ヒラリー・クリントン VS バーニー・サンダース:充実の戦いの全貌

共和党の候補指名獲得レースと比べると、ヒラリー・クリントンとバーニー・サンダースの白熱したアイデアの競い合いは品格と知性の点で別世界のようにさえ感じられる(Photo by Joe Raedle/Getty Images)

そのサンダースが維持した大きな強みは「資金」だ。陣営は2月に4270万ドルの選挙資金を得たと発表。クリントンの資金調達額を2カ月連続で上回ることになった──それもスーパーPAC(特別政治活動委員会)の支援をまったく受けることなく。集めた資金の98%が少額のインターネット献金で、そのほとんどが個人献金の上限額2700ドルをはるかに下回る小口献金だった。したがって、その献金者たちは、ペンシルベニア州フィラデルフィアで開かれる民主党全国大会までサンダースの反乱を支援し続けることが可能だ。このような支援を受けるサンダースは、たとえ獲得代議員数で差を広げられても撤退への誘因は働かない。


米ローリングストーン誌最新号の表紙を飾る、ヒラリー・クリントンとバニー・サンダース(Photograph by Joe Raedle/Getty)
共和党の予備選挙が子どもじみた罵り合いと人種差別主義、あからさまなファシズムとの戯れに堕したのに対し、クリントンとサンダースの白熱したアイデアの競い合い──政策本位で個人的侮辱とは無縁であり、互いに質を高め合う争い──は、逆に違和感を感じさせるほどで、まるで別世界のような品格と知性がにじみ出ている。サンダースはたとえ敗れたとしても、少なくともクリントンと民主党主流派に対して、政治論議を支配するエリート政治家と金融界に対する草の根の怒りと嫌悪に反応することを余儀なくさせるはずだ。公的医療保険や公立大学の授業料無償化といった革新派の長年の夢が、突如として政治議論に復活したのである。

クリントンはスーパーチューズデー前の時点ですでに本選挙を見越し、ミネソタ州ミネアポリスのコーヒーショップで報道団に対し、自分は共和党の候補者たちから聞こえてくる「偏見といじめ」に苦しめられ、ドナルド・トランプが「デービッド・デュークとクー・クラックス・クラン(KKK)からの支持とみられるものを拒まなかった」ことに失望していると語った。その夜の勝利演説で、クリントンは再び共和党指名獲得争いをリードするトランプに言及し、「私たちはアメリカにもっと愛とやさしさを必要としている」と言った。




スーパーチューズデーの朝、ミネソタ州ミネアポリスの「マップス・カフェ」で有権者と対面したヒラリー・クリントン(Photo by Melina Mara/The Washington Post via Getty Images)


トランプとクリントンが大統領候補指名を獲得するとして、なおも不安な民主党員にとっての問題は、「愛とやさしさ」というメッセージだけで十分なのか、という点だ。なにしろ、そのメッセージを発するのが現代のアメリカ政治で最も評価が分かれる人物の1人なのだ。また、サンダースの革命的変革というメッセージを受けた若者たちが、イラク戦争に賛成票を投じ、サンダースが最初から一貫して非難しているウォール街の銀行から多額の献金を受けているタカ派の中道政治家を支持するのか。この最後の点について、民主党のある関係者が私にこう言った。「白人のミレニアル世代は、すべての白人層のなかで最も多様性に好意的だ。しかし、人々を投票に向かわせる最大の力は愛でなく恐怖だ。もしトランプが人々に恐怖をもたらさないというのなら、何が恐怖をもたらすのかと聞きたいくらいだ。ヒラリーが大統領候補になって人々が家にこもっているということは考えにくい」

Translation by Mamoru Nagai

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