三浦大知、20年のキャリアを支えた身体論とは?

ー深い話ですね。ご自分のヴォーカリストとしての特性についてはどのように認識されていますか? 例えば辞書で“三浦大知”と引いたときに、“歌って踊る人、エンターテイナー”と載っているとして、他にも歌についての追記事項が書かれているとしたら?

“声がデカい”(笑)。

ーそこですか(笑)。あ、でも言われてみれば、確かにインタビューの場で三浦さんほど声が通る人もあまりいないかもしれませんね。

本当ですか? 地声がデカいんですよね(苦笑)。しかもボイトレによってさらに大きな声が出せるようになったので、歌う曲によって上手くコントロールしなきゃないけない。でも一方でライブにおいてはものすごく役に立つ大きな武器でもあって。

ーかなり有効な装備ですよね。

僕は正直ビブラートも苦手だし、ファルセットもそこまで得意ではないので、自分としては、歌について技術的にそこまで上手いと思ってもいないんですが……。

ーそんなことはないでしょう。 MIYAVIをはじめ、多くのアーティストが三浦さんの歌唱力については絶賛しているし、絢香さんとも素晴らしいデュエットが成立しているじゃないですか?

ありがとうございます(笑)。さっきお話しした通り、その時々でパフォーマンスにおける比率は変わっていても、自分の中で歌とダンスは50:50で、どちらもあくまで自分の表現の一つとして捉えているという感覚なんです。ただ、なかなか特徴的な表情の声を持って産まれてきたと思ってもいるので、そこは親に感謝ですね(笑)。

ー先ほどのお話ではダンスについては特定のルーティンメニューを持たないということでしたが、喉も含めた身体のケアについてはどうですか?

乾燥していたらマスクをするとか、皆さんが気を付けているレベル程度のことしかしていませんね。そこもあまり過保護に扱わないようにしていて。喉がちょっとイガイガするぐらいで満足に歌えなくなるような局面が嫌なんですよね。ちょっとイガイガしていても歌えた方が強いじゃないですか(笑)。

ー確かにそうですね。

あと僕はダンスも踊るので、例えばテレビやステージの演出でスモークをたくさん焚くとしたら、まあもちろん限度はありますけど、「歌いづらいからスモークは止めてもらえませんか?」ではなくて、それが本当に一番カッコいい納得がいく演出なのであれば、モクモクと煙った中で歌えた方がカッコいいじゃないですか。できない理由をなるべく自分から増やしたくないというか。

ーやっぱ男前だなあ、三浦大知。

単に負けず嫌いなんですよ(笑)。仮にできなかったとき、それを理由にするのが悔しくて。だから願掛けとかそういうものもほとんどやらない。忘れたときに気になっちゃうじゃないですか。でもそれをMIYAVIさんに話したら、「そんなの毎日忘れなきゃいいだけじゃん?」と一蹴されて「あ、ですよね。いやまあそれはそうなんですけど……」って(笑)。あそこまでストイックなメンタルの強さが僕にはなくて(苦笑)。

ーそれはもういかにもMIYAVIらしい物言いですね(笑)。

あと昔、それこそダンサーと背中を叩き合ってからステージに出ていくという、儀式っぽいことを必ず本番前にやっていたんですけど、あるとき、僕が本番の直前まで打ち合わせをしていたせいで、慌ててステージ裏に入ってダンサーに会わない状態のままステージに立ったことがあって。すぐに「あ、ヤバい、儀式やれてない!」と思ったんですけど、その日のライブがまあものすごくよかったんですよ(笑)。

ーああ(笑)。

それで「あれ? あまり関係ないなこれ」って(笑)。ベストな状態って、結局は自分の気持ち一つで作れるのかもしれないなあと。

ーライブやテレビにおける「うわ、やっちまったな」という失敗談については?

あ、それはけっこうありますよ。急に歌詞が出てこなくなることもあるし、あるときのライブではターンのときにちょっと軸がブレちゃって、自分の手前にあった溝に足がバン!ってハマっちゃって。膝ぐらいの深さまでズボッって。気付いたら倒れていて視界が天井という。曲の真っ最中にですよ?(苦笑)。

ーうわ……。

で、なんとか溝から足を抜きながらまた歌い出したんだけど、お客さんが完全に「え? 今マイクから『ゴンッ!』って音、したよね?」みたいな空気になっちゃってて、もう全くごまかしきれなかったこととか(笑)。まあそれでも最後までやりきるしか手がなかったので、恥ずかしいったらなかった(苦笑)。

ーちなみにこれまでに大きなケガなどは?

おかげさまで今のところはないです。演出で高いところから飛んでかかとを打って打撲したとか、そういうのはたまにありますけど、疲労が蓄積しちゃって常に膝が痛いといったような持病も特にないですね。

ーそれは何よりですね。三浦さんの最近のブレイクの一旦を担ったパフォーマンスに、昨年大晦日のNHK紅白歌合戦でも披露された「Cry & Fight」の無音シンクロダンスがありました。あれは何度見ても息を飲みます。

ダンスって人数がいればそれだけフォーメーションのバリエーションが広がるし、反対に人数がいればいただけ、それを減らすことでよりインパクトを生み出すこともできる。そこがまた楽しくて。群舞で見せるのは演出としても素敵だし、シンプルにカッコいいですよね。しかもダンスって、ただ踊っているんじゃなくて、身体で表現しようとしている人間のパワーそのものだと思うので、想いがたくさん集まれば、それはやっぱり強く大きな想いになる。きれいにシンクロしたから美しいというわけではなく、そこがグッとくるポイントなのかなあと自分では思っていて。

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