伸びなくても、皆さんのネームバリューがついたテーマパークやレストラン、ヘッドフォンで儲けさせていただきます」ということだ。

レーベル各社を脅かすもうひとつの問題は、また別のところからやってくる。アーティストのマネージメント会社だ。この数カ月間だけで、Three Six Zero社(カルヴィン・ハリス、ティエスト)、TaP Management社(ラナ・デル・レイ、デュア・リパ)、Palm Tree社(カイゴ)といった主要なマネージメント会社が次々と、レコードレーベル的な事業を立ち上げた。

これが何を意味するかというと、音楽ビジネスの根底にあるのが経済変化だということだ。何十年もの間、マネージャーたちはアーティストの稼ぎの10~20パーセントを自分たちの取り分とすることで満足する他なかった。もしアーティストと決裂すれば、当然金の流れもそこでストップ。一方レコード会社は、著作権を所有している限り、アーティストとの契約があろうとなかろうと、楽曲やアルバムのロイヤリティのうち50~80パーセント強を懐に入れていた(ソニーなどはR・ケリーとの契約を「解約」したにも関わらず、いまだに彼の楽曲から収入を得ている)。

だが昨今、ストリーミングサービスやソーシャルメディア、オンライン配信ツールのおかげで、アーティストはレコード会社を挟まなくてもキャリアの一歩を踏み出せるようになった。もしアーティストにマネージメント会社がついていて、会社が金を出してキャリアアップや知名度アップをバックアップしてくれるなら、そのマネージメント会社は事実上のレコードレーベルとなる。この場合、マネージメント会社は所属アーティストの著作権からより多くの取り分を、より長い期間享受できる可能性がある。

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