【密着ルポ】現代のロックスター的存在、トラヴィス・スコットの日常

いずれ義兄となるカニエに忠告

一児の親であることについて、彼はこう話す。「俺たちはStormiと過ごす時間を、何よりも優先しているつもりだよ。土曜日は丸一日彼女と過ごす。誰の誘いにも乗らない。俺がツアーに出るときは、彼女も一緒に連れていく。彼女のパスポートはすぐにスタンプだらけになるだろうな」。彼女が今お気に入りの曲は「サメの家族」、そしてスコットの「スターゲイジング」だという。「あと彼女はサーモスタットが好きみたいだ。クルクル回るNestのやつさ。不思議だよな」

かつて師と崇め、もうすぐ義兄となる予定のカニエ・ウェストがトランプ大統領の支持を表明した時、彼はどう感じていたのだろうか? 「さぁ、どうだろうな」とスコットはあからさまに苦笑しながらそう話す。これがデリケートなトピックであることを承知しているのだろう。

「こう言ってやったよ。『ブラザー、しっかりしてくれよ。あんたは黒人の子どもたちのロールモデルなんだ。あんたの昔の曲が発してたメッセージに感銘を受けたやつらは、そんなカニエ・ウエストを見たくないはずだ』ってな。あれはやっぱり……わかるだろ、イェはやると決めたらとことんやるんだ。あの赤い帽子、あるいはあのアホのことを気に入ったのかもな。イェは今、いろんな困難に直面してる。彼は俺のブラザーだ、悪く言うつもりなんかない。誰だって、多かれ少なかれ問題を抱えてるもんさ。彼がドープなミュージシャンだってことには変わりないけどな。とにかくその件で彼と話したことは事実で、俺はこう伝えたんだ。『あんたのことを尊敬してるキッズたちを失望させないでくれよ』って」

Sealieの家を出た後、スコットの一家はより裕福な郊外の街、ミズーリシティに移り住んだ。我々を乗せたランボルギーニは、スコットの当時の友人の1人が住んでいた大きな家に向かっていた。「あのトラック、まだ使ってんのかよ」、スコットはそう声を上げる。「ガレージのドアが開いてるな」。彼がそう言って車を停めると、50代と思しき白人の夫婦(ミスター&ミセス Aと呼ぶことにする)がそこから現れ、小雨が降る中スコットとハグを交わした。

案内された室内には2台のアームチェアがあり、その向かいにあるフラットスクリーンのテレビではイーグルス対セインツ戦を放送中だった。Stormiの写真が見たいというミセスAの要望に応える形で、スコットは携帯でジェンナーのInstagramのページを開いていた。今朝彼女が投稿したばかりのビデオでは、ジェンナーがStormiに自身のコスメティックブランドの名前を喋らせようとしていた。その試みはうまくいかなかったようだが、Stormiはカメラにむかって「ダァ、ダァ」と繰り返していた。スコットはその様子をミセスAに見せながら、「今の聞いた?」と誇らしげに話していた。


Photo by Dana Scruggs for Rolling Stone

スコットと彼らの息子が高校生だった頃、2人はそこでマリファナを吸わせてもらっていたという。わざとらしく口を両手で覆いながら、ミセスAはこうおどけてみせる。「なかなかの上物があるから、欲しかったらあげるわよ」

スコットはニヤリと笑い、こう答えた。「はは、今日は遠慮しとくよ。そっちは事足りてるんだ」

Translated by Masaaki Yoshida

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