ヒラリー・クリントン VS バーニー・サンダース:充実の戦いの全貌

共和党の候補指名獲得レースと比べると、ヒラリー・クリントンとバーニー・サンダースの白熱したアイデアの競い合いは品格と知性の点で別世界のようにさえ感じられる(Photo by Joe Raedle/Getty Images)



「彼らは既成の政治など求めていない」と、ウエストはサンダースの若い支持者について私に言った。共和党の世論調査専門家で、アイオワとニューハンプシャーの両州でサンダースの集会に6回足を運んだフランク・ランツは、次のように語った。「この仕事を始めて20年になるが、サンダースの支持者には特別な何かがある。それは彼らの目を見ればわかる。彼らは手応えがあると信じている。アメリカの他の人々も、いずれそれに気づくだろう。彼らにとって、これはドン・キホーテではない。彼らは自分たちが政治のプロセスを変えることができると思っている」



ランツは早くもスーパーチューズデー前の時点で、クリントンが指名を獲得するはずだと踏んでいた。しかし同時に、スナップチャットの協力を得て行った最近の世論調査で、18〜26歳の若い世代の間ではサンダースがバラク・オバマよりも支持されているという結果が出たことも、私に教えてくれた。「彼は本当にあの世代を引きつけている」と、ランツは言う。「彼らが待ち望んでいた存在そのものだ。政治屋ではなく政策にフォーカスしている。それに対しクリントンは、夫が大統領だった20年前の政治スタイルだ」



当初は世論調査の支持率で40ポイントもの差をつけていたアイオワ州で、サンダースにほぼ互角に追い上げられたのに続き、ニューハンプシャー州では22ポイントの大差で敗北を喫したことで、クリントン陣営は確かにパニックモードに陥った。一方のサンダースは、アイオワ州デモインからニューハンプシャー州マンチェスターへ向かうチャーター機の中、同行の報道陣が座る後部にウィーバーを伴って現れ、クリントンにさらなる悪いニュースを発信した。サンダースが姿を現すと記者たちは先を争って殺到し、肘掛けの上に立ってまでテープレコーダーやカメラを突き出す大騒ぎになった。


「アイオワの後に何が起こるのか」と、サンダースは問わず語りに言い、自ら答えを出してみせた。「我々の戦いは長く続く。勝つ州もあれば、負ける州もある。そして、我々は党全国大会まで行く」

スーパーチューズデー後のサンダース陣営の戦況分析からほどなく、クリントン陣営の選対本部長ロビー・ムークは、夢を追い続けようという趣旨のメモをスタッフに出した。「サンダース上院議員が予備選に残るかぎり、我々は彼が勝利を重ねていくことを疑わないが、それでもヒラリーが獲得代議員数でリードしていることにほとんど変化は生じない」とムークは書き、次のように付け加えた。「今後の数週間、我々はヒラリー・クリントンのかなりのリードをさらに着実に広げていくつもりだ。そしてそれとともに、サンダース上院議員が獲得代議員数で追いつくことはますます難しくなっていく」



現時点までのクリントンの選挙運動は、おおむね報道陣から隔離されている。スーパーチューズデーに同行記者団と談話したのが、昨年12月初め以来となる報道陣との談話だった。これに対しサンダースは、彼の選挙活動を追いかける記者たちを同じチャーター機に乗せ(クリントンの場合と異なり)、かなりの頻度で対話している。すべての選挙運動は当然ながら演出が施されているが、クリントンの場合は特に高圧的な印象が感じられる。序盤に予備選・党員集会が行われた州では、サンダースの脅威の封じ込めに苦慮し、また集会の熱気も大きく引けを取っていたことから、特にその印象が強かった。私はデモインで、高校のバスケットボール・アリーナの観覧席が半分しか埋まらず、スタッフが参加者に演壇の真後ろの観覧席へ移るよう指示を出すのを見た。その数日後、ニューハンプシャー州ハンプトンでは高校のカフェテリアでまばらな聴衆を前に、クリントンは悲しげに「心と頭で選ぶ」よう訴えかけた。



クリントンの集会はサンダースのそれよりも聴衆が少ない(そして年齢層が高い)ことは事実だが、熱気がないわけでは決してない。サウスカロライナ州で勝利を収める前の時点でも、集会の会場にはエネルギーがありありと感じられた──ついに女性大統領が誕生するかという期待は間違いなくエキサイティングであり、その可能性に反応して、ケイティ・ペリーの「ロアー」のようなティーンポップのガールズパワーソングに歓声を上げる大勢の女性──クリントンと同世代の人も多い──の中に身を置くこと自体が革命であるかのように感じられる。



サンダースの支持者は、クリントンの既得権益層とのつながりを指摘して反論する。しかし、クリントンを支持し、デモインでの集会にも参加した元下院議員のバーニー・フランクは、そうした問題を一蹴する。「スーパーPACをもち、ウォール街から献金を受ける──これはバラク・オバマに対するとても不公平な批判だと思う」と、フランクは皮肉る。「オバマ大統領はスーパーPACをもち、過去の民主党大統領の誰よりも多く献金を受けた。私もゴールドマン・サックスで講演をしたことがある。それで私はヒラリー・クリントンに、あなたの講演料は問題だと言ってやったよ。私より高いってね」


昨年9月、バージニア州で集会を開いたバーニー・サンダース(Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)
ランクがクリントンの軽率な発言を引き合いに出したことに、私は一瞬ショックを受けた。民主党候補の討論会で、ゴールドマン・サックスから3回の講演料として60万ドル以上が支払われたことを質問で突かれた時の発言だ(「向こうが出してきたんです」とクリントンは答えた)。もちろん、フランクもクリントンと同じ反論を付け加えた──記録を調べて、そのお金が私たちの投票行動に影響を与えた事例があったら示してほしい、と。的外れで納得がいかない反論なのだが、このこともまた、これまで天使の側にいると自負していたところをサンダースの聖戦に刺された民主党主流派の多くのいらだちを浮き彫りにしている。

Translation by Mamoru Nagai

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE